章間 黄衣の王
暴れださないように『銀の鍵』で封印しておいた『風に乗りて歩むもの』を『黄衣の王』に引き渡す。
「言っておきますけど、私としても貴方と事を構える気はさらさら無いのですよ」
念のため此方の真意を伝える。片手でそれ以上の説明は不要と制する『黄衣の王』
「ご苦労様でした。私としても貴方と事を構える気はありません。これまで通りお互いに非干渉を続けたいものです」
鷹揚に頷く『黄衣の王』。しかし、その目は探るように閃いている。
「...だが、『千の異なる顕現』殿がご興味を持たれる物については、後学のために是非ともお聞きしておきたいですな...」
何気ない言い回しの中に、逃げや誤魔化しを許さないプレッシャーが仕込まれている。これ以上詮索されたくなければ洗いざらい白状しろと....
仕方なし。ざっくばらんに行きましょう。
「貴方、人類をどう思います?」
「どうも思わないが...」
「うっ、相変わらず覚めてますね...私はどちらかというとアイツ等を破滅させたい派なんですがね。どうもあの次元だけ上手くいかなくって、気づけば奇妙な感じで安定しちゃったんですよ」
無言でうなづく『黄衣の王』。なるほどその辺りの報告は行っているんだ。
「こうなってくると簡単に壊すのがチョッと勿体ないと思ってしまって。まぁ何れは壊すんですが、それまで暫くイジっていたいかな~と」
「...つまりは『彼処は自分のおもちゃだから勝手に触るな』という事なのかね」
「そう言われると身も蓋もないですが...まぁ、そう言うことなんですよ」
なんとなく納得したように、苦笑しながら頷く『黄衣の王』。
「君は昔からその様な所があるな。壊したいのに守りたい。流石は『這い寄る混沌』」
「お褒めに預かり恐悦至極」
「褒めていないがね。わかった、少なくとも彼処に手を出すのは君の許しを得てからにすることにしよう。『風に乗りて歩む者』も、それでいいだろ」
いつの間には、『銀の鍵』から解放された『風に乗りて歩む者』は無言で一礼したあと消えた。
『黄衣の王』とは旧知の仲だ。とりあえずは、この件で信用して良いだろう。
玉座の間を去りながら次の遊びについて思いを馳せてみた。
「這いよるあの方」と「黄色い男の娘」の登場です。お馴染みの方々ですと、真尋君を取り合ってのドタバタになるのですが、この世界では如何でしょう?
そんなに仲は悪くなさそうなので腹いせに世界が滅ぶなどは無さそうで何よりです。




