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第5話.特訓!!

 焼け焦げたオイルのにおいが漂っています。

 暗い空から落ちてくるのは黒い雨。

 そんな雨と泥にまみれた世界に彼らはいました。


 いや、彼らというのは、間違いかもしれない。

 その一体は、今消えたから。

 それを抱えていたもう一体は悲しみの声を挙げています。


 不意にその周囲に黒い霧が立ち込めました。

 立ち込めた霧は一点に集まって、やがて人の形を取り始める。


 『ぞろりっ』


 動き出したそれを見たとき私の意識は途切れました。



「うひゃわぁぁぁぁ」


 全身汗まみれて跳ね起きました。

 心臓がありえないほどの鼓動し、全身に震えが出ています。

 訳も分からずしばらく震えていました。

 隣では、アカ・アオコンビが静かに寝息をたてています。


 悪夢を見るたちではないのですが、今回の件がストレスなのかもしれません。

 起きるには早い時間ですが、シャワーを浴びることにします。

 静かにベットを抜け出しシャワールームへ移動します。


 少し熱めのシャワーを浴びながら、さっきの夢の内容を思い出そうとします。

 しかし、思い出そうとすればするほど、ぼやけていきます。

 冷たいシャワーに切り替えて、すっきりした後、シャワールームを出ます。


 時間があるので、アオちゃんのメンテ関係の資料をチェックします。

 10年後の私は図面一式をアオちゃんのメモリーに入れておいてくれた様です。

 古くなった部品では動作が怪しいので、出来る限り新品に交換することにします。

 そんな作業をしていると、アカ・アオコンビも起きてきました。


「おはよ、のどかちゃん。今日は早いね。雨降るよ」

「おはようございます。すぐに朝ごはんの用意をします」


 どちらがいい子なんて事は説明するまでも無いですよね。


「その前に二人とも髪をとかしたほうがいいかな」

「だめだよ。アオちゃんの髪はアカのものだよ。これだけは譲れないね」

「私の髪は、私のものですが・・・」


 アオちゃんのブラッシングをめぐって、不毛な争いが勃発しました。



 朝ごはんの後、アオちゃんのメンテナンスの準備をしているところに声が掛かります。


「のどかちゃん。じゃあ僕行ってくるね」


 お気に入りのポシェットを斜めがけしたアカでした。


「ほんとに、一緒に行かなくていいんですか?」

「大丈夫だよ。のどかちゃんは、アオちゃんのことをよろしくたのむよ」

「まったく、誰に言っているんですか?」


 頬をつついてやる。


「それじゃあ。車に気をつけて。あと、知らない人について行ってはダメですからね」

「僕は、小学生ではありません。じゃあ、アオちゃんも行って来ます」

「いってらっしゃい。アカおねーちゃん」


 作業台がわりのローテーブルに乗っているアオちゃんが首をめぐらしてアカを送り出す。

 手持ちの計測器を繋いだ姿は、さながら蜘蛛にとらわれたお姫様です。

 さて、邪魔者も出かけたところでメンテナンスの時間です。

 緊張気味のアオちゃんを和ますための軽いジョークはお約束でしょう。


「さて、アオちゃん。覚悟はいいですか?大丈夫ですよ、痛いのは一瞬ですから」

「覚悟は出来ています。ひと思いにどうぞ」


 アオちゃんは、決死の覚悟を決めたようです。

 涙目でちょっと震えています。

 あれ?逆効果だったみたいです。


「ごめん不謹慎だった。そんなに決死じゃないから。気楽にしていいから」


 未だ不安そうなアオちゃんをなだめてから作業を開始します。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 チェックを終了し、改めてチェックリストを確認する。


「うーん。思ったより状況は良くないですね」


 元々、経年劣化している上、タイムトラベルの影響か劣化が進んでいます。

 これは修理完了までタイムパラドックス修正とか、重い処理はやらないほうが無難ですね。


「とりあえずは部品を取り寄せますので、アオちゃんはしばらく自宅待機でおねがします」

「...はい」


 沈んだ様子のアオちゃん。


「大丈夫ですよ。入手性の良い部品なので、一週間ぐらいで復帰できると思います」


 そういって、アオちゃんを元気づけます。


「そうだ。後でアカの訓練を見に行きませんか? アカ、張り切っていました」


 部品を発注したあとアオちゃんを連れて、ニコラ・テスラのところに行きます。

 相変わらず殺風景な会議室に、例のゴーグルが置いてあります。

 アオちゃんも直接端末接続でバーチャル空間の訓練場所にログインしています。


 ずんっ


 いきなり身体が重くなりました。

 集中しないと呼吸さえ困難です。

 ニコラ・テスラが、こちらに気づくと急に身体を包んでいた重さが消えます。


「失礼した。アカちゃんの処理能力を見るのに、バーチャル空間の負荷を増加させているのだ」


 アカの動きがぎこちないのは、そのせいですか。


「アカ。大丈夫ですか?」

「うみゅぅ」


 朝の元気はどこへやら、結構へばっている様です。


「基本スペックを上げてからでないと、我々の学習処理プログラムに耐えられない。アカくんには現状スペックの10%増しで負荷強度を調整している。おそらく、3日程度で学習プログラムが適応できるだろう」


「...3日も、うにゃぁぁぁ」


 アカは、絶望的な声を出して、めげそうです。

 アオちゃんと一緒になだめていると、ニコラ・テスラが急に厳しい顔で近づいてきました。


「例のタイムパラドックスが原因と思われる電磁場の歪みを検知した。場所は、テスラタワー5Fの一般サーバー室だ」

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