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第六十四話 『なかなか始まらない』

 −領主の館−

「サナダ……お前、今日この場がどういう場所かわかっているのか?」

 アリシャが呆れた表情で俺の姿を眺める。

「まぁ、アリシャさん……コールヒューマンのサナダに過度な期待をすると、こうやって粉々に粉砕されるのです」

 この中では一番若いジーニアがアリシャをなだめる。歳は確か十五だったような気がするが、十五歳に此処まで言われる十七歳の俺。なんとまー情けないやら悔しいやらで、思わず涙出てきちまうね。

「ジーニアさん……これがサナダ様の世界の礼服なのですから……」

 二十歳のエリファはやっぱり解ってくれてる。流石だね。アリシャやジーニアに圧倒的に足りないのは年齢の増加による、優しさの倍増だ。早くお前ら年取りやがれ。

 目の前に居る三人はいつもの見慣れた服ではなく、式典とかに参列する時に着用する、白を主体とし、金刺繍の施された将専用の礼服を着ている。

 ジーニアとエリファはドレスのような服を着て、日頃スカートを履いていないエリファがスカートを履くもんだから、非常に新鮮味溢れている。

「何が礼服だよ、その服装、こっちに来た時に着てたやつじゃねぇか」

 一人だけ男の将が着用する礼服に身を包んだアリシャが呆れた表情のまま俺の背中を小突く。日頃、太ももをさらけ出すようなかなり特殊なスカート着用している奴がなんで、こんな時にだけズボン履くかな。その姿見て思いっきりからかってやろうと思ったのに。

「馬鹿野郎。学ランは冠婚葬祭オール・ユーズ・キャンゴーな服だ」

「訳のわかんねぇ言葉でごまかすんじゃねぇよ」

 あぁ、誤魔化したさ。全部に使う事が出来るって英文、咄嗟に出てこなかったさ。

 しかし、ちょっと学ランを着たことを後悔し始めてはいる。俺にもアリシャと同じタイプの礼服を用意されたのだが、金刺繍の施された服を着るのが恥ずかしくて学ランの袖に久々に腕を通したのだが、周囲は白い服ばっかり。黒い服装の俺は嫌でも目立つ。

「そういえば、クレアはどんな服着るんだろうな? やっぱ領主っつったらこれ以上ド派手なもんかもなお姫様みたいなドレス着るんだろうかね?」

「残念でした、サナダ様」

 背後から急に声を掛けられ、驚いて後ろを振り返ると、白と黒が半々で、ズボンを履いたクレアが立っていた。勿論、刺繍は金。

「うぉ、びっくりした。ドレスじゃないんだな……」

 クレアの姿を褒めようかと思った矢先、俺の服装を見てクレアが眉を寄せる。

「サナダ様、この場で着る服を用意したでしょう? 駄目ですよそれを着ていただかないと。今回はサナダ様にも国王様直々に言葉を賜るのですから」

 初耳です。俺は全校生徒の前で表彰される人間を見守る側の人間の気持ちで此処に居たってのに。

「アリアさん、アトレシアさん、サナダ様を連れて行って、着替えさせてください」

「了解なのさっ!」

「わかりました」

 両脇と両足を抱えられ、俺退場。なんで?

「というか、クレアッ! なんでアリシャやアリアの格好が良くて、俺が駄目なんだよーッ!」

 俺の両足を抱えるアリアも、アリシャと同じで男用の礼服を着ている。此方はアリシャと違って金の刺繍が少なめである。

「え、ソーちゃん……あっち着たかったの? それならそうと早く言うのさっ! アリっちの分が余ってるからっ!」

「そういう意味で言ったんじゃねぇ!」


 やばかった。本当にやばかった。アリアを黙らせなければ本当に俺はドレス姿にされていただろう。女が男装すればそりゃ見栄えはするが、男が女装すればキモイだけ。アリアはそれが全く解っていない。

「ソーちゃん遠慮しなくても良かったのに……」

「誰だって遠慮するわい!」

「お前の姿見て思いっきり笑ってやろうって思ってたのに、残念だ」

「まぁ、その礼服姿もよくお似合いですよ、サナダ様」

「そうなのですか? なんかいつも地味な格好しているので逆に違和感があるのです」

「わっはっは、ワシとしては上着は要らんようにも思えるんじゃが」

「次からこれで戦に望めばどうです? 目立ちますよ?」

「しかし、長いですね、いつになったら始まるのでしょうかね?」

 礼服に無理矢理着替えさせられた俺は、アリシャらと合流。始まるまで固まって無駄話をしているところだ。

 周囲には俺達と似たような服を着た奴らが沢山居る。その服装を見るに、大体解る事がある。

 金の刺繍が派手な礼服を着ているのが将クラスの人間。金刺繍が少ないのが副将クラスの人間。金刺繍が胸のところでVの字になってる服を着ている奴が兵士ら。結構な数の奴らが集まってはいるものの、此処に駐留する兵士全員が参列しているということは無いだろう。

「たまたま今日が非番でよかったんじゃけ。こんな美味い飯が食えるような機会のあるときに館周辺の警備は嫌なんじゃけぇの」

 なんか妙な喋り方をする男、ガルディア・ガルディー。俺と同い年だと言ってはいるが、胡散臭い。身長は馬鹿でかく、一メーター八十五オーバーしてそうなぐらい。赤い髪をスーパーサイヤ人みたいに逆立てている。右目には動物に引っかかれたような傷がある男。何回か戦で一緒に行動した奴で、割と話はする。

「はは、ドルフさんやアーチャさんはついてないですね。こんな日に警備だなんて」

 そう言って申し訳なさそうに笑うのはピーズア・ローチ。頬に傷がある十六歳の青年。髪型は元服する前の戦国時代の子供みたいな感じだ。勿論、頭の上のほうは剃ってないが。一見頼りなさそうに見えるが、戦場じゃ頼りになる美男子。

「まぁ、しょうがないさ、今回は俺らがあいつらの代わりに楽しむとするか」

 俺は申し訳なさそうな表情を浮かべているローチの背中を叩く。咳き込むローチだったが、納得したように頷いた。

「そうじゃ、サナダ。明日時間あるかの? 今日の埋め合わせとして、ドルフ誘って街に出らんかの?」

 ガルディアの提案。答えはいうまでも無い

「おう、俺は今、絶賛・訓練禁止期間だからな、一日中暇だぜ? ローチはどう?」

「そうですね、明日は僕の隊の方も休みにしますよ。この場に参加できない部下達から恨まれそうですしね。まぁ、殆どの将らが、明日は訓練はやらないでしょうし」

 ローチもガルディアの提案を受け入れた。

「じゃぁ、アトラの方も誘うか? 今絶対あいつ、部屋で泣いてると思うから」

 アリシャ隊に所属しているアトラは、今回この場には参加できなかった。アリシャ隊でまぁ、活躍しているアイツだが、アリシャ隊の中では下っ端の位置。アリシャ隊の下っ端の仲間同士集まって今頃泣きながら飯を食ってるだろうな。

「ですね」

「じゃ、明日は良い男五人衆で街に繰り出すんじゃけぇの!」

 テンションの上がったガルディアが拳を振り上げる。こんな事していても将なんだからなんか納得いかねぇ。

「こら其処、さわぐんじゃねぇよ、みっともねぇ。ったく、なんだ男どもで悪さをする相談か?」

 アリシャが俺の後頭部を叩く。そういえば一番に俺をからかってきそうな人間が居なかったな。俺を叩いた逆の手には紙が握られていた。

「あれ、その紙なんだ?」

「これか? これは今日の予定をクレアに聞いてきた。知りてぇか?」

「いや、別に良いや」

 無言で俺の頭を再び叩くアリシャ。

 サンドバックみたいにボンボン俺の頭叩くな。馬鹿になったらどうしてくれる。

「その点に関しては安心しろって」

「どういうことですか、アリシャサン……」

 遠回しに馬鹿といわれたような気もするが、まぁいい。アリシャから紙をひったくって見てみるが、読めない。何度かアリシャの書いた文字を見たことあるが、筆跡が多分一緒。これはアリシャが書いた文字で間違いないだろう。

「お前、字汚ねぇな……俺と一緒に書き取り勉強するか?」

「バーカ。これは略字なんだよ。サナダ略字も知らないのか?」

 略字っていうと、あれか、日本字でいえば『間』の字がちょっと違う奴とかを言っているのか? そういわれてみると、アリシャの書いた汚い字でもなんとなく書いてある文字に見覚えがあるような……。 

「まだ参列者が全員そろってねぇから、開始は早くとも夕方過ぎになるだろうな」

「うへぇ、俺らそれまで待機かよ、ホント重役出勤憎たらしいぜ。そいつら放置で始められねぇのか?」

「馬鹿言うな、サナダ。領守導員居なくて始められるかっつうの」

 アリシャが俺のでこを叩く。今日だけで体罰、何回目だ?

「時間までアリシャは何してるんだよ?」

「オレか? オレは参加できない隊の奴らの所に言って自慢でもしてくるさ」

「根性悪いな、オイ」

 アリシャは自慢してくるって言ってるが、実際は違うんだろうな。

「サナダはどうする? お前も来るか?」

「それも良いが、俺は少しぶらついてるよ。暇になったら行くさ」

 アリシャと別れ、適当に館周辺をぶらつく事にした。


お久しぶりです。久々の更新です。

何でこんなに忙しいのでしょう、時間取れませんよ。

ほんと、一日二十八時間ぐらいにならないものでしょうか?

無理ですけどね。

とりあえずゆっくりと話を進めているので、温かい目で見守ってやってください。

あと二、三話はこの式典っぽいの続きます。

ほんと、計画性ないな……。

では、次回もお楽しみに!

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