第十四話「夜の始まり」⑤
ディルクが戻ってきた。
「混成隊の隊長に話を通した。夜明けを待って、廃村と旧砦の二方向に別れて捜索する手はずになった。こちらからも数人出せということで、ジャンヌちゃん、頼めるか」
「もちろんです」
とジャンヌは言った。
「私は旧砦の方に行きます。規模が大きければ、そちらに村人たちがいる可能性が高い」
「俺も旧砦に」
と夜久は言った。
ディルクがちらりと夜久を見た。ジャンヌも夜久を見た。ついさっきまで剣を交えた相手が、同じ方向に行くと言っている。
「……異議はありません」
とジャンヌは言った。少し間があったが、言葉は揺れていなかった。
「蒼依の顔を、ジャンヌに覚えておいてほしい」
と夜久は言った。
「青い短い髪の、少し変わった服を着た女の子です。同い年くらいに見えるかもしれない」
「分かりました」
「連れ去られた馬車の中にいるはずです。できる限り、早く」
「探します」
とジャンヌは言った。
夜久はその言葉を受け取った。信用していいかどうかは、まだ分からなかった。でも、この状況で動ける人間が一人増えることは確かだった。それで十分だった。
夜が深くなっていた。
村はまだ燃えていたが、火の勢いは落ちていた。煙が、星の見え始めた夜空へ向かって上がる。広場に松明が灯り、混成隊の人間たちが動き始めていた。村が、ゆっくりと、夜の仕事を始めた。
夜久は影桜の柄に手を沿わせたまま、旧砦のある方向——街道の先の、暗い森の向こうを見た。
蒼依がいる。
それだけを、頭の中心に置いた。




