14/45
第三話「村と賊と報酬の話」③
ディルクが連れて行ったのは、村の中心近くにある「ラズベリ」という名の宿酒場だった。
看板に杯の絵が描いてある、こぢんまりとした建物だった。
中に入ると、木の匂いと食べ物の匂いが混ざって漂ってきた。テーブルがいくつか並んでいて、昼前の時間にもかかわらず、二、三人の男が酒を飲んでいた。
カウンターに、丸顔の中年女性が立っていた。宿屋の女主人らしく、ディルクの顔を見て、
「おかえり」
と言い、三人の顔を見て、
「いらっしゃい」
と言った。順番が自然だった。
「三人に部屋を貸してやってくれ」
とディルクが言った。
「お代は」
と女主人が聞いた。
夜久が口を開く前に、ディルクが言った。
「俺が出す。後で話がある」
女主人はディルクを見て、三人を見て、それから、
「分かった」
と言った。
余計なことを聞かない人間だ、と夜久は思った。
信頼関係があるからか、あるいは元来そういうタイプなのか。
そんなことを考えているうちにテーブルに案内されて、四人で向かい合った。




