第4話.ニコラ・テスラ
アカとアオちゃんのシステムチェックを一通り終了しました。
アカは問題はありませんでした。
しかし、アオちゃんの部品の劣化が思った以上に進んでいました。
タイムパラドックスを起こさないため、こちら側の部品でそろえた結果でしょう。
一度、徹底的なメンテが必要になるでしょうね。ふっふっふっ
夜も更けてきました。
ニコラ・テスラを使うための費用の承認願いと本日分の報告書が残っています。
さっさとやってしまおうとパソコンに向かいます。
「のどか様、お茶をご用意しましたので、少し休憩なさってください」
アオちゃんに声をかけられて、作業を中断します。
肩をぐりぐり廻すとバキバキ音がします。
私、肩こりしやすい体質なんです。
ダージリンのマスカットフレーバーを楽しみながらドールたちをぼんやり眺めます。
アカは、妹が出来たことを素直に喜んでるみたいですね。
「アオちゃんには、このカチューシャが合うんじゃないかと思うんだけどどうかな」
「いぇ、私はそのような可愛らしいのはちょっと...もう少し簡単なものを頂きたいのですが」
「えーダメだよ。おねーちゃんの言うことを聞いてこれを着けなさい」
なんだか見ているだけで癒されます。
アオちゃんが助けを求めるような瞳でこちら見ています。
その瞳さえ、私的にはご褒美です。
和んでいると、部長から承認メールが届きました。
結構、面倒な依頼をしたので、時間かかると思っていたのですが流石です。
昼行灯の様に見えてあの人はなかなか優秀なのです。
「さて、準備も整ったので、明日は『ニコラ・テスラ』にご挨拶に行きましょう」
その日は、アカとアオちゃんに挟まれて寝ました。
あぁ、幸せ。
翌日は、朝からテスラタワー出かけました。
近くのオープンカフェで軽めのモーニングを頂いてからサーバールームに向かいます。
ニコラ・テスラは、世界一使用が難しいサーバーとしても知られています。
その理由が専用AI『ニコラ・テスラ』の気に入った仕事しかしないことに由来します。
『あらゆるシガラミからとき放たれた知的好奇心そのもの』
『最新テクノロジーにて構成された職人気質』
『人のつくりし神』
等々
その通り名のそれぞれが、その在り様を如実に表しています。
正直、少しビビっています。
まぁ、頑張ってみましょう。
指定の待合室に通されると、そこにはゴーグルが置かれています。
「『PUT ON ME』?」
不思議の国のアリスを思い出します。
まぁ、ネタは割れてます。
どうせこれを被ると、ニコラ・テスラのアバターが現れるんでしょう。
そう思って気軽にゴーグルを被った途端、私は引きつりました。
さっきまで、誰もいなかった席に全員部長の顔をした人が腰掛けています。
部長たちのがじっと私を見ています。
(*'▽'*)♪知らなかった。部長って兄弟多いんですね。
自分のSAN値がガリガリ音を立てて削れていくのがわかります。
「お初にお目にかかる。我々がニコラ・テスラだ」
中央に座った部長が私に声をかける。
「最初に言っておくが、我々にもともとこういったアバターはない。来客があった時だけ、その近親者の姿を借りていのだ。皆、何故だか取り乱すのだがね」
茶目っ気たっぷりにウインクをしている。
完全に確信犯ですね。
流石の私も取り乱しました。
「君のレポートを見させてもらった。最近発生していたサーバー不具合の原因がタイムパラドックスであるというところが面白い」
「別に小説の講評をしてもらいに来ている訳ではないのですよ」
右隣の部長が話を受ける
「冗談だ。確かに信じがたい話ではあるが状況証拠ある。そこのアオくんだ」
「アオちゃんですか?」
今度は左です。
正直あちこちでしゃべらないで欲しいです。
「そうだ。このサーバールームに入る時、いろいろと調査させてもらった。彼女に使われている部品は、シリアル番号から言うと二、三週間以内に作られているにもかかわらす、製造から10年以上経っている」
私がさっきメンテナンスで知った事実を非接触で分析ですか。
さすがに『人の造りし神』です。
「余計な忠告かもしれんが、その娘のメンテナンスは早めにした方がいい」
「いえ、ご忠告ありがとうございます」
こちらでメンテできるように、わざわざ古い部品でアオちゃんを作ったのだろう。
10年後の私の期待を裏切らないように、完璧にメンテして見せます。
「君の動機には多分に個人的なものも含まれているが、だからこそ最善を尽くすものと理解している。我々の期待を裏切らないようにしてくれ」
ニコラ・テスラさんたちは順次姿を消していき、最後にひとり残された。
「それでは、具体的な方法論の話をしますか」