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第十四話「夜の始まり」

 ジャンヌは石畳に手をついたまま、夜久を見上げた。


 男は影桜を鞘に収め、ただ立っていた。その目に殺意はなかった。最初からなかったのか、今は消えているのか——分からなかった。


 二人は黙ったまま向かい合っていた。


 何か言うべきことがあるのに、どちらも言葉を見つけられないでいた。炎が揺れ、煙が流れた。広場に、静けさだけがあった。燃える村の音が、遠くから押し寄せるように続いていた。


 そこへ、ディルクが駆け込んできた。


「落ち着いたか」


とディルクは言った。夜久に言ったのか、ジャンヌに言ったのか、どちらとも取れる言い方だった。

 二人の様子を交互に見て、ひとつ息をついた。


「生きてるなら、それでいい」


「ディルクさん」


とジャンヌは言った。


「あなたはこの方たちと一緒に」


「なりゆきでな。いろいろあった。説明は後でする」


とディルクは言った。それから夜久の方を向いた。


「こちらはジャンヌ。王国軍神聖騎士団の聖女で、リーフェル村の出身だ。それから——リナの姉でもある」


 夜久の目が、わずかに動いた。


 ディルクは続けた。


「こちらは夜久。遠いところから来た旅人だ。蒼依、ゼータと一緒にいる。この村の捕虜の件で、俺たちを助けてくれた。昨日は砦に一人で踏み込んで、捕虜を解放した人間だ」


 ジャンヌは夜久を見た。ディルクを見た。また夜久を見た。


「……砦に?」


とジャンヌは言った。


「ああ」


とディルクは言った。


「だからこそ、今夜こういうことになった。それも含めて、後で話す」


 広場に松明の明かりが増えてきた。混成隊が到着し始めていた。村の夜が、人の声を取り戻しつつあった。

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