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第六話「閂の向こう」②
焚き火を囲む男たちの声が一際高くなったタイミングを選んで、夜久は動いた。
音を殺して壁沿いに進み、扉の閂に手をかけた。木の棒をゆっくりと引き抜く。乾いた木が擦れる微かな音がしたが、男たちの声にかき消された。
扉を細く開けて、中に滑り込んだ。
暗かった。窓がない。外の焚き火の明かりが、扉の隙間からわずかに差し込んでいるだけだ。
目が慣れてくると、人の輪郭が見えてきた。
七人いた。
壁際に座るか、横になっていた。男が三人、女が四人。
年齢は様々で、若い娘もいれば、中年の男もいた。身なりを見ると商人らしき者や、農作業の服を着た者など、職業もばらばらのようだった。
縄で繋がれているわけではないが、扉を閂で封じられていれば逃げ場はない。
全員、夜久の気配に気づいて顔を向けていた。誰も声を上げなかった。恐怖で固まっているのか、声を上げればどうなるか分かっているのか。
「助けに来た」
と夜久は小声で言った。
「声を出すな」
しばらく誰も動かなかった。
それから、奥の方で人影が動いた。




