第十三話「侍と聖騎士」③
鍔迫り合いと斬撃が、幾度となく交わされた。
炎が揺れ、煙が流れ、二人の影が石畳に伸びて交差した。
ジャンヌは剣士として一流だった。戦場で百の命を相手にしてきた剣だった。
踏み込みの速さ、剣先の精度、体幹の安定、どれも並み外れていた。白銀の鎧が炎の光を受けて輝き、聖剣が橙の軌跡を空気に刻み続けた。
男はそれを上回った。
感情がなかった。表情がなかった。
剣が届く寸前でかわし、かわしながら斬り、斬りながら次の動作へ移った。動作と動作の間に隙間がなく、まるで水が低いところへ流れるように止まることがなかった。
ジャンヌが仕掛けるたびに、すでに次の位置にいた。
おかしい、とジャンヌは思った。
この男の動きには、迷いがない。
剣士が戦いの中で人を斬るとき、必ず一瞬の揺れがある。殺意か、逡巡か、あるいは次の手への選択か。何らかの揺れがある。この男にはそれがなかった。
剣が動く。体が動く。まるで最初から答えが書かれているかのように、あるべき動作だけが流れ続けていた。どれだけの年月をかければ、これほどまでに無駄が削ぎ落とされるのだろう。
戦場を百合わせてきたジャンヌでさえ、この動きの前では自分の剣が粗く見えた。
それでも、ジャンヌは退かなかった。
リナのことを思った。あの子は今どこにいるのか。この燃える村の中に、まだいるのか。声は異分子を排除せよと告げた。その使命がある。でもそれだけではなかった。七つの妹が、帰るべき家を失おうとしている。それだけで十分だった。退けなかった。
男の動きが、わずかに変わった気がした。




