第十三話「侍と聖騎士」
ジャンヌは馬を下りた。
広場の惨状が、目に飛び込んできた。
石畳に血だまりが広がり、武装した男たちが何人も倒れていた。
建物が燃えている。煙が空を塞いでいた。
夕暮れの残光は消えかけ、炎だけが辺りを赤く照らしていた。
そして、中央に一人、立っていた。
黒い装束の男だった。剣を鞘に収め、俯いたまま動かない。先ほど馬で飛び込んだとき、この男が広場の中にいた。倒れた男たちに囲まれて。
ジャンヌは聖剣の柄に手をかけたまま、一歩進んだ。
「あなたは何者ですか」
男は答えなかった。
動きもしなかった。俯いたまま、まるで石になったように立っていた。
ジャンヌはもう一歩進んだ。足元の血だまりを避けながら。
炎の揺れる音が、二人の間を満たしていた。リナがいない。マルタさんがいない。どこにも、知っている顔がなかった。
村が燃えていた。異分子を排除せよ、と声は告げた。声は嘘をつかない。声は常に正しかった。
「この村に何をしに来たのですか」
男はまだ答えない。
声のない沈黙が、炎の爆ぜる音だけを際立たせた。
ジャンヌの中で、何かが固まっていった。恐怖ではなかった。使命が研ぎ澄まされていく——その感覚だった。問いは尽きた。声が告げた言葉だけが、頭の中で繰り返されていた。
入り込んだ異分子を排除せよ。
「答えなさい」
とジャンヌは言った。声に刃が混じった。
「あなたがここで何をしたのか。なぜこの村がこうなっているのか。答えなければ——」
男は動かなかった。
ジャンヌは聖剣を抜いた。




