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第六話「閂の向こう」⑤
外が、騒がしくなり始めた。
男が戻らないことに気づいたのか、焚き火の周りから声が飛んだ。
足音が増えた。残りの賊二人が立ち上がる気配がした。
「起きられるか」
と夜久は捕虜たちに言った。小声で、落ち着いた声で。
「動ける者から出る。足を痛めている人は、誰かが必ず支えてくれ」
捕虜たちが動き始めた。
七人、互いに助け合いながら立ち上がっていた。
夜久は扉を細く開けて、外を確認した。
焚き火の方に賊の二人がこちらへ向かいつつある。建物の角まであと少しの距離だ。
今しかない。
「裏の柵に隙間がある」
と夜久は言った。
「俺が先に出る。場所を示すから、一人ずつ、静かに続いてくれ」
リナの母親が頷いた。他の捕虜たちも、それに続いた。
夜久は影桜の柄に手をかけた。
抜かずに済めばいい。でも抜かなければならない瞬間が来たなら、迷わない。
それだけを決めた。それだけで、十分だった。
夜久は扉を開けた。
傾いた陽の名残が、空の端をわずかに赤く染めていた。




