第2話.ドールとロケット
本文中のアンサリ・ゼットプライズは架空の団体で実在するAnsari X Prizeとは全く関係ありませんので念のため。
参考文献
http://ja.wikipedia.org/wiki/Ansari_X_Prize
ヴェルナー・フォン・ブラウン。
新鋭のロケット工学博士にしてロケットマニア。
初めて会ったのは彼女が交換留学生でやってきた10歳のころ。
金髪碧眼。絵に描いたような美少女が持っていたのはモデルロケット。
私はひと目瞬間彼女が宿命のライバルだと看破した...多分ちょっと早めの中二病だったんでしょう。
いくらかの反目の後、和解、一番の親友になった。
彼女が国へ帰るときマジ泣きしたのを思い出します。
「久しぶり、こっちに来るなら連絡くれれば良かったのに」
「この紳士がのどかの上司だって事は判ってたし、驚かせたいと思って」
「こほん。積もる話もあるだろうが、それは後にしてもらっていいだろうか?」
ガールズトークに入ろうとしたところで部長が本題を切り出す。
「アンサリ・ゼットプライズと言うのを聞いたことがあるかね」
「確か宇宙関係の懸賞ですね。高度100kmの到達に対しして懸賞金をかけていたと記憶しています」
あっさり答えるヴェルナー。さすがロケットオタク。
「知っているなら話が早い。そのアンサリ・ゼットプライズの懸賞に挑戦するのを我がロケット団の目標にしたい。プロジェクトリーダーとしてヴェルナーさん。サブリーダーにのどかくんという二枚看板で行きたいと思う。すでに社長の了承済みだ」
鼻息も荒い部長。
何を言っているんだかこのおっさんは。
「ちょ、ちょっと待ってください。テスラドールはどうするんですか?それにそんなプロジェクトにウェルナーは参加しませんよ。ヴェルナー、貴方からも何か言って・・」
「もちろん引き受けるよ」
「やってください・・・・えっ?」
忘れてました。この女はロケットオタク。
ロケットのためならば人生どころか魂まで売り渡しかねないやつでした。
「なんで私なんです?モデルロケットは好きですが、あくまで趣味で専門ではないのですから」
「その点は考慮した。アンサリ・ゼットプライズと協議してな、有人ロケットと言う規約を知性を持つAIでもよい事にしてもらった。こうなるとわが社で君以上の適役はいないだろう」
うっ、そうですか既に外堀は埋められていましたか。
こうなったら、討ち死に覚悟で夏の陣に突入するしか...最後の抵抗を決めたとき悪友がダメを押します。
「ねぇ、のどかもやろ?きっと楽しいよ」
「あなたねぇ...はぁ、もう判りましたよ」
結局はこうなる。
何時もヴェルナーが何かやり始めて私がそれに付き合う。
その関係は、学生時代からちっとも替わらない。
「だけど、やるからには途中で投げ出したりは出来ませんよ」
「判ってるわよ。私を誰だと思ってるの?」
その後は、ちょっとばかり実務の話をする。
流石に新鋭ロケット博士と言われるだけあって勉強になるな。
なんか話しているうちにインスピレーションが沸いてくる。
巨大なコロンビアード砲に砲弾型の宇宙船。
第一宇宙速度までは、地上に設置したコロンビアード砲で加速、第二、第三宇宙速度には宇宙船後方に設置した推進用レールガンから打ち出した弾丸の反作用で加速。
一気に大気圏を突き破る。
コロンビアード砲の中にライフリングして直進性を上げたらどうだろう?
電力はニコラテスラに融通してもらうとして、レールガンの設計は...
ふと気づくと、ニヤニヤしている部長と目が合う。
しまった。
はめられた。
「では、のどかくん。彼女のことは君に任せるからしっかり補佐するように。テスラドールの方はアシスタントを増やすことも出来るがどうするかね」
「今のところ大きな案件も無いのでアカとアオちゃんを嘱託扱いで使えれば何とかなるとは思いますが...」
「その件だが、二人にはロケットのパイロットを勤めてもらおうと思う」
「だめです」
にべもなく断る私。
「えー、なんで」
「それは少し横暴だと思うのですが...」
私の反対を聞きとがめたアカ・アオコンビが不平をもらします。
「貴方たちこれはかなり危険なことなんですよ。これまでテスラドールを打ち上げられるようなロケットは無かったんですから」
「ならアカたちが最初の2人になるっ」
「とにかくダメです。貴方たちに何かあったらなんて考えただけで私は生きた心地もしません」
そうなったら心配で心配でロケット開発なんて手につかないだろう。
「部長。パイロットの子は私が責任をもって用意しますので、この子達はあきらめてください」
「のどか様。ではそのパイロットの子は心配では無いのですか?」
アオちゃんの問いにぐっと答えに詰まる私。
「それに今からパイロットを用意して育てたからと言って、ニコラ・テスラの直接教育を受けている私達には及びません。私達ならばどんなトラブルも乗り越えられます。どうか信じてください」
長い沈黙の後、私も決心しました。
「其処まで言われたら認めないわけにいかないじゃないですか。判りました。パイロットの件は認めます。但し、サブリーダーとして乗員の安全を確認するまでは絶対にロケットを発射させません。それが条件です」
「当然だ。われわれの目的はテスラドールの可能性を示すことだ。無謀な冒険をさせようとは思わん」
みんなの顔を眺めながら、私は宣言した。
「世界一安全で素敵なロケットを作りましょう」
立ち上がるプロジェクト、飛び交う課題をクリアして行くのどかたち。そんな中、監督官庁からロケット打ち上げ中止の連絡が入る。
存亡の危機に立ったプロジェクト救済のために、のどかが放った秘策とは?(のどか黒化)
次回「コロンビヤード砲外伝 もし技術系研究員が(以下略)」
マネージメントではぁドラッガーがぁ世界一ィィィィィィィ
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