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第3話.タイムパラドックス

 稲妻と共に現れたテスラドールは、自分を10年後から来たドールだといった。

 今回のテスラドールのトラブルが、10年後に起きる事件の影響であり、その解決のために私のもとに来たという事だった。


「しかし、事件捜査なんて専門外で役には立てないと思いますよ」

「この事件はテスラドールを中心に発生しています。そしてテスラドールの開発者は、のどか様です」


 確かに、システムの最深部はロックをかけている場所が多いのです...ふたを開けたら20年後の私が犯人とか無いですよね。


「例えば何もない空間から目的物を取り出す『ディラックの海』という技術ですが、本来10年後にあるべき技術ではありません。突然送られてきた『更新のお知らせ』と共に全テスラドールに実装された機能なのです」

「それって、今回の事件と同じじゃないですか」

「10年後も突然のオーバーテクノロジーに混乱しました。のどか様の手によって修正プログラムが作成され、それを使ってアカねーさんが押さえています。しかし...」


 アオさんは、アカを少し見てから言葉を紡ぐ。


「アカねーさんは修正プログラム実行のためそれ以外の機能をスリープにして頑張っています。でも、こちら側からこれ以上浸食されるとシステムが過負荷になります。アカねーさんは、二度と目覚めないかもしれません」


 アオちゃんは、顔を伏せてとても悲しそうに見えます。

 アカが頑張っている姿が目に浮かびます。

 そんなの私が頑張らなくい訳にいかないじゃないですか。


「10年後の私、貴方を手ぶらで此方に寄こしてはいないでしょ?」

「私に修正プログラムが組み込まれています。私一人ではタイムパラドックスを修正できませんが、アカねーさんと一緒ならできます」


 そこが腑に落ちません。

 アカの能力はちょっと良いサーバー並み、そんなプログラムを実行できません。

 テスラドールは、自己進化AIを積んでいるので鍛えれば処理能力が上がります。

 おそらく、私かアカを鍛えること前提の計画なのでしょう。


 アカの場合は教育用サーバーで鍛えるだけ鍛えて何とか今の状態です。

 さらなるレベルアップには相当な訓練が必要になります。


「アオさん。その修正プログラムを実行するための最小限のスペックを教えて。それに合わせて、アカの教育プログラムを組みます」

「了解です。それと私のことは『アオ』とお呼び下さい。未来とはいえ私もあなたのドールなのですから」

「判った。じゃあ、アオちゃんって呼ぶね。あなたも『のどか様』は止めてね。いろいろくすぐったいから」

「そうだよ。アカのことも『アカ』でいいよ」


 ちょっと困った様な顔のアオちゃん。


「できれば、のどか様は『のどか様』、それとアカ様は、『アカねーさん』とお呼びしても良いですか?ずっとそうお呼びしていたので落ち着きます」

「うん、いいよ。そっか、アオちゃんはアカの妹だもんね。いいよ、おねーちゃんに甘えても」


 お気楽に答えて、アオちゃんに抱きつくアカ。

 アオちゃんもなんだか、まんざらでも無い様子です。

 そっか、シリアル番号から言えばアカは全てのテスラドールのおねーちゃんだもんね。

 こう見ると全然タイプが違うけど、姉妹に見えてきました。


 『のどか様』か。

 ううっ、くすぐったいなぁ。


「まぁ、とりあえず一度宿に戻ってアカを鍛える準備をしましょう」


 レベルアップについては少しアイディアはあります。

 テスラタワーに住む世界最強のAI『ニコラ・テスラ』の協力を仰ぎたいところです。

 アカが、今とは比べものにならないほど進化するかと思うとワクワクしてきます。


「のどかちゃん。なんか不気味な含み笑いしていたよ」

「不気味とは失礼な。素晴らしい未来予想図に乙女心が揺れただけですよ」

「のどかちゃんの未来予想図は、設計図とシステム図で出来ていると思ってたけど」


 失礼な。

 まぁ、今回に限り否定はしません。

 ニコラ・テスラとガチでやりあったハッカーはすべて病院送りと聞いています。

 教育とはいえ、ハードの隙があれば一瞬で回路を焼き切られる可能性だってあります。

 耐えられるようにチューンアップしておく必要があるでしょう(ウキウキ)。


 旅行鞄に詰め込んできた計測器と部品棚を引っ張り出しながらアカを呼びます。


「じゃあ、アカ。少しだけ弄らせて。アオちゃんも次に診せてね」


 今世紀最強に対抗するためのアイディアを考えながら工具を握ります。


「のどかちゃん。優しくしてね」

「大丈夫ですよ。痛みを感じれるのは最初だけですから」


 軽いジョークで受け流したはずですが、アカの瞳には本物の恐怖が浮かんでいました。


「アオちゃん、短い付き合いだったけど会えてよかったよ」

「アカねーさん」

「いい加減に、観念しなさい」


 別れを惜しんでいるふりして、こっちに来ないアカを作業台に引っ張り上げました。

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