第3話.もし技術系研究員が(以下略)
ロケットプロジェクトのプロジェクトマネージャ(ヴェルナー)とサブリーダー(私)は決定しました。
とは言え、この2人だけでロケットが作れるわけではありません。
プロジェクトを運営していくための組織が必要です。
その組織作りが私のお仕事になります。
ロケット関係の技術的な部分は専門家のヴェルナーにお任せして、私はプロジェクトが動きやすい環境を作っていくことに専念します。
まぁ、最初のお仕事としてはヴェルナーの衣食住の確保です。
彼女が、他に部屋を借りてちゃんと生活できる気がしません。
仕方がないので我が家で預かる事にします。
「類は友を呼ぶよね。のどかちゃん」
などと、アカに生ぬるい目で見られ、
「大丈夫です。のどか様もヴェルナー様も家事ができなくても生きていけます」
とアオちゃんに止めを刺されます。
うぅっ、私のほうが少しだけマシだと思うけどな...
お米を研ぐときに洗剤を入れてはいけないことは学んでるよ。
次に拠点ですがテスラドール関係の機密が満載のうちの事業部では、流石に不味いので古い実験棟の一角を借り受けました。
ロケットの実験などはウェルナーのコネで専用の場所を借りるしかないので、ここでは、主にデスクワークとちょっとした試作をすることになりそうです。
尚、ロケット本体の設計はヴェルナーにお任せ(丸投げではありません)なのですが、かなり苦戦しているようです。
「のどか。テスラドールってさ、100Gに耐えられるようにならない?」
「「「ならんです」」」
ヴェルナーとしてもテスラドール二人を無事に成層圏まで上げるのは至難の業らしいです。
衣食住だけでなく精神面のケアもしなきゃ。
一緒に仕事をしてみてわかったのですが、こいつは思いのほか手間のかかる女だったようです。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そんなこんなで、何とか試作機の設計も終わったところで、一つ問題が発生しました。
「許可が下りないだと!どうゆうこと?」
試作機の打ち上げ許可をもらいに、監督官庁に許可をもらいにいった私たちを待っていたのは、打ち上げ不許可の決定。
『どこの馬の骨ともわからない団体に、そんな高出力のロケットの打ち上げ許可を出して、何か問題が起きたときどうするんだ』という内容をオブラートに包んだ書面をいただきました。
「ヴェルナー落ち着いて。この書面の内容だとこちらが実績ある団体であることを示せば許可は降りるはずよ。監督官庁への働きかけは知り合いに頼んでおくから、ヴェルナーは実績作りをおねがい」
「実績といってもね~」
渋るヴェルナーにお任せする。
彼女も新進気鋭のロケット博士だ。
その辺りのプレゼンにかけては、世界屈指の腕前のはずだ。
さて、一度ダメを出した官公庁ほど厄介なものはなく、正面突破で了解させる事は難しそうです。
私最強のツテカードをドローする時がきました。
「ニコラ・テスラ、君に決めた」
「AIをカード扱いするんじゃない」
私のポータブルサーバーから不満そうな声が聞こえてきます。
前回の事件からアカとアオちゃんの師匠を自覚したのか、ニコラ・テスラの分体は私のポータブルサーバーに定住しています。
全世界の電力を一手に担う超VIP。
下手な国の大統領や、すぐに交代する総理大臣など足元にも及ばないほどの権力を持っています。
「話は聞いていたがゴリ押しはできんぞ。我々はどこの国にも平等な関係を保ちたいと考えている。私にも立場というものがあるんだ」
ですが、意外と頭の固いのも事実です。こうなったら秘策を発動するしかありません。
「オット、手が滑りました」
手の滑った私が落としたのは、アカとアオちゃんの宇宙服コスプレ写真。
ロケット団のイベントの時、使ったやつです。
あの時、ポータブルサーバーは持って行っていないので、これは見ていないはず。
最強カードを引くための最後の一手です。
「そうですよね。天下のニコラ・テスラにえこひいきを頼むなんて良くないことでした。この話は聞かなかったことに~(棒)」
写真をしまおうとする私を焦って引き止めるニコラ・テスラ。
「ちょ、ちょっと待ちたまえ。その手に持っているものは何かね」
「これですか?これはロケット団の時とったアカとアオちゃんのコスプレ写真です。お渡ししようと思ったのですが、このタイミングでは賄賂みたいなので捨てておきますね」
進退極まった様に苦悶するニコラ・テスラ。
あとひと押しですね。
私は、わざとゆっくりとシュレッターの前に行き、一気に写真を放り込む。
いきなり電源停止するシュレッター。
どうやらニコラテスラが強制介入して止めてしまったようです。
こんな個別制御もできるなんて、少し驚きです。
「なにをするんですか。これからお役所を回らないといけない忙しい身なんですよ。さっさと電源を元に戻しなさい」
観念したようにニコラ・テスラが白旗をあげる。
「何を水臭いことを言っているんだね。さっきのはあくまで一般論だ。我々は死線を越えた仲間じゃないか。君の願いは私の願い。私の願いは君の願いだ。いいだろう監督官庁だろうが、大統領だろうが話を付けようじゃないか!」
最後まで体裁を取り繕うのは天晴れです。
私は笑顔でニコラ・テスラにお礼をいう。
「あなたのその友情に感謝致します。今後とも良いお友達でいてくださいね」
もちろん近くにあったスキャナーに写真をセットすることは忘れませんでした。
これで贈賄成立。彼も立派な共犯者です。
かくして、ヴェルナーの頑張りとニコラ・テスラの無償の友情によって我々のロケットプロジェクトはめでたく試作機第一号のお目見えまで漕ぎ着けたのでした。
まぁ、美談なんてものは早々転がっていないということです。
そびえ立つコロンビア砲にセットされる試験ロケット『あかり』。射出用レールガンにエネルギーが充填され打ち上げの時を待つ。果たしてロケット打ち上げは成功するのか?
次回「コロンビヤード砲外伝 コロンビヤード砲発射!!」
君は星の涙を見る(っ・д・)三⊃)゜3゜)'




