〒+サルエマ砂漠
タクユキ「思うんだけどさ…、ヤケに暑くないか、ここ…」
赤毛の少年の呟きに反応する者はいない。
サルエマ砂漠。
リートによれば、この世界では一番乾燥し、暑い地域だそうで。
砂漠は暑い。
全世界共通である。
アリア「み、みずぅ…」
リート「サクラさ、その杖で水出せないか?」
サクラ「私は回復専門ですよぉ…」
あと、砂漠は広い。
草1つ無い、枯れた土地を歩く4人を、太陽の光は容赦なく照りつける。
サクラ「アリアさぁん…」
ピンク色の豊かな髪に付く砂を払いながら、サクラはぐったりとした声色で言った。
サクラ「アリアさんのナイフって、緑の水晶が付いてるじゃないですか…」
アリアは腰に付けたポーチから、折り畳みナイフを取り出した。柄のしっぽに付いている緑色の水晶は、太陽にキラキラと反射している。
アリア「これがどうかしたの?」
サクラ「いや、もしかしたら…、私の杖の水晶と同じで、魔法が使えるんじゃないかなって…」
タクユキ「あぢぃ…」
リート「もう、みず…じゃなくて氷出してくれ…。干からびそうだ…」
サクラ「…と言ってますし、試しに氷の呪文…ヒャドを唱えてみてください…」
アリア「うん…」
魔法は神経が必要だ。集中力が物を言う。…いつかサクラが言っていた。
アリア「……ヒャド!」
すると。
パリパリパリパリ………
アリア「あれ?氷ができてる…」 パリパリパリパリパリ…
サクラ「すごい! アリアさん、魔法使えるじゃないですか!」
リート「おぉ、氷!!」
パリパリパリパリパリパリ
氷はどんどん大きくなっていく。
タクユキ「…なんか、危なくないか?」
パリパリパリパリパリ、パリ…
氷がアリア達の頭上で巨大化していき、あっという間に、気球ほどの大きさにまでなっていった。
サクラ「確かに、ヒャドって攻撃呪文ですからね…」
アリア「ちょ、どうすればいいの?これ…」
サクラ「絶対に杖を下ろさないでください!誰かに当たってしまいます!」
リート「…いくら念願の氷でも、ここまで大きいものが降ってくるのはごめんだな…」 その時。
ズシ、ズシ、ズシ…
タクユキ「…おい、あっちから何か歩いてくるぞ」
それは、自分達の背丈よりも大きい、金色のレンガが人型に積み重なっているような魔物だった。
リート「あれは、ゴールドマン…」
タクユキ「なんだそれ、そのまんまじゃんか」
リート「いや、あれは…」
リートは振り返り、巨大化し続ける氷を落とすまいと必死になっているアリアに呼びかけた。
リート「アリアー! それを、あの魔物に向かって下ろしてみろー!!」
ズシ、ズシ、ズシ…
リートの声を聞き、アリアは足音のする方へ、とてつもなく大きくなった氷の塊を投げつけるかのように、杖を降り下ろした。
ゴオオォォォオッ!!
氷の塊は一直線に、ゴールドマンの方へ向かっていく。
ドガァンッ!
ゴールドマンが気づくのも遅く、氷の塊が命中し、魔物は崩れるかのように倒れた。
リート「よし…505ゴールド、ゲット!」
アリア「?」
サクラ「あの魔物は、お金をたくさん落とすんです」
タクユキ「砂漠の魔物は、氷の攻撃に弱い。見事だな」
アリア「なるほど…。あれ? サクラって、炎の魔法使わなかったっけ? 前にゼリーベス倒した時に」
サクラ「メラしか使えないんです、攻撃は」
タクユキ「リート、505ゴールドの使い道は?」
リート「宿代だよ。あともう少しで、サルエマ砂漠王国だ。頑張ろう!」