第十六話「星ひとつ」④
見張りの空白を、二度目の交替で掴んだ。
パターンはまだ完全ではない。でも動く。蒼依は壁際に立って息を整えた。廊下の向こうの細い声は、さっきから変わっていない——それが余計に、胃を締めつけていた。
きっかけに老人の咳を使った。マルタさんに他の村人たちを壁際に集めておくよう頼んでから、声を張る。扉の外で舌打ちが聞こえた。
「静かにしろ」
「お爺さんが苦しそうで! 水だけでも——」
足音が近づいた。鍵が外れる音がして、扉が細く開く。一人だった。痩せた男で、腰に短剣を下げていた。体格は並以下だ——砦に連れ込まれてからずっと、男たちの顔と体格を頭に刻んできた。この男が一番小さい。
男の視線が老人の方へ向いた。その一瞬を、蒼依は見逃さなかった。
掌底で扉を外へ押し開けた。扉が男の肩を弾く。よろめいた腕を掴んで室内に引き込み、石壁に叩きつけた。男が声を上げるより早く、右の拳を鳩尾に撃ち込む。確かに当たった。しかし倒れなかった——革鎧の裏に筋肉がある。右手が短剣の柄にかかった。
蒼依は下がらなかった。踏み込みながら、男の手首の内側に肘を差し込んだ。関節を外側に返す力で捻ると、男の顔が苦痛で歪む。指の力が抜けた瞬間に短剣が床に落ちた。空いた手が肩を掴もうとしてくる——それを弾きながら半歩外側に回り込み、体勢が崩れた瞬間に顎へ肘打ちを入れた。がくん、と首が揺れた。膝が折れる。手刀を首の後ろに打ち込む。男が崩れ落ちた。
手が震えていた。廊下を確かめると——誰もいない。
今すぐ声のする部屋へ走った。
蹴り開けた扉の向こうに、男が二人いた。一人が壁際に立っている。もう一人が若い娘の腕を掴んでいた。十五か十六——蒼依と同い年くらいの娘が、男と壁の間に押さえ込まれていた。男たちが振り返った。
その一瞬で、蒼依は動いた。腕を掴んでいた男の肘の裏に横から体当たりをかける。意表を突かれた男の腕が外れた。娘が壁際に転がる。もう一人の男が前に出てくるところへ踏み込んで掌底を顎に叩き込んだ。頭が揺れて、男が後ろに倒れる。最初の男が態勢を立て直す前に膝を腹に入れ、棚を掴んで立とうとしている頭に手刀を落とした。男が床に伏した。
静寂。
蒼依は娘を見た。娘の目が、蒼依をまっすぐ見ている。恐怖と、それを超えようとしている何かが、その目に混じっていた。
「立てる?」
娘が頷いて、立ち上がった。
廊下に出て、残りの扉を開けていった。一つ目——村人が数人いた。手で示して出てくるよう伝える。二つ目——扉が開いた瞬間、中からリナのお母さんが出てきた。リナが息を飲んだ。次の瞬間には走っていた。母親の胸に飛び込んで、そのまま動かなかった。お母さんが娘の背中に腕を回して、一度だけ強く引き寄せた。言葉はなかった。それで十分だった。暗い廊下に村人たちの連なりができた。マルタさんが無言で先頭に立ち、裏手の方向へ歩き始める。リナと母親が寄り添いながらその列に加わった。娘も列の中に入った。
「真っすぐ進んで、止まらないで」
と蒼依は列に向けて囁いた。
村人たちが動き始めるのを見届けてから、蒼依は最後尾に立って廊下の奥を確認した。




