・
そんなことがあってから一週間がすぎた頃、俺はとあるクラスメイトに声をかけられた。
「久世、ちょっと話が……」
俺に声をかけてきたのは、水瀬 凉波。
一言で言えば、真面目。
それに続く言葉は、根暗。
その名前からは想像できない雰囲気の持ち主である。一応いっておくと、俺は彼と進んで会話をしたことがない。大半のクラスメイトとは、義務的な会話をかわしたことがあるのだが、彼とは特別会話が成立しなかった。
そうだな……少し変な例え方かもしれないが、肩慣らしにと始めたキャッチボールで、最初から変化球を投げつけて来たようなものだ。
当たり前だが、とれない。おれもとろうとはしなかったがな。
そんなことがあったので、彼との会話は敬遠していたのだが、むこうから話しかけて来られては無下に断ることもできない。
まずは相槌から始めよう。
それを胸に、俺は水瀬と会話を始めた。
「何?」
一言目にしては威圧的すぎただろうか?でもまぁ、口にしてしまったものは仕方が無い。返事を待とう。
「あ、えと……カナルと知り合いって……噂なんだけど…」
またあいつか。
今度は何をしたんだ。
「あぁ。幼なじみだけど?」
返事は最低限に端的に。
水瀬は俺の言葉を耳にしてから少し口をもごもごさせると、
「えっと……じゃあ、カナル…に、会わせて欲しい……んだ」
と、消え去りそうな声でそう言った。あいつと顔を合わせるということに、俺の許可を取る必要なんて無いというのにな。
読んでくださりありがとうございます。
宜しければ、他の連載作品や短編などもご覧ください。
次話投稿は、12月21日になります。