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技術系研究員 由比川のどかの日常  作者: 錬金術師まさ
実験潜水艦アルバコア
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第8話.脱出

『ふにっ』


世の男性が憧れるという金髪美女をお姫様抱っこしながら柔らかなバストの感触を楽しむというシチュエーションに、特に萌えるものも無く神の不公平について悶々とストレスを募らせています。


「何で私が貴方に抱きつかなきゃならないんだ」


おまけに当のお姫様は、童話のようにしおらしくすることも無く何やらご不満の様子。この様な状況を耐え忍ぶ広い心を持ち合わせていない私としては、反撃を開始します。


「仕方ないじゃないですか。バリヤジャケットで守らないとあなた酸欠&ぺっちゃんこですよ。まぁ、その無駄に育った駄肉を凹ましてスタイルを改善したいと言うならば話は別ですけど Σ(-_-+)」


「な、駄肉とはなんだ駄肉とは」


 いきり立って、顔をこちらに向け抗議をするヴェルナー。


「顔近いですよ。もう一度キスして欲しいんですか?仕方が無い人ですね。慎みというものが無いのですか?」


 感触を思い出したのが、顔を真っ赤に染めながらうろたえるヴェルナー。


「えっ..そっ、それは、いや...べっべつに、いやというのは拒絶ではなく...なにを言っているんだ私は...でもお前が望むなら....うわぁっ」


 いつもなら簡単にいなされる程度の挑発で、あっけなく撃破できるところを見ると未だ本調子ではないようです。そういえば、さっきから人の顔をチラチラ見ている割に、目が合いそうになると下をみたり、そっぽを向いたりと著しく挙動不審です。


「どうでもいいですから、あまりゴソゴソせずにしっかりとしがみついていてくださいな。ただでさえバランス崩しそうで怖いんですから」


「...わかった」ぎゅっ


 しっかりしがみついてくれたので、大分泳ぎやすくなりました。密着度が上がって駄肉からの圧力が増したことは目をつぶることにしましょう。


「そろそろアルバコアにつくよ。いい加減イチャイチャするのやめてピシッとしてくれないかな」


 赤い子がニヤニヤしながらこちらをうががっています。それだけでも腹が立つのに、青い子は「ブツブツ」言いながら妄想の世界に入ってしまっているし、メガネの子は申し訳なさそうにチラチラこちらを伺っている始末。


 目下の被保護者に八つ当たりをします。


「元はと言うもの貴方がこんな所に攫われるからでしょう。反省しなさい」


「反省してる」


 あら素直。素直すぎてなんだか気味が悪いです。その気味悪さは、アルバコアに入ってコックピットに入ってからも続きます。


「貴方ねぇ、もうバリアジャケットなくても大丈夫なんですよ。早いとこ離れてくださいよ」


「...だめか?」


「へ?」


「くっついていてはダメなのか?」


 潤んだ瞳で助けを求めるように私を見つめるヴェルナー。何だか本気で調子がおかしいようです。


「お前のおかげで暗示は解けた。だけど、いつまた奴らの暗示にかかるかと思うととても恐ろしいんだ」


 なるほど、確かに離れていても効果のある催眠の類ならそうゆうこともあるでしょうね。まぁ、こんなヤツでも古くからの悪友です。お上にも若干の慈悲はあります。


「わかりました、わかりましたから。ここで操られて暴れられても面倒なので、今回だけ、本当に特別のはからいで、このままでいてもいいです。但し、どんな種類の催眠かわからないので、防げるかどうかわからないですよ。それでも良いですか?」


「あぁ、その時は、またお前の手で目覚めさせてくれ」


 また怖いことをいう。それってつまりもう一回しろということですか。私もうら若き乙女ですよ。そういうことは、白馬に乗った王子さまの役目でしょう。なんだか、釈然としないものを感じます。


「後方からスクリュー音。ソナーの反応から見ると一人乗りの超小型潜水艇みたいです」


 集音器担当のアオちゃんが、こちらを振り向きながら報告する。


 なぜ魚人なのにワザワザ潜水艇?と一瞬思ったのですが、流石に完全武装の潜水艦の前に生身で立つのは嫌でしょう。私なら嫌です。


「スクリーンに解析データ出ます」


 スクリーンに出たのは潜水艦というより魚雷を抱きかかえた戦闘機のような形状の潜水艇です。アルバコアよりだいぶん小さいですが数は脅威です。


「魚雷射出音多数、スクリュー音急速接近中!」


「かなたちゃん、操舵任せます。避けて」


「急速潜行!!」


弾かれる様に潜航を開始するアルバコア。そのすぐ上を通過していく魚雷、しかし獲物を狙うサメのように方向を転換して、アルバコアに追いすがる。


 そのスクリュー音をアオちゃんが聞き取る。


「スクリュー音、アルバコアに追いすがってきます」


 魚雷発射準備をしていたアカが、かなたちゃんに声をかける。


「デコイを撃つから、撃ったと同時にエンジンを停止してね」


「了解です」


 デコイ用魚雷を射出すると同時に、エンジンを停止するアルバコア。流石に息ピッタリです。敵魚雷はデコイに釣られてアルバコアから離れていき着弾、消滅します。


 しかし、この間に追跡してきた小型潜水艇に追いつかれてしまいました。


「囲まれると不味いから、とりあえず逃げましょう」


「その前に片付けてしまえばいいよ。1番から6番魚雷、前方の敵潜水艇に向けて射出!!」


 アルバコアから射出される魚雷。敵潜水艦に近づくと外装がパージして無数の小型魚雷となって、敵潜水艦に襲い掛かる。


『ゴウン、ゴゥン』


 魚雷は敵潜水艇近傍で破裂しキャビテーションの泡を発生する。目くらまし攻撃だったのだが魚人たちの潜水艇は、次々とはるか海底へ消えていく。


「助かった...けど、なか効果ありすぎですけど」


「多分、あの船の中には魚人たちが呼吸できるように水が満たされているんだろう。そこにあれだけの衝撃が来たら目を回しても不思議はないさ」


 だいぶ落ち着きを取り戻したヴェルバーが解説する。なるほど、通常の潜水艦は乗組員の周りは空気ですが、魚人さんたちの周りは水、水は非圧縮性流体だから衝撃は直接乗組員に伝わります。


 流石の分析力です。これでしっかり私にしがみついていなければ随分と説得力があったでしょうに....


「魚人さんとはいえ、あれだけの衝撃をくらってはひとたまりもないでしょう。スプラッタなことになっていたら夢見が悪いですが....」


「躾のなっていない軟派魚人にはいい薬だよ。このまま勝ち逃げすることにしようか」


 勝手に話を進めようとするヴェルナー。だけど現実はそんな簡単にはいかないのですよ。


「のどかちゃん!あれ見て!」


アカの指差すディスプレーに現れた小山のような影。アルバコアの天敵『ダゴン』の登場です。

魚雷発射菅スタンバイのランプが次々と点灯します。

「魚雷1番から6番まで射出」

魚雷は巨大な影に一直線に進んでいきますが、『ダゴン』はその姿に似合わない俊敏さで魚雷を避け、魚雷はただ虚しく海底に沈んでいきます。


次回「実験潜水艦アルバコア 絶対絶命」

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