第十五話「夜道」
混成隊が動き始めると、村は静かな忙しさを取り戻した。
隊長格の衛兵が指示を飛ばして、人員を二つに分けた。
消火と瓦礫撤去をする組が松明を手に、まだ燃えている建物と崩れかけた柵の周辺へ散っていった。
捜索組は村の外れに天幕を張り始めた。夜明けまでに体を休めておく手はずだ。声が行き交い、足音が増え、しばらく前まで無人だった村に、ようやく人の気配が戻ってきた。
ディルクとゼータは割り振られるまでもなく、消火組の方へ向かっていた。ディルクが桶を手にして井戸の傍に陣取り、ゼータがその隣に静かに立った。働く必要はないと言われても、ゼータは動いた。言葉もなく、余分な動作もなく、ただ必要な場所に必要な分だけ力を出した。青白い髪が松明の明かりに照らされ、橙色に染まっていた。いつもと変わらない無表情のまま、桶を受け取り、水を運び、また桶を受け取る。感情があるのかないのか、この状況でも判断がつかなかった。ただ、動いている。それだけが確かだった。
ジャンヌは捜索組の隊長と短く話を交わし、天幕の方へ向かった。立ち去る前に、夜久に一度だけ目を向けた。
「夜明けに」とジャンヌは言った。
「はい」と夜久は言った。
それだけだった。ジャンヌは踵を返し、天幕の列の中へ消えていった。白銀の鎧が松明の光を受けて、一瞬だけ輝いた。
夜久は広場に立ったまま、村の夜が動き始めるのをしばらく見ていた。
燃えていた建物が、少しずつ煙に変わっていく。石畳に広がった血だまりが、夜の中で黒く固まりつつあった。
賊たちは混成隊に引き渡され、その後をどうするかはここの人間が決める。夜久の知るところではなかった。
今夜ここで死んだ人間の数を、夜久は正確に把握していなかった。自分が何人斬ったのか、自分であり自分ではない誰かが残した記憶がそこにあるだけだった。
ここで何が起きたかは、村の外の人間にはまだ伝わっていない。村人たちがどこへ連れ去られたかも、ローブの男が何者かも、分からないことだらけだった。でも今夜確かめられることがある。それだけを考えた。
見上げると、星が出ていた。煙の間から、冷たい夜空が見えた。




