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第五話「笑い声の向こう」④
そのとき、声が聞こえた。
男の声だった。複数、笑っている。砦の中から、壁越しに漏れてくる声だった。
夜久は足を止めた。
捕虜たちはどこかへ引き渡す手はずになっているらしかった。
どんな組織なのかまでは分からない。ただ、引き渡す前に、と男たちは笑っていた。
女たちには先に楽しませてもらう、味見くらいは構わないだろう、と。
笑いながら、当然のことのように話していた。何の重さもなく。
夜久の足が、止まったまま動かなかった。
踵を返しかけていた体が、砦の方を向き直っていた。
増援を呼ぶべきだという判断は、正しい。今でもそれは分かっている。
だが、今夜の間に何が起きるかも、今聞いた声で分かった。
夜久は息をゆっくりと吐いた。
影桜の柄を、左手で握った。




