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技術系研究員 由比川のどかの日常  作者: 錬金術師まさ
コロンビヤード砲外伝
18/36

第5話.つかの間の休日

『あかり』打ち上げ翌日、それまでの労をねぎらう意味でお疲れ様会が開かれました。


「それでは、乾杯の音頭を取らせていただきます。皆さんお疲れ様でした。乾杯!!」

「乾杯!!」


 打ち上げボタンを押したことが、お気に召した部長が役員会に掛け合って、温泉宿を借り切ってのビックイベントになってしまいました。

 という事で、本日無礼講。

 飲めや歌えの大宴会....をやっている中でお酌しまくりです。


 プロジェクトを廻そうとすると結局のところ人間関係が大事です。

 ロケット打ち上げのハードスケジュールで、崩れかけた人間関係を再構築しておくのもサブリーダのお仕事です。

 お酒が入るにつれて、伸びてくる手を巧みに躱しながらお世話になった方々にお酌をして歩きます。

 私、このプロジェクトが終わったらその手のお店で働けるようになるかもしれません。


 プロジェクトリーダは偉い方々に囲まれてあれやこれや人生訓を聞かされています。

 あれも、辛そうです。

 明らかにHELP光線が出ていますが、あの中に飛び込む根性は無いので、頑張ってもらうことにしましょう。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 一次会が終わって、そのまま二次会に突入するもの、廊下でクダを巻くもの、寝るものとバラけてきました。

 私も窓側の席に陣取って烏龍茶を手になんとなく空を眺めています。


「どうしたの?ぼーっとして」


 急にかけられた声にびっくりして振り向くと、旧友がグラスをもって立っていました。


「なんだ、貴女でしたか」

「『貴女でしたか』はないだろ。さっき人を見捨てておいて」


 あ、気づいていましたか。


「いえ、お話に花が咲いていたようなので邪魔しては悪いかなって」

「ぬかせ。明らかに面白がってただろう....まぁいい。ちょっと話したいことがあったんだ」


 珍しく、真面目な顔をしたヴェルナーが正面に座る。


「のどか。今回の発射実験で一時的にレーダーがブラックアウトしたことは知っているか?」

「ええ。管制官は上空に来ていた積乱雲で中雷が発生したせいだと言ってましたが」

「その後にロケットが現れた高度が問題なんだ。確かにロケット搭載レールガンの試験もしていて通常のロケットより高高度まで上がるのは正しい。だが、あの時間、あの高度に到達するのは、いくらなんでも早すぎるんだよ」


 彼女はちょっと薄気味悪そうな顔をして話を続ける。


「こんな話を知っているか?成層圏近くには我々には想像もつかないような存在がいて、気まぐれで地上のモノを攫うそうだ。攫われたモノはいずれ返されるが、成層圏の極低温によって冷却された身体に、この世のものでない装飾を施されている。ちょうど今回の『あかり』の様に....」


 ちょっと前の私なら、『非科学的』とにべもなく否定していたでしょう。

 しかし、テスラタワーの件を経験した私は否定できませんでした。

 賑やかだった温泉旅館が急に静かになり、何かが潜んでいる様な予感にとらわれます。

 とん、とんと、不意に足をたたく感触。


「ひっ」


 思わずヴェルナーに跳びつく私。恐々足元をみると其処には......アオちゃんでした。

 ヴェルナーに抱きついたまま、ほっと一息をつく私。


「あっ、あのう。お邪魔ならわたし少し席を外します」


 顔を真っ赤にしてうつむいているアオちゃん。えっと、この状況をどう見たのかな?


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

以下は、アオちゃんの脳内再現です。実在する人物とは関係ありません(のどか注記)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 窓際に腰掛けている長い黒髪の可憐な乙女。

 彼女に近づいてくる浴衣姿の金髪美女。

 急いでかけてきたかのように白い肌が上気している。

 黒髪の乙女が気づいて声をかける。


「ヴェルナー、あんなに一人にしないでって言ったのに....」

「ごめんね、のどか。お偉いさんが放してくれなくて」


 遅れてやってきたヴェルナーが、少し不機嫌そうな恋人の隣に腰掛ける。

 のどかは拗ねたように、それでも甘えるように恋人に擦り寄る。


「寂しかったんだからね」

「まったくのどかは甘えん坊だな.....」


 愛しい恋人の髪を撫ぜ、唇を近づけるヴェルナー。


「こんな処でだめだったら、誰かに見られちゃう」


 恋人の抗議も聞こえない振りをして、唇を重ねるヴェルナー


「....ちゅっ...あむっ、まったく...あんっ..んんっ...強引なんだから....」


 もつれ合い中から床に倒れこむ二人。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

               再現終わり

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「そして、ヴェルナー様はのどか様の首筋に.....」


 アオちゃんのありえない妄想が絶賛だだ漏れ中です。


「1時間位で済むから、少し席を外してくれるかな」


 にやにやしているヴェルナー。

 おいっ、幼気な少女を煽るんじゃない


「違う違う、そんなんじゃなくって、ただ驚いただけだって」

「だっ、大丈夫ですっ。のどか様が受けでもヴェルナー様が責めでも構いません。むしろ応援します!!」

「受けとか責めとかそんなこと言っちゃダメ!!とにかく違うんだって、ヴェルナーも何か言って」

「そうよ。どっちかって言うと、のどかは自己中攻めで私は誘い受けなんだからね」


 ヴェルナーが事態を更に収拾できない方向に押しやる。

 臍を噛む私に、ヴェルナーはウインクして「仕返し」とつぶやいた。

試験ロケット『あかり』の成功に活気付くプロジェクトに、届く不気味な警告文。現代によみがえったタコ部屋労働、完成した成層圏突破用ロケットの試験結果は果たして?


次回「コロンビヤード砲外伝 警告」


今回の妄想百合で警告もらったらどうしよう。

でも後悔はない(っ・д・)三⊃)゜3゜)'∴:. ガッ

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