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技術系研究員 由比川のどかの日常  作者: 錬金術師まさ
実験潜水艦アルバコア
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第4話.深き神殿


 横たわる一枚岩の岩盤に人工的に切り出したような跡。

 人がちょうど歩くことができそうな通路、階段状の壁、柱が立っていたと思わせる穴。

 透明度抜群な南シナ海の海中から絶景をお届け中です。

 ここ与那国海底遺跡へのアクセスは、実験潜水艦アルバコアで那覇から15分!!

 今なら、お茶とお菓子サービス付きです。

 というわけで、私達はいまアルバコアで与那国海底遺跡の観光に来ています。


「これは完全に人工物でしょ」

「でも沖縄県は、人が関与した痕跡があると判断できないとの理由で、遺跡として認定していないらしいぞ」

「そうなの...て、よくそんな事まで知ってるわね」

「私は、元々こういったアドベンチャ的な話は大好きなんだ。此処に来るまでに下調べはしたんだよ」

「ホテルなんかの予約は全部はるかちゃんに丸投げしてね。どうせなら、貴方だけダイビングすればよかったのに」

「まさか、こんな便利なものがあるのだから利用しないてはないだろう?大体あれは髪が痛むんだ」


『アルバコア』のコックピットには、お茶とお菓子が広げられ、ちょっとした喫茶店気分、目の前に広がる大パノラマを見ながら飲むお茶はまた格別です。


「あ、のどかちゃん。お菓子こぼしてるよ。後で掃除が大変だから注意して食べてよ」

「ヴェルナー様、のどか様。お茶のお代わりは如何でしょう?」


 初めは『乗せるだけだよ。何の世話も焼かないからね』と言い放っていたドールズだが、傍若無人なマスターズには逆らえず、なんだかんだと私たちの世話を焼いている。


「そういえば、ここについて面白い説があってな。ここは只の石切場でここで切り出された石は別の場所に運ばれて別の場所で神殿を作るのに使われたという説だ。しかもまだこのどこかに神殿に続くゲートが残っているんだそうだ」

「面白そうなお話ですけど、こんな海底で誰が石を切り出すんですか?」

「『深きものども』あるいは『ディープワンズ』と呼ばれるカエルのような顔したマーメイドの一種だ」

「...日本人の感覚だとカエルと人魚は結びつかないんですけどね」


 やっぱりマーメイドはおとぎ話に出てくるような存在であってほしい。

 カエル顔のマーメイドなんて許せない。


「で、奴らが自分たちの神の神殿を建てるために、ここから切り出した岩を転送するための転送ゲートがまだあると言うんだ」


 深い海底で、カエルの顔をしたマーメイドが岩を切り出して、どこかにある彼らの神のための神殿を建てている。

 多分、その神様もカエルなのかな?

 そんなのが列を成して岩を運んでいる鳥獣戯画を思い浮かべる。


 ちょっと気持ち悪い。


「ふ、ふーん」


 そっけない振りをしたつもりが、声に怯えが入ったところを聞きとがめられてしまった。

 勝ち誇ったような顔で笑いかけられる。


「なんだ怖いのか? 結構可愛いところがあるじゃないか」


 くっ、言われっぱなしは性に合わない。

 何か言い返してやろうと、対抗策を考えていたときに横合いから邪魔が入った。


「マスター、ここなにか書いてあるように見えませんか?」


 かなたちゃんが見ていたのは、通路のような形の石積みの内部構造を解析した写真だった。

 確かに何かが彫られている。

 象形文字の様だが、もっと根源的に何か違う感じがする。


「読めないし、なんだか見ているだけで気分が悪くなってきたよ。現代語訳はないの?」

「アルバコアのメモリにはパーねーさんの異界の知識が入っています。それを使えばあるいは...」

「面白そうじゃないか。かなた、ちょっとやって見てくれないか?」

「はい。マスター」


 アルバコアのメモリーにアクセスし始めると"ぼうっ"と かなたちゃんの身体か光り始める。


「判りました。セラエノ図書館の辞書複製の中に同じ記述があります」


 アルバコアのディスプレイ上にその記述が浮かび上がる。

 何気なくディスプレイに現れたそれを読んでみる。


「フングルイ ムグルウナフ クトゥルフ ルルイエ ウガフナグル フタグン(ルルイエの館にて 死せるクトゥルフ夢見るままに待ちいたり)」


 急に周囲の石碑が光り始め、膨大な光の中に飲み込まれるアルバコア。

 身体が引き伸ばされるような、つぶれるような妙な感覚に襲われる。

 やがて光が消えて、妙な感覚も消える。


「な、なに?どうなったの?」


 車酔いの様な感覚に襲われながら、パイロットの かなたちゃんに確認する。


「ちょっ、ちょっと待ってください。アオねーさん。確認お願いできますか?」


 はるかチャンから受け取ったデータを再解析しているアオちゃん。


「間違いないですね。南緯47度9分、西経126度43分。太平洋のど真ん中です」


「それより、外がすごいことになってるぞ」


 珍しく興奮したようなヴェルナーの声に、外をみると其処には古代の石造建築で作られた神殿がそこにあった。

「あんたは何でこうも後先考えないのよっ」ヴェルナーのグリグリ攻撃が炸裂する。

「いたっ、いたいよ。別に悪気あったわけじゃないんだよ。ただ何となく...」

「何となくで訳の判らん神殿へ引っ張っていくのか貴様は!!」更に圧力を増すグリグリ攻撃。

次回「実験潜水艦アルバコア 追跡する影」

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