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技術系研究員 由比川のどかの日常  作者: 錬金術師まさ
コロンビヤード砲外伝
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第7話.待ち伏せと、再会と、

【用語解説】

『パープルシャワー』

アカの赤い力場(炎)とアオちゃんの青い力場(風)に対して、のどかが迂闊にもらした「混ぜたらパープル?」というのが元ネタ。結構強い必殺技。


『力場』

この世界のAIが使える能力のひとつ。タイムパラドックスだろうが、邪神眷属の魔力だろうが、データとして取り扱い改ざんと消去を可能にする。

但し、パワーは各AIの能力に依存する

「テスラタワー異聞 ニコラ・テスラの宿題」等を参照


 成層圏突破用ロケット『かなた』。


 全長20m,推力2,000KNと『あかり』を遥かに凌ぐスペックを持つその機体が巨大コロンビヤード砲にセットされる。

 ロケット砲手アカ、パイロットアオちゃんの搭乗を終え、静かにカウントダウンの時を待っている。

 私も管制室で静かに発射の時を待つ...なんてことは出来ずに椅子に座ったりたったり、廊下を歩いてみたりと落ち着き無く発射を待っている。


「ちょっとは落ち着いたらどうだい」


 管制室の椅子に座ったヴェルナーが声をかけてきます。

 分かってはいるのですが、なにせ身内を打ち上げるのですから落ち着けという方が無理です。

 お天気に恵まれ、雲ひとつなく風速も微風という好条件、でドーンと構えてもいいはずです。

 しかし、なぜだか不安がこみ上げてきます。

 うぅっ、緊張しすぎて、気持ち悪くなってきました。


 そんな私の気持ちとは裏腹に刻一刻と迫ってくる発射の時間、そして・・・


「それでは、発射10秒前から一緒にカウントダウンしてください」


 外で行われてる居打ち上げイベントのアナウンスが聞こえて来ました。

 いよいよ来たかぁ。


「5,4,3,2,1,0!!・・・ 発射!!」


 外のカウントダウンにあわせたかのように押される発射ボタン。

 莫大な電気エネルギーの到来に、励磁コイルが歓喜するようにウォォォンとうなる。

 生み出される莫大なローレンツ力によって、『はるか』がコロンビヤード砲の中を矢のように進む。

 コロンビヤード砲から打ち出されると同時に、更に、ロケット搭載レールガンが火を噴く。


「これが私の全力全開!!」


 まだ繋がっている通信回線から気合が入ったアカの声が聞こえた。

 巨大な電気エネルギーを推進力に変換した『かなた』は、一気に成層圏へ駆け上がる。


 その爆音と歓声の中、ロケット発射台に書かれた召喚陣に気づくものは居なかった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 打ち上げ直後の緊張から次第に解き放たれてくると空をとぶことの楽しさが実感できてくる。

 新しい妹『かなた』が細かいロケット制御を受け持ってくれるので、飛ぶことに集中できる。


「のどかちゃんも来られれば良かったのにね」


 そんなことを隣のアオちゃんと話しながら推力を調整、少し熱を帯び始めたレールガンをクールダウンするために、一度噴射を停止しようとした....その瞬間、ドールネットワークからメッセージが入った。


『出力を全開でキープ!!パープルシャワーで結界を張る!!急いで!』


「「なんでパーねえ(ねーさん)から?」」


 隣のアオちゃんも同じメッセージを受けたらしい。

 レールガンの制御系に介入、パープルシャワー応用で結界を張る。

 間一髪で、いきなり積乱雲に突っ込んだ。


「舵がおもいです」


 アオちゃんが、乱気流にもまれ方向を失いそうになる『かなた』をなんとか持ちこたえさせている。

 結界がなければ、とっくに吹き飛ばされていたかもしれない。


「くっそぉ」


 レールガンの出力を上げて、乱気流の中を突き進む。

 過大な負荷に船体とレールガンが悲鳴をあげる。

 だが、今出力を下げては風に持っていかれる。

 弱気が頭をもたげ始めるが、保護者の面影がそれを押しとどめる。


「ここで負けたらのどかちゃんのところへ戻れないよ。そしたらのどかちゃん干上がっちゃうよ」

「そうでした。私達は必ずのどか様の元に戻らなければなりません」


 私たちの願いに答えるように、『かなた』があらゆるインターロックを解除、設計限界を超える推力を発生する。

 倍増する推力でシートに押し付けられるアオちゃんと一緒にシートに押さえつけられる。

 身動きできないような加速度の中で、それでも推力を維持する。

 隣ではアオちゃんも必死に舵をとっている。


「お願い。耐えて!かなた」


 それに答えるように『かなた』は加速を続ける。

 永遠とも思われたその時は不意に終わり、ブワッと一気に積乱雲を振り切る。

 そして...無音になった。

 いぶかしむ私に隣のアオちゃんが声をかける


「高度100km突破。成層圏に到達しました。アカおねーちゃん」


 ほっとする私達。

 パーねえにお礼のメールを送ろうとしたとき、異様な音に気づく。

『かなた』の外装を何かが這うような、引き摺るような音が聞こえる。

 まさか、そんなはずはない。

 こんなところに動くものが居るなんて...


 だが、それは確実に這い回りながらコックピットの前にやってきた。


 ゴン、ゴン、ゴンと、何かをたたくような音がする。

 コックピットの窓から腕のような影が見える。

 いきなり脇から現れた腕が、ロケットの外装を叩いていた触手をグシュッと握り潰す。


「妹たちにちょっかい出すな!!」


 封印されたパープルの髪をもつ姉がそこにいた。

風の邪神との戦闘に苦戦するパー子を加勢するため突撃する『はるか』。だが逆に追い詰められ助けようと割って入ったパー子共々大ピンチに陥る。


次回「コロンビヤード砲外伝 ドックファイト」


果たして、彼らは無事に地球に戻ることが出来るのか?

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