第十二話「侘桜」②
「手分けして探そう」
と蒼依は言った。声が硬かった。泣いていなかった。泣くまいとしているのが、顔に出ていた。
「じゃあ俺は村の奥側を探す。蒼依は入り口側を頼めるか」
と夜久は言った。
「怪我人がいたら声をかけてくれ」
「分かった」
二人は別れた。
夜久は影桜の柄に手を沿わせたまま、村の奥へ進んだ。
建物の間を縫うように歩きながら、気配を探り続けた。扉が開いたままの家があった。中を覗くと、食事の途中だったのか、テーブルの上に皿が残っていた。急に連れ出されたのか、あるいは逃げたのか。いずれにしても、今はいない。
次の家も、また次の家も、同じだった。
人がいない。いなくなっている。
怪我人もいない。
それが、夜久の中に引っかかりを作り始めた。村が焼かれている。血が石畳にある。なのに、倒れている者が一人もいない。死んでいる者も、いない。賊が村を襲い、焼き払ったのなら、なぜ誰もいないのか。
逃げたのか。
だが、これだけの惨状の中で全員が逃げ延びたとは考えにくい。老いた者も、子どもも、怪我を負った者もいるはずだ。
ならば。
夜久の足が止まった。
攫われた。
村人ごと、どこかへ連れ去られた。それが、今この状況に対する最も整合性のある読みだった。砦のあの捕虜たちも、人が目的だった。荷には手をつけず、人だけが消えた。同じことが、今度は村全体に対して行われた。
その読みが固まりかけたとき、村の入り口方向から気配が来た。
複数だった。
そして、蒼依の気配が、そこにあった。




