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第十三話「侍と聖騎士」⑥

 声が聞こえた。


 遠くから来た声だった。


「夜久! ジャンヌちゃん!」


 低い、太い声だった。ディルクだった。続いて、複数の蹄の音が押し寄せてきた。


 門の方向から、人が来た。


 先頭にいたのはディルクだった。荷車を置いてきたのか、徒歩で駆けていた。その後ろにゼータが続いていた。白いワンピースが夜の空気に揺れ、青白い髪が風を切っていた。ゼータの目が夜久を見つけた瞬間、その灰色の瞳が一度だけ大きくなった。


 さらに後ろから、馬蹄の音が押し寄せてきた。松明の明かりが複数、門をくぐって広場へ流れ込んできた。衛兵の装備をした者たち、冒険者ギルドの面々が混じって、混成隊がようやく到着した。


 ディルクが広場の惨状を見て、一瞬足を止めた。それからすぐに二人の間へ向かいながら、両手を広げて声を上げた。


「待ってくれ、夜久。その人はリナちゃんの姉さんだ」


 夜久は動かなかった。


 ディルクは少女の方へも顔を向けた。


「ジャンヌちゃん、この人は敵じゃない。俺が説明する。剣を収めてくれ」


 ゼータは夜久の隣まで来て、黙って並んだ。夜久を見上げた。


「……ん」


と言った。


 それだけだった。でも夜久には分かった。無事か、と聞いていた。


「ああ」


と夜久は言った。声が掠れていた。


 混成隊の人間たちが広場に広がっていった。倒れた者たちを確認し、燃えている建物へ向かう者もいた。村が、ようやく人の声を取り戻し始めた。


 少女は、まだ石畳に手をついたまま、夜久を見ていた。


 夜久は影桜の柄から手を離した。


 初めて気づいたように、ずっと握り続けていたことを知った。手の平に、鞘の感触が深く刻まれていた。

 星が、また一つ増えた。煙の向こうに、少しずつ夜空が広がっていった。

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