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第六話「閂の向こう」
砦の中は、外より暗かった。
柵の隙間を抜けると、建物の裏手に出た。丸太を積んだ壁が目の前にある。壁と柵の間は人一人が横向きに歩けるくらいの幅しかなかった。
夜久は背を壁に沿わせて、息を潜めた。
焚き火の明かりが、建物の角から漏れていた。男たちの話し声がする。笑い声が混じっている。酒でも飲んでいるのか、声の質が緩んでいた。
夜久はゆっくりと、建物の角を覗いた。
中庭のような空間に、男が三人いた。焚き火を囲んで座っている。いずれも革の鎧を着ていた。
一人は大きな斧を背中に負い、別の一人は鉄の棍棒を傍らに立てかけていた。もう一人の腰には幅の広い鉈のような刃物が下がっていた。手には持っていない。見張りというより、休憩中に近い雰囲気だった。
体格はどれも良く、日に焼けた顔をしていた。生業としてこういう仕事をしている人間の顔だと、夜久は思った。
望楼の上の見張りは、外を向いている。こちらには背を向けていた。
視線を戻すと、中庭の奥に扉がある建物が見えた。閂が外からかかっていた。南京錠のような仕組みではなく、木の棒を差し込む簡単な構造だ。
捕虜はあの中にいる。夜久はそう判断した。
焚き火の笑い声が、夜の空気に溶けて広がっていった。




