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第三十九話 『次の戦もベルジ地方』

 −オルタルネイヴ領主の館、大広間−

 戦から戻って暫くはアド帝国の動きがなく、こちらの編成も滞りなく行われていたのだが、夜明けと共に状況が一変した。

 エリファに聞いたところ、ベルジ地方とシュレイム地方、両方にアド帝国が攻め入ってきたらしい。敵も折角手に入れたオルタルネイヴ領の一部を失いたくないらしい。

 俺たちは大広間に集められ、今後の予定をこれから言い渡されるのだろうな。

 将らが集まっている中、大広間の扉が開き、数人の部下を連れたエドラが俺達の前に立つ。

「皆も知ってのとおり、アド帝国の進行が再会された。現状況としては、シュレイム地方に千百、ベルジ地方に九百の兵が集結しているようだ」

 えっと…ということは、二千人が集まって来ているのかよ!?

 待て待て待て。かなりやばい状況じゃねぇか!

「敵はオルタルネイヴ領に存在する兵をほぼ集め、どんな犠牲を出してでも二つの地方を取り戻し、一気にこの領内を平定するつもりだろうが、こちらも指を咥えて見ている訳にはいかない。我等も動員できるだけの兵を集め、決戦を行う」

 前動かせるのは八百人程度って言ってなかったか? 流石に二倍以上ある兵力差はどうしようもならないよな?

「前回の戦で二つの地方を取り戻した事により、敵の勢いが弱くなって、急速に敵の戦線が小さくなってきている。これにより、隣接領であるバルドス、ネイド領付近の砦に回していた兵を此方に割く事が出来る」

 うん、少しは解るようになってきたと思えたのは気のせいだな。もう俺の思考はついていけない。

 とりあえず、エドラの口調からして、互角ぐらいの兵力を割ける訳だな。

「まず、シュレイム地方に攻め入った敵を千の兵で打ち払い、そのまま余勢をもってヘルムランド地方を取り戻す。ヘルムランド地方を取り戻せれば、一気にアド帝国を領内から駆逐できるであろう」

 じゃぁ、次の戦はヘルムランドって事か。

 まぁ、どんな所かは全く想像できねーが。

 旅行に言った先で、行きたい博物館とかの場所を現地の人に聞いた時に、国道何号線を真っ直ぐ行くと、国道何号線に乗りかえれるからと、説明を受けた時のような理解不能なものだよな。

 地元の人にしてみたら、その話に出す国道はかなりポピュラーな道路だろうが、土地勘のない人間にそんな事を言われてもねぇ…?

「なお、ベルジ地方へ攻め入った敵は八百程度の兵を持ってそれを抑えてもらう」

 人数的にもかなりの大きな戦になりそうだな。

 兵士や将ももっと増えるのか。

「エドラ殿」

 粗方説明が終わった広間にクレアの声が響く。

 皆の注目を集め、クレアは静かに前に出る。

「ベルジ地方への抑えは私に任せてもらえないでしょうか?」

 クレアの提案をエドラは鼻で笑う。

「オルタルネイヴ領『領主』殿が何を申されますか。仮とはいえ、国王へ直訴し、普通なら考えられない地位に居る事を貴女は解っているのですか? 貴女は戦のことではなく、現ルノ帝国勢力下にある街の税を集める事だけを考えてもらえればいいのですよ」

 税? 税金の事か?

 そうだよな、ルールがあるからこそ国が成り立っているわけで、やっぱそういうのもあるんだよな。俺たちは一応金も貰ってるし、食事も出る。それは全てタダじゃない、何処かでそれを搾取しているんだよな。

「領の危機を前にただ黙って入ってくる金や食料の事だけを考えている者にどうして人がついて来ますか! いざという時に後ろに居る権力者に誰がついてきますか! 仮とはいえ領主になったからこそ、前に出なくてはいけないのではないですか!」

 聞いた事のない程にクレアは感情を爆発させ、エドラに食って掛かる。

 思わぬ反発にエドラは言葉を失い、はき捨てるように呟いた。

 会議が終わり、大広間に居る将らが少なくなった時点で、俺たちはクレアを囲んだ。

「急になんて事を言い出すのですか、クレア…正直驚きましたよ」

 驚いた表情を浮かべ、エリファは何度もクレアに小言を言っている。

 俺もまさかエドラが折れるとは思わなかった。

 またベルジ地方に戻り、敵と戦うのか。

「ッ!」

 一瞬ケルヴィンの顔が脳裏に浮かぶ。

 ベルジ地方には十中八九ケルヴィンが居るだろう。次こそ、次こそは前のような失態はしねぇ。

 

 −ベルジ地方・中央砦近郊−

「カコウ殿、敵は中央砦を狙う模様。その時に一つ砦が手薄になるようなのですが……」

 ロウキュウは兜を脱ぎ、面頬を外しながらカコウに問いかける。

 カコウは笑みを浮かべ、灰色の髪をなびかせながら、血のように真っ赤な瞳で空を仰ぐ。

「確かにそうでござるな。今拙者の下に集った東国の生き残りは二百人とかなり増えたでござるよ、ガリンネイヴの戦で拙者らの名を聞いて、よく遠方から此処まで馳せ参じてくれたでござる」

 カコウは自分の刀…野太刀を抜き放つ。

「皆の者ッ! 我等東国武士団の意地を見せる時ぞ! 目標は手薄になったアリヴェラ平原の砦でござるッ!」

 カコウの声を聞き、周囲に大きな鬨が上がった……。


 −アリヴェラ平原・スフォ砦−

 風が強く吹きぬける櫓の上でケルヴィンは周囲の木々を見つめる。

「ケルヴィン、此処に居たのか」

 櫓の梯子を上り、無精髭を生やした三十代ぐらいの男が顔を出す。

「マッシュ殿……」

「そんな顔をするな、別に用事があって来たわけでは無いからな」

 では、何故と問うケルヴィンに無精髭の男、マッシュは笑いかける。

 風が吹きぬけ、木の葉同士が擦れ合う音が周囲に響く。

「これから、これからが大きな勝負になるぞ」

 マッシュはアリヴェラ平原を仰ぎ見る。

 これから戦が始まるとは思えない静けさだった……。

ちょっとあいちゃいましたが、投稿です。

最近は中々書けなくて大変です。

次回から戦突入です。

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