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第四話「泣かない子」④
女の子の名前はリナといった。
話を聞くと、母親が十日前から戻っていないのだという。
街への薬草売りに出かけたまま、帰ってこない。
父親はいない。村の大人たちも心配してくれているが、誰も探しには行けない。街道が危ないから。
リナは話しながら、ずっと唇をきつく結んでいた。
声が震えていた。でも泣かなかった。泣くまいとしているのが、夜久にも分かった。
「賊に……賊に、攫われたんだと思います」
リナは言った。
「でも、もしかしたらまだ、どこかにいるかもしれなくて」
そこで声が途切れた。
ほんの一瞬だった。
次の瞬間、涙がこぼれた。一粒、二粒。
リナは慌てて袖で目を拭った。拭いながら、小さく息を吸った。もう一度吸って、それから顔を上げた。
「……ごめんなさい」
リナは言った。
「泣くつもりじゃなかったです」
それからもう一度、まっすぐ夜久を見た。
「お母さんを、探してもらえませんか。お金は……あんまりないけど、持っているものは全部出します。お願いします」
深く、頭を下げた。
しばらく、誰も何も言わなかった。




