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~ある日の日常~

~ある日の日常~ 「人の愛し方」

作者: 彼方 舜

ごくありふれたような男女だとは思うけど、その二人が長く一緒にいたいと思われる人間関係を描いてみました。ある種当たり前で、中々できないんじゃないかなと勝手に妄想。人間関係の参考になればいいなという一品でもあり。

~ある日の日常~シリーズ第二弾。

そして即興小説第二弾w

 オレには2年弱付き合っている彼女がいる。

 彼女は何故か少し自己評価が低い子だけど、思いやりがあり優しさがあり…何よりオレが一緒にいることで癒される。そして今まで付き合ってきた女の中で、一番身体の相性がいいってのもあった。もちろん喧嘩みたいなこともあったけど、オレが彼女を失いたくないから、彼女の激情を受け止めてきたとってこともある。一時の感情で彼女を失ったと冷静になった時に考えたら、例え大げさと言われても、一生の不覚だろと思う。それだけオレにとって大事な彼女だった。


 週明けの月曜日、始業開始から会社の携帯が鳴る。


「はい、BM関東営業所の国府宮こうのみやです」


 オレは自社の営業の車両管理をやっている。関東圏内の本社・支社で仕事する500人ほどの営業車両の管理で、営業車両の手配を頼まれたり、戻したり、車両点検時期を確認したり…。この会社にとっての営業車は大事な商売道具でもある。なので、事故時の対応などもやっている。車両に関しては「何でも屋」に近い状態だ。そんなわけで、週明けともあろうと営業からの手配依頼などが殺到して電話が鳴り止まない。いつも通りパソコンとにらめっこしながら、車両の手配をしまくる。こうなると、昼時間もあったもんじゃない。落ち着くのは大体14時~15時くらいだ。その頃にようやく昼食にありつける。


「ふ~…」

 

 人の空いた社食で食べられるのは、ある意味気持ち的に余裕だった。入社した当時に昼食時間に来ていた頃は、空きがないくらいに隣同士が知らない人なんてこともしょっちゅうで、狭い感覚が嫌な傾向にあるオレはそれが精神的に苦痛だった。今はそれがなく、楽だ。


「ん…」


 そういえばと個人携帯を見ると、彼女からメールが来ていた。


「お疲れさまヾ(^v^)k

月曜日だからお仕事いそがしいかな。

聡司さとしさんはお仕事できる人だから、いつもすごいなと思うよ。自慢の彼です。

私と同じで仕事を抱えたがる傾向にあるから、仕事しすぎて身体壊さないようにね」


 どうってことないメールに思えるけど、オレにはこのメールすら癒やしだった。

 会社ではある種当たり前のようにコキ使われたり、言われたりする仕事が多い中、彼女が言うとおり、抱えて仕事をする傾向がある。これぐらいこなせなくてどうするっていつも思って、誰かと競うわけでもないのに仕事する自分が確かにいる。けど、ふとした瞬間虚しさを覚えたりものするのだ。こんなことしてて意味があるのかと。でも、彼女の「仕事ができる人」って言葉に癒される。自分ができる人間だって認めてもらえるって、どうしたって嬉しいものだ。それに「自慢の彼」って。そうした何気ない言葉をくれる彼女だから、オレも付き合っていられるし、大事にしたいと思う。


「お疲れさま。ありがとね。

今日も電話ばっかだよ~。喉枯れそうw

明後日の水曜日、夕方空けられそうだけど、どうかな」


 送信、っと。

 オレも彼女のように褒めて上げられるような言葉をあげられればいいけど、恥ずかしくてできない。本当は、こっちが一方的に言葉をもらってるばかりじゃダメなんだとは思うんだけどさ。

 ちなみに彼女は土日仕事なので、休みがあいにくい。平日はオレが遅くなることが多いが、週半ばは他支店に行ったりすることがあり、そのついでに自分の勤務時間を調整することができる。車両会社と打ち合わせってことにして、彼女とのデートに費やすことも何度か…。どうせ用件は全て会社携帯にかかってくるから、オレの動向がどうこう言われることはあまりない。あ、シャレじゃないぞΣ(; ̄□ ̄A


 そういえば、時々彼女から凹むメールをもらうこともある。

 人間だからそういう気分の時もあるのはわかるけど、同時にオレが仕事で凹んでいたりするとメールができなかったりする。彼女は世間で言う重い女だとは思わないけど、オレの返信がなくて続けてメールが入っていたりすると、心が痛む。彼女は彼女で一生懸命オレに気を遣っているのだけど、どうたって返信が欲しいんだろうなと感じる。そういう時にはなるべく早めに顔を合わせて、メール打てない代わりに抱きしめる。言葉で伝えられることもあるけど、こうして触れあうことでしか伝えられない何かもあると思うから。

 彼女は精神的にちょっと弱いところがある。でも、それもオレが彼女を好きな理由のひとつなのかもしれない。彼女を満たせるのがオレだという満たされた気持ちになれるから。

 ただ、女はどうしても言葉をほしがる生き物だと、経験上わかっている。逆に男は言葉がなくてもわかるだろってところがある。両者はどうしても相容れないもので、あとはお互いの譲り合いというか配慮というか、そこらへんが必要だ。


「好きじゃなきゃ、思いやることはできないな。気遣いだってそう。

好きだからできるの。嫌いな人なんて、ある意味どうでもいいじゃない?

聡司さんが大事だから、言葉を大事にしたいの。

聡司さんが幸せに思える言葉を言いたいんだよ

男の人は行動で気持ちを現すけど、それだけだとやっぱり不安。

だから時には言葉をくれると嬉しいな」


 以前彼女にそんなことを言われた。

 彼女は決して男の心情が分からない方ではない。嫌いだったら一緒にいない、という男の心理もわかってくれている。けど、それでも時には言葉で大事にしている気持ちを現してもらえないと、心にヒビが入るようだ。それは、オレが彼女から嬉しい言葉をもらって気持ちが高揚するのと一緒なんだろう。彼女もそうなりたい、と思える気持ちは…わかるな、うん。ただどうしても男ってのはバカなもんで…中々言えないんだもんな。


 昼食後、再び怒濤の電話攻撃にあって19時頃にようやく落ち着いた時、携帯を見る。

 彼女からの返信は大体早い。オレが業務に追われて携帯気にできないし、見るのが遅いだけで。


「水曜日、空けられるようにするね。

いつも時間作ってくれてありがとう。

逢えるの楽しみだよ。感謝です」


 うん、やっぱりオレは彼女の事が好きだ。

 のろけでも何でもない。時間を作るのはお互いさまだとオレは思う。

 彼女だって何も言わなければ仕事をしている時間だ。けど、オレが逢いたいって言えば、それに合わせて時間を作ってくれる。だからお互いさまでオレも、「ありがとう」だし、「楽しみ」だし、「感謝」なんだよ。

 相手のことを考えて、相手の事を大事にできる言葉をくれる彼女を、やっぱりオレは大事にしていきたい。そしてオレが大事に想うから、彼女もオレを大事にしてくれる。幸せの連鎖なのだろうか。

 これってやっぱり大事なんだよな。

 人を愛するって、突き詰めて考えると難しいことかも知れない。でも、たった一言でも相手を気遣い大事に想う言葉が言えるか、そしてその為に行動できるかなんだよな。自分が不利にならないように言い分けばっか考えてるヤツは、長くは続かないのをよく見てきた。

 これからもオレは彼女を大事にしていく。


 そうして…彼女と年取っても手をつないでいられたらいいなと…思う。

人を褒めるのって中々できないけど、褒められて照れるものの、嫌な気持ちになる人間はいないと思う。彼女は褒めることで彼を大事にし、彼は会って行動で彼女を大事にする。一般的に多分普通ではあるのかもしれない二人だけど、中々難しい気がする。好きじゃなくちゃ人は褒められない。もし嫌いな人に言ったとしても、オレは多分分かると思う。その人のオーラって、結構妙なものを感じたりするから。お互いに大事にし合っているから、幸せな関係を築いていけるんだと再確認した一品。器用な人間になりたいものです。

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