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第二話「剣と魔法と知らないおじさん」④
三十分ほど歩いたころ、木々が薄くなってきた。
光が増えた。足元の土が乾いて固くなって、踏むたびの感触が変わった。夜久が足を止めた。木の幹に手を当てて、前方を見た。
森の縁だった。
木々の向こうに、開けた場所があった。草原が広がっていて、その先に、石造りの建物が見えた。
塔のある建物。旗が出ている。旗の紋章は読めなかったが、色は赤と金だった。
街道らしき道が建物に向かって伸びていて、その道を、人が歩いていた。
夜久は目を細めた。
人、というより、旅人だった。背中に大きな荷物を背負って、腰に剣をさげて、革の鎧を着ていた。
歩き方に疲労が滲んでいたが、足取りは確かだった。
「いる」
と蒼依が言った。低い声で。
「人がいる」
「剣を持っている」
と夜久が言った。
「じゃあ剣はある世界なんだ」
と蒼依が言った。
「魔法もあるかな」
ゼータが二人の隣に並んで、旅人を見た。
「あの人に聞けばいい」
「言葉が通じるか分からない」
と夜久が言った。
「通じるかもしれない」
「通じないかもしれない」
ゼータは少し間を置いた。
「……やってみないと分からない」
蒼依が夜久を見た。夜久が蒼依を見た。
「まあ」
と蒼依が言った。
「たしかに」




