山峰 エリ:2
「んー…さてはて」
「あら、珍しい、考え事してるなんて」
「失礼だねチミは!」
普通に登校して普通に教室まで来た…けど
なーにすればいいのか全くもってわかんねー
一人で?3人の監視??
いやいやいや目は2つしかないっつーの
しかもクラスメイトのほとりん以外は先生で校内動き回ってるってのにさぁ!
「勉強のことなら教えてあげるけど?」
「そんなことよりもっと大きな考えなのだよ…
ドーナツになんで穴が空いてるのかとか空はなんで青いのかとかそんなレベルの超大作疑問」
「全部答え出てるわよそれ」
「んじゃあウチのはまだ答え出てないやつなの!」
「ふぅん…」
ウチの属性は監視向きかと言われたら答えは全然NO
面倒なことパパっと終わらせるには手っ取り早いけど武器の形状的に荒事にしか使えない
しかも割と大きいからいつもは学校の個人ロッカーに入れて鍵かけてる。
「んー…答えが全く出てこない」
「独り言がすごいわよ、何よ」
「いやね、今読んでる漫画でさぁ…一人でバラバラのとこにいる3人を監視するっていう話があるわけよ
けどその漫画属性とか出てこない探偵ものでさー、これどうすんの?っていう」
「はぁ…勉強の話かと思ってた私が馬鹿だった」
「思考も立派な学問じゃろがいっ!」
呆れ顔のほとりんを後目に割とマジめにウチの役割をどう達成するかを考えていた
誰かに協力を仰ぐにしてもリスキーだし、そもそも監視できる属性なんて探しゃあいっぱいいるかもしれないけど普通に誰がどれなのかとか把握してるわけもないし…。
「ほとりんってさぁ…属性なんだっけ」
「秘密よ…秘密」
「武器は?」
「言うわけないでしょってば」
頭がパンパンになってきたからとりあえず脳死でほとりんに質問をなげかける
けどある程度察しがついてる部分もある
ほとりんはロッカーを使用してないからおそらく武器は装飾具系かバッグにはいる程度の大きさのもの
属性に関しては…何もわかんない
けどその人の生き方とか人格とか反映されてるんだったらなんかキッチリ系の能力なんじゃない?知らんけど。
「そう言うエリはどうなのよ?」
「ウチー?ウチの属性はねぇ究極美少女爆乳丸だよ」
「無いでしょそんなの、属性は2文字か3文字なんだから」
「じゃあ爆乳美女」
「4文字は授業でも習った通りそもそもの素養が段違いなんだからエリには絶対無理」
「じゃあ美女」
「乳を捨てたのね」
「だっておっぱいでかいブスより美人になりてえよ!おっぱいがなくても!
それになに?属性が爆乳って!!何が出来んの!乳が破裂すんの?!」
「自分で言って自分でキレるのやめなさいよ…
あと教室内でおっきい声でおっぱいおっぱい言わないで、恥ずかしい」
なんかIQが4くらいの話したらだいぶ頭の中スッキリしてきたな…
よし、また真剣に考えることにしよ。
「あとエリ、今日属性授業だけど」
「あのねぇ、こんなご時世に属性持ってて属性武器持ち歩いてない人間がいますかっての
武器もちゃんとロッカーに入れて鍵かけてますぅ」
「なら安心だわ」
結局何かいい案が浮かぶことなんて一切なくて1時間目のチャイムが鳴った
ま、授業時間使って考えりゃいっか。
■■■■
お昼休みウチは職員室に呼ばれていた
お弁当食べたらちょっと来てねって事で祭木先生に
こりゃあ好都合ですことって感じで今祭木先生の前に立ってるわけだけども…
「大丈夫?落ち着いてねぇ…椅子に座る?それともチョコレート食べるかなぁ?」
なんっっでこんなに気を使われてんのウチ…
久々に学校来た不登校の子みたいな扱いされてない??
え?なんか怒られるとかじゃなくて普通に心配されてんの???
なんで?ウチ今日も朝から元気満タンハツラツ娘だったよね??
「あるよぉ…GABA」
「あっ…お弁当食べたばっかなんで…」
しかもチョコはチョコでもGABAって!
確かにストレス社会ではあるけど!ウチそんなにストレスデカくな……
いや、デカいか、朝から珍しくずっと考えてたから確かにありがたいか?
て言うかそっか、戦争も起こるかもしれなくて割とシリアスライフ真っ只中じゃん!
「あ。やっぱ貰っていいですか」
「どうぞぉ」
甘い、て言うか割と好きな味してる、ストレス緩和とかはわかんないけど普通に美味しい。
「山峰さん…なんか悩んでるでしょぉ?
先生でよかったらぁ…お話聞くよぉ?」
祭木先生がじっとウチの目を見つめて心配そうな視線を送ってくる。
こんな顔でじっと見つめられたらウチ…恋が始まっちゃいそう!!いや、女に興味ないけど。
「悩んではいるけどまぁ大丈夫!なんかこう家の問題っていうか外の問題っていうか…」
「それだとどこにでも問題あることになっちゃうなぁ?」
「とにかくこう自分で解決しないといけないって言うか…上手いこと動かないと世界が危ない!みたいな?」
「そっかそっかぁ…でも抱え込みすぎちゃ…ダメだよぉ?」
「え?やだなー…この山峰エリがそんなにやわな女に見えて?!」
「まだ若い若い発展途上なんだからねぇ…先生にできることならなんでも手伝うからねぇ」
「ん、じゃあそれ美味しかったんで全部下さい」
「あっ…こういう時にそのタイプのお願い飛んでくることあるんだぁ
ちょっとびっくりだなぁ…」
とりあえずできることならなんでもして貰えるみたいだし、デスクの上のGABAを袋ごと全部貰ってきた
割と新品みたいで中身はまだ沢山入ってる。
「とりあえずあとは1人…」
GABAのおかげかなんかさっきまで悩んでたことが嘘みたいに晴れた
いやだって悩んでたところでじゃない?ウチはウチのできることしないといけないだけだし
出来ないこと悩んでても仕方ないんだから秋津先生のところに突撃かますか…。
■■■■
お昼休み終了10分前
何とか秋津先生を美術室で捕まえることが出来た。
「秋津先生へ!百の質問タイム!!」
「僕に?でも100問はやめて欲しいかな、時間無いし…」
「じゃあ1から50!美術教師になろうとしたわけは?!」
「うわ…すっごい省略の仕方したね?
んー…属性もあるし絵を描くのもまあ嫌いじゃないし
あと先生ってなんか憧れてたからかな」
「そんな先生の属性は?」
「えっ…いやぁ、それはほらあんまり人に伝えるものでもないしさ?」
「やっぱり美術教師ってくらいだし絵を描くことに関係した属性とか??」
「んー…それとは真逆かな?絵を描いたり何かを塗ったりとかでは無いよ」
「じゃあ属性武器はそのホルダーの綺麗な筆?」
「そうだよ?この綺麗な筆が僕の武器」
「もう絵描くしか無いじゃん!筆にそれ以外の使い道ある??」
「まあまあ…それで百の質問50から100は何なの?
早くしないとお昼終わっちゃうよ?」
「んー!では…と言っても考えてなかった…
あー、じゃあ彼女いますかー?」
「えっ、すっごい興味無さそうに聞くね?他のでもいいよ?」
「いやほら一応花の女子高生だし、ちょっと色恋をエッセンスにさ?」
「いないよ」
「でしょうな」
「ん??今すごい音速で失礼なこと言われた気がするんだけど…」
「仕事のしすぎですな…幻聴ですそれは
そのうち先生は精神が壊れて絵画と胸像と話しながらキャンパスとマイムマイム踊ることになるだろうから休養はしっかりとるように!」
「は…はぁ、やっぱりそうなのかな?」
「んじゃ!遅刻しそうなんですごい勢いで走って帰ります!
質問した内容は特に何かに使うとかじゃなかて多分すぐ忘れます!!」
ウチは言い終わると共にすごいダッシュで美術室を出た
あと3分…間に合うか?いや!間に合わせる!!
「なんだったんだろ…」
■■■■
そんなわけで放課後
ウチは無事3人と接触を試みた訳だけど
もちろんなーんも分かってない、チョコ美味しかったから今度自分でも買おうくらいしか頭に浮かんでこない。
「エリー、帰るよー?」
「考え事ー歩いたら歩いた分だけ考えてること抜けてきそうだから一人で帰ってー」
「んもぅ…暗くなりすぎないうちに帰りなよー」
仮にことことが弱体化してることを見抜いてた人物が3人の中に居るとしよう
秋津先生はまずありえない、武器は筆で申告的には絵を描くとは真逆の属性
それに属性行使には絶対に筆を使う必要がある、それをしたとしたらことこともさすがに気付くだろうし、それが昨日の話になんも出てきてないって事は一旦は除外。
じゃあ次は祭木先生
これに関してはチョコあんがとね〜くらいでなんも察しはついてない
でもそもそも祭木先生は1番あの日ことことと接触が少なかったし、顔を合わせたのってショートホームルームくらいなもんで…
じゃあその時に属性を使って気づいた?となると属性武器が何なのか全くわかんなくなる
装飾具系だとしても祭木先生って飾り気無いし天然の素材だけで戦ってます感あるから除外。
じゃあ次はほとりん、消去法でここしか無くなるわけだけどほとりんに関してはあの日はほとんどウチと一緒に居た
なんかおかしいなって動きをしてたんならさすがにウチが気付くし…
しかもことことと絡んでる時は常にウチと居たからマジでここも考えにくいでしょ?
じゃあ除外。
じゃあ次…って、もう誰も居ないじゃん!誰も怪しくないじゃん!
しかも今日接触した感じなんか怪しいみたいな人全然わかんなかったし…
怪しい動きなんて特に無かったし…
え?ウチもしかして無能?
無能かぁ…いや自覚はあるけどさぁ…凹みそう…
でも凹んでても仕方ないしとりあえず暗くなる前に帰って今日のこと全部覚えてる範囲で報告しとこ。
■■■■
「ってなわけよ」
「え?職員室でチョコパクった上に同級生と美術教師にダル絡みした話聞かされてる?」
「いやいやここからが本題、まずこれ秋津先生。これだけは絶対に無いですな」
「なんでよ?」
「彼の属性は絵を描いたりするのとは真逆の属性」
「いや、嘘かもじゃん」
「さーらーに!?属性武器は腰の筆!」
「いや、嘘かもじゃん」
「っはぁ!嫌な擦れ方してるね!こんなにも人を信じれないなんて…
世の中は欺瞞だらけの奈落なんかじゃないんですぜい?琴姉さんよぉ…」
「いや、知ってる奈落より酷いところだってくらいは」
「…そ…その今日はありがとう…何かこう怪しい動きをしてたとかも…なかったの?」
「ナイス助け舟!
それがですね…なんもない!!めっちゃみんな普通!!
ビックリした!ぜーんぜん悪い人に見えない!」
「まあ世論的なお話だと悪い人たちはわたくし達なんですけれどねぇ…
まあけど一気に3人とお話できたって言うのはエリさんが頑張ったからだなぁと思います」
「そうやって甘やかすとバカが進むよ」
「もっと頑張りましょうね」
「えっ…すごい手のひら返し」
「まあ1日でなんかわかるとは私らも思ってないし
とりま今日はお疲れ、明日からも頼むね」
「イエッサー!!
てかてかそっちはどうだったの??なんか今日家で話し合ったりしたの?」
「いや、改めてお互いの属性と属性武器について話し合っただけ」
「えっ!ズル!ウチも琴姉とことことのしーりーたーい!」
「まとわりつかないでよ鬱陶しい」
「教えてくれるまで離れませーん!」
「私は移管で琴葉は移転、私の属性は前にも話してなかったっけ?」
「だとしても忘れてる!ちなみに武器は?」
「琴葉のは玩具みたいな銃で私のはライター」
「えっ?!銃とか激マブ!後で見たい!!ことこと!良いよね??」
「良いけど…期待してるのとはちょっと違うかも…だよ?」
「どんな銃?マシンガン?ショットガン?それともロケットランチャー?!」
「あー…光線銃みたいな不思議な…」
「レーザー出んの?!」
ちなみにこの後しつこいって琴姉に怒られたし
なんかことことの銃は女子供向け雑貨みたいな見た目でウチのテンションはめちゃくちゃに下がった
今日1番テンションの下がり幅を記録した
って言うよりウチもことことに属性言っとくべきだったなぁなんてふと思ったけど完全にその機会も逃したし
多分なんか姉ちゃんあたりが伝えてくれるんだろうなとか何とか思いながらとりあえず今日はもう何も考えずに休むことにした。