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第四十話 『アリシャ隊に移動?』

 −ベルジ地方、中央砦−

 クレアを総大将とし八百人程度のスピリットヒューマンらが中央砦に集結した。

 周囲を見渡せばルノ帝国の旗が翻り、イベント会場に居るような錯覚さえも覚えるほどの人の多さ。

「こんなに人が居れば食事を作るのも大変そうだな……」

 元々砦の守りとして結構な数のスピリットヒューマンも居たわけで、更に八百人も加われば一度に用意する食事の量なんてとんでもない量になる事は明らか。

 今頃食事を作る役割の奴らは必死に調理してるんだろうな。そんな訳だからある程度不味くても俺は文句は言わないぜ。だが、限度を超えれば当然怒るが。

「もう腹が減ったのかだらしが無い奴だな」

「…全くそう」

 アリシャとレイラが揃って俺の肩を叩く。

 確か二人はクレアの補佐をしていたんじゃなかったか?

「あれ、アリシャにレイラ。こんな所で時間潰してる暇なんて無いんじゃないっけ?」

 俺の問いかけに二人は作戦会議のようなものが行われていたテントを見ろとばかりに顎でさす。

 テントからは次々と会議を終えた将らが出てくる。

「作戦会議はもう終わってたのか」

「そんな大層なモンでもねぇよ。現状報告だよ、現状報告。今敵の動きはどうだとか、この砦の食料は大丈夫だとか」

 アリシャは指を折りテントの中で話があっていた内容を全て俺に話してくれた。

 敵の動き、食べ物、周囲の町の被害、そしてエドラ側の動きを砦の守備隊に伝えたらしい。

 敵が攻めてくるというのに、その緊張感を持っているのは一握りの人間で、残りの奴らは心底しラックスしているように見える。

「緊張感ねぇな。こんなんで大丈夫なのかよ?」

 油断しきっている状態で敵に攻められてやられるという事は古今東西の戦場でよく見られ、桶狭間で織田信長方に討ち取られた今川義元方もこんな感じだったんじゃないのだろうか。

「大丈夫だ。敵はアリヴェラ平原の砦に退いてまだ動く様子もない。お前こそ今のうちからそんなに力んで大丈夫か? 戦闘になって気疲れしていちゃ話にならないぞ」

 アリシャは笑いながら俺の肩を叩く。鉄甲のほうで。

 滅茶苦茶痛い。

「それにしてもディレイラ、本当に良いのか? お前もこいつの事気に入ってるんじゃないのか?」

 急にアリシャが俺を指差し、レイラに問いかける。

 話の流れからして俺が関係してそうなんだが、主語が無い。

「大丈夫、今は貸し出しているだけ……そっちである程度鍛えてもらったら私の所に返してもらう…」

 レイラの口ぶりからしてアリシャに何かを貸していて、それが結構レイラが気に入ってるもので……ある程度成長したら返してもらう?

 ……ポケ○ンか。んな訳ねぇよ。

「しっかりと自分の隊員にしているんだな。まぁ、気持ちは解らんでも無いけどよ。ま、というわけださぁ、行こうか」

 アリシャは俺の肩を叩いて移動を促す。ちょっと待て、話の流れがわからんぞ。

「何処に行く気だよ、すぐに終わる用事だったら良いけど訓練とか時間掛かるのだったらお断りだぞ。レシアらから今後の説明とかがあるだろうから、それを聞き逃す訳にはいかねぇからな」

 俺の答えを聞いてアリシャは心底呆れた表情をレイラに向ける。

「……そういう事、真田」

 その場をごまかす様に腕を組んで頷きながら言うレイラ。

「どういう事?」

 レイラの仕草だけで隠された謎がわかるようなら俺は名探偵になれるな。行く先々で事件を巻き起こす、ちょっと…いやかなり迷惑な探偵に。

 俺達のやり取りが中々終わらないのに呆れたのか、アリシャがため息を吐く。

「はぁ、その様子だとディレイラ……サナダに伝えてねぇな。アリシャ隊でしばらくその身を預かるって」

「へぇ、そうなんだ……っておい!」

 レイラの方を向くと、顔を背け吹けない口笛を吹こうとしていた。

「いや、吹けてねぇよ。というかレイラ、なんでこんな大事な事を黙っていたんだよ……」

 そう言いつつレイラ隊を離れ、アリシャ隊に異動することを考えると少し寂しい。

 もしかしたら俺に中々言い出せなかったんじゃないんだろうか。レイラも多少なりと俺と離れる事を寂しがって、言い出せなかったんじゃ……。

「……忘れていた。何か忘れていると思ってたけど……」

 俺の想像は全く見当違いでした。

 まぁ、そんなもんか。そんな美味い話ねぇよな。

「でも……あの時の約束……今度は私がお願いする。守って……真田」

 約束。ガリンネイヴ平原の戦の時に俺が言った約束か。

 絶対守るさ。簡単に死んでたまるか。

「勿論だ」

 ガッツポーズをしアリシャ隊が集まっている場所へと歩き出した。

「……なぁ」

 しばらく無言で歩いていた俺にアリシャが問いかける。

「レイラ達と交わした約束って」

「簡単に死なないことかな。どんな状況でも諦めない、簡単に死ぬって考えない事だ。案外あいつ等危なかしくて」

 アリシャは目を丸くし、数秒フリーズすると大きな声で笑い出した。

 周囲に居た兵士達が何事かとこちらを窺い見たが、アリシャは気にしない。

「それを、それを真面目に言うお前らって……いや、らしい。らしいけど!」

 自分でも多少は可笑しい事を言っているという自覚はあっただけにかなり恥ずかしい。

 その恥ずかしさを誤魔化す為にぶっきらぼうに言い放つ。

「別に良いだろ、そんなの俺の勝手だし。つーか、アリシャもそうだぞ、絶対死んでも、死ぬなよ!」

「それは矛盾してねぇか? 死んでも死ぬなって。まぁ、悪くない言葉だな」

 アリシャは頷くと、また無言で歩き出す。

 それから言葉を交わす事は無かったのだが、どこか上機嫌で歩いているように思えた。


 −アリヴェラ平原の砦、近郊−

 砦の中が見渡せる高台の丘で二百名ほどの日本甲冑を身に纏った武士達はその時を待っていた。

「カコウ殿……敵はそろそろ動く模様。早急に二百名で敵を打ち、中央砦に居るルノ帝国に使い番を走らせ、協力してこの地方からアド帝国を駆逐するのがよろしいかと」 

 白銀の鎧に身を包んだロウキュウが目下の砦を指して言う。

「だが、本当に動くのか? ルノ帝国とは正式に同盟も結んでは無いだけでなく、援護の約定すら結べていない状況で……」

 大きな獣の角を兜の左右に生やしたチュウショウは不信感を露にし、身を震わせる。身体に巻きつけさせた数珠が鳴る。

「確かにそうでござるが、此処で平原の砦を我等が奪いそれをもって正式にルノ帝国と共にアド帝国を討ち果たすのでござるよ、東国再建の為に」

 カコウの言葉を聞いて、周囲の兵士達は盛り上がる。

「…皆の者! 敵が砦から出たでござるよ! 敵が砦から離れた時が勝負でござる」


ちょっと時間空いちゃいましたが……。

GWはある程度満喫できましたー。

さて、またこれから更新頑張りますか!


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