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第二話「剣と魔法と知らないおじさん」③
森に道はなかった。
あるいは、あったのかもしれないが、三人には見つけられなかった。夜久が先頭を歩いて、ゼータがその後ろに続いて、蒼依が最後尾で周囲を見回しながら歩いた。
歩きながら、蒼依がゼータに話しかけた。
「ねえ、この世界って魔法とかあるの」
「分からない」
「剣で戦う人とかいる?」
「分からない」
「何か分かること、ある?」
ゼータは少し間を置いた。
「森がある、ということ」
「……それは分かるね」
夜久が前を歩きながら言った。
「ゼータ。知らないおじさんは、なぜ俺をここへ連れて来いと言ったんだ」
「言わなかった」
「何も言わなかったのか」
「連れて行け、とだけ」
「どんな人間だった」
ゼータはしばらく黙った。歩きながら、何かを思い出そうとするような間があった。
「……おじさん」
「それ以外は」
「白い服を着ていた。あとは……」
ゼータの声が少し止まった。
「あまり覚えていない」
夜久は前を向いたまま言った。
「信用できるのか、そのおじさんを」
「分からない」
とゼータは言った。
「でも悪い人ではないと思った」
「根拠は」
「……なんとなく」
蒼依が小声で「なんとなくで別の世界来てるの私たち」と言った。
夜久は答えなかった。




