終わりと始まり
掲載日:2026/03/10
「お願いだから私に殺させて。」
月明かりが差し込む深夜の部屋の片隅で、体がボロボロの女性が血まみれのナイフで少年を殺そうとしている。紛れもない殺人現場だ。必死に抵抗する少年の口を手で抑え込む女性は続けて言葉を口にする。
「私には貴方しかいないから。」
「これは私の愛情。」
言動が見事に合っていない。そんな女性の手を激しく振り払った少年は、声を出すなり、弱々しい声で救急車を呼んでくれと訴えている。少年は既に銃で撃たれ致命傷を負っていた。泣きながら殺させてほしいと言い続ける女性と、最後の力を振り絞って救済を求める少年。その空間も終末へと動き出している。
「貴方が他人の手で殺されるより、私が殺す方が良いに決まってる。」
「すぐ会いに行くから待っててね。」
そう言うと女性は、ついに少年の首を静かに切った。そして女性は部屋の窓から飛び降り、生々しい音を立てて自ら命を絶った。そして一部始終を見ていた俺は、パトカーの音が近づくと共に、切り刻まれた重い体を動かし、自分の頭に銃口を向けた。俺は最期に悟った。引き金を引いた瞬間から何かが終わり、そして始まったことを。




