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技術系研究員 由比川のどかの日常  作者: 錬金術師まさ
実験潜水艦アルバコア
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第1話.由比川のどかのバカンス


いきなり労働組合からの電話が入った。

『有休をとれ』とのことだ。

 出張や大型プロジェクトで、全く有休を使っていなかったので、目をつけらてしまいました。

 有休をとるが、とらないなんて個人の自由だと思うのですが、これを盾にして長期連休を取ることが出来たので不満はありません。


 残っていた残務も、アシスタント君たちの頑張で当日までには処理が終わりました。

 バカンスです。

 本当に久々のバカンスがやってきました。

 ドール組の強い要望で海となり、それならばと一度は見てみたいと思っていた『与那国海底遺跡』に行くことにしました。


 そして今、那覇空港に飛行機が着陸したところです。


 那覇空港に到着するとタラップから降りると南国特有の強い日差しのお出迎えをうけます。

 改札を抜けて荷物を受け取るためターンテーブルでキャリーバックをゲットして空港を後にします。

 ここからゆいレールで移動ですが、流石に大きなアタッシュケースは邪魔になるので中を開けることにします。


「お疲れ様。揺れなかった?」


 アタッシュケースの蓋をあけながら、極力優しげに声をかけます。


「ひどいよ。私たちは荷物じゃないんだよ」

「そうです。不当な扱いに断固抗議します」


 そんな心遣いはお構いなしに抗議の声が上がる。


「仕方ないじゃないですか。あなたたちはどう考えても電子機器ですからね。テイクオフの時エンジンが止まったらどうするつもりですか?」

「そんなのは都市伝説です。のどか様設計の私達がそんな電磁ノイズを撒き散らすわけありません」


 理論派のアオちゃんに私はのんべんだらりんと答える。


「だって、安全性の証明とか超面倒くさいし....」

「のどか様、そんなんだから私達の地位も上がらないのですよ...」


 小言モードに入ったアオちゃんに適当な受け答えをしながら私の心は既にここには無い。

 パンフレットで見た『与那国海底遺跡』が私を呼んでいます。

 アタッシュケースをコインロッカーに放り込んで、ゆいレールの切符を買う頃にはアオちゃんの小言も終了ました。

 アカ・アオコンビは、窓の外を流れるリゾートムード漂う風景を眺めています。


「貴方たち、わかっているとは思いますが今回のポイントは水深25mという結構深いところにあります。残念ながら貴方たちを連れて行くわけには行きませんから、適当に遊んでいてくださいね」

「ふっ、そんなことは百も承知。こちらも手は打ってあるのさ」


 自信たっぷりのアカ。気になって注意する。


「防水処理なんてお茶の子さいさいと思っているでしょう?ダメですよ、海水は真水と違って、タダの防水処理なんて一撃でやられてしまいますよ」

「わかってるよ。流石の私も直接潜るのは諦めた。だけど強い味方が居るのよね」


 にやっと子悪魔的な笑いを浮かべたまま、そ知らぬ顔をするアカと姉に従順なアオちゃん。

 これ以上の尋問は無駄のようです。

 ここから与那国島へ飛行機で渡るのですが、折角なので那覇の町でも一泊したいと思っています。


 旭橋駅でゆいれーるを降ります。

 ここには、私の行き着けの食堂があります。

 駅から少し歩いたところに、外見が超怪しい食堂が現れます。

 しかし、外見に騙されてはいけません。

 ここには沖縄一美味しいてびちがあるのです。


「おばあ。あしてびち1つね」


 ちなみに、心の中で開催された大座決定戦、『てびちそばVSあしてびち』は、今回はあしてびちが僅差で勝利しました。

 何回かつれてきているアカは慣れたものですが、アオちゃんは初めてなので物珍しそう周囲を見ています。


「のどかちゃん。またリポートをお願いね」


 テスラドールは物を食べない代わりに、情報を美味しく頂くことができる。

 情報とは何か?

 データである。もちろんグルメ情報を含めてなのである...という訳で即席のグルメレポータとして味を伝える役目を仰せ付かる。


 待つことしばし。

 出てきたのは、白くてぷるぷるしたあしてびちと白いご飯です。

 どちらかというと小食な私ですが、このコラーゲンの塊は完食してしまいます。

 アカ・アオコンビが眼をきらきらさせています。


「えーと、余分な脂が見事なまでにキレイに抜けていてへんな臭みも無くて、皮がつるんとしていてまるでワンタンの様....」


 乏しいボキャブラリーを総動員して味を伝えます、正直静かに食べさせて欲しいてすが...

 細かいチェックをアカに入れられしどろもどろに答えていると、アカの手元にフォログラム的なあしてびちが現れます。

 私が渡した味の情報と視覚情報などを総合して作られた擬似あしてびちといったところでしょうか?


「ちゅらかーぎーわらばーね」


 店番のおばあに声をかけられる。


「もう少し静かならね」


 何気ない会話を片意地張らずにできるこの辺りの空気感が嬉しい。

 来てよかった。

 てびちと格闘していると入口が開いて来客が現れる。

 邪魔にならないようにランチ時間からずらしてきているのだか、さすが名店。


「本当にここでいいの?」

「はい。間違いありません。データーベースには沖縄県最高の味と載っています」

「...その編纂(へんさん)は、のどかだろ。あいつの舌は信用ならないな」


 てびちの小骨を吹きそうになる。

 そこには、祖国に帰ったはずのヴェルナーと、涙ながらに手放したはるかちゃんがいた。

 なんでこの二人がここに...いや今はもっと重要なことがある。


 ゆらっと席を立ち二人の前に立ちはだかる。

 驚くヴェルナーに宣戦布告をする


「あなたとは一度決着をつけないといけないと思っていました。勝負です」

突然乱入したヴェルナー&かなたコンビにいきなり宣戦布告したのどか。勝負とバカンスの行方は何処?

次回「実験潜水艦アルバコア 勝負の行方」


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