山峰 エリ:1
「桜庭さん…今日からここで暮らします」
帰ってきて部屋でゴロゴロしてたらなんか姉ちゃんに急にそんな事を言われた
ほへー…って感じだったけど、多分これなんかあった
いや、100パーなんかヤバめのことが起きてる感じがする 。
「ちょっ!姉ちゃん!さっきの何?!」
気になってうずうずして、ウチは階段を駆け下りてキッチンに居た姉ちゃんに声をかけた。
「何?って何ですか?」
「いや!『桜庭さん…今日からここで暮らします…フワァ…サラサラサラ…』みたいなの!」
「ごめんなさい。そのフワァ…サラサラサラ…って言うのはどういうことですか」
「なんか姉ちゃんの儚さというかせせらぎみたいな雰囲気!!」
「フワァ…サラサラサラ…ですか…」
「いやいや!そーいうのは置いといて!何?!どゆこと?!」
「桜庭さんのお宅が襲撃を受けました、お母様は残念ながらお亡くなりに…」
姉ちゃんがなんか次に言おうとしてたけどそれを遮ってまでウチの口から言葉が飛び出た。
「はぁぁぁ?!ヤバいじゃん!一応リーダー格でしょ?!そこぶち抜かれるって!終わりじゃん!
大戦争じゃん!!どうすんの?!」
「それらをお話もしたいですし…お2人も心配ですし…
そんな気持ちを込めて今唐揚げを仕込んでいます」
「はっ?!唐揚げ?!えっ!もっと動揺しようよ!
死ぬよ?!ウチら!ワンチャン!」
「どこでも起こり得ることですし…いたずらに焦っているだけでは何も産みませんからね…」
ちょくちょく議会派との小競り合いはウチだって経験したことあるけど、今回のはガチ
それを焦るなとか無理な話じゃん。
「ほらエリさん…珍呼吸です」
「深呼吸ね?!何!珍しい呼吸って!エラ呼吸でもすんの?!
あとなんか語感が汚い!チ〇コとか姉ちゃんの口から聞きたくない!」
「きっとお二方色々とお疲れでしょうしせめて美味しいものを食べて頂こうという気持ちで唐揚げを仕込んでいます」
「わかった…わかった、姉ちゃんの考えはよーく分かった」
「事が起こるのは明白ですからわたくし達も美味しいものを食べておかないと
いつご飯が食べれなくなるかも分からないでしょう?」
確かに一理しかない
今後議会派と反議会派がガチでバチバチになったら家でぬくぬく暮らすとか無理
戦って移動して戦っての繰り返しが絶対に続く。
「…作るの手伝う」
「じゃあお肉を1口大に切っていて欲しいです、わたくしは調味料を合わせて来ますから」
まだ正直ザワザワしてる気持ちは収まんないし
めちゃくちゃ不安だし、どうなるかも全然わかんないし
なんかいっぱい考えてると頭痛くなるしお腹も減ってきたし…
とにかく今は最悪の気分ってこと。
「あ…そうだエリさん、この話もちろんわかっていると思いますけど」
「家での話は外ではしない、でしょ?そーんなのずっと守ってるって!
表では美しき潜伏反議会派の天真爛漫ひまわりの女山峰エリちゃんなんだから!」
「ひまわり学級?のエリさんはお友達が沢山いると思いますけど…」
「んー…それはまあ!そんとき考える!あとまじでその間違い方辞めて!ひまわりね!!ひ!ま!わ!り!」
姉ちゃんが言いたいことは分かる、戦争になったら多分議会派のこの地区で友達はほとんど敵に回る
それを心配してくれてるんだと思うけど
でもぶっちゃけそんなの気にしてたらウチは頭が沸騰して死ぬ。
「頑張りましょう」
ウチが大変な時、姉ちゃんはいっつも「頑張りましょう」って言う
それは毎回「ごめんなさい」って言う姉ちゃんに1回だけキレたからだ
両親がいなくてほとんど姉ちゃんと二人で暮らしてきた中で姉ちゃんはずっと私のことを心配してくれてる
母さんも父さんも居ないウチがしんどい時は姉ちゃんは毎回申し訳なさそうに謝ってくれたけど姉ちゃんは何も悪くないのもわかってるからこそモヤモヤが爆発してキレた。
「わーってる…てか頑張るしかないっしょ、こんな状況」
そこからはいつも通り他愛もない話をしながら唐揚げを作りに作った
なんか一個だけめちゃくちゃでかいのできたからこれはおもろいなと思ってことことに見せてあげよう
多分ウケる。
■■■■
「…お世話になります」
深夜手前家に来たことことはマジで死にそうな顔してた
中学は違うし接点もないからことことの事は高校に入るまで噂程度でしか聞いたこと無かったけど
これがリーダー格?死にかけのチワワにしか見えないとはつくづく思う。
「いいよぉ…ウチら二人暮しだし!家族が増えてハッピーハッピーって感じ!」
「相変わらず能天気だわ、マジで」
「この能天気さに救われてくれぇい?」
「割とその節あるけどイライラする」
今後のことを話し合うって名目だったけど夕飯はなんか凄い盛り上がって終わった
戦争も議会派も反議会派もそんな単語一切出てこなかった。
「す…すいません…お二人も巻きこんで」
「いえ…いずれは起こっていたことでしょうから…お気になさらないでくださいまし」
「そうそう!ってか、なんでこのタイミングかなんだよねー」
「それはマジそれ」
「何か学校で目をつけられるような事をなされた…とか」
「無い!断じてない!ってか初日はほとんどウチが着いてたもん」
ことことの謝罪を皮切りにようやく話のウェイトが重たくなってきた。
「1日の行動、あと何したか聞いてもいい?」
「あ…朝はお姉ちゃんの車で学校に送って貰って…学校に入ったあとに教室が分からなくて…先生に送って貰って…」
「はいはーい!質問!送ってくれた先生は誰?何話したかまで詳しく聞きたいですっ!」
「男の人で…絵の具の匂いがちょっとだけして、白い筆をベルトのホルダーに刺してる少し髪の長いボサボサの人で…緊張して特には話してない…かな」
「秋津先生だ!若男!若い男!普通の先生!」
「秋津先生って言うんだ…、あ。ごめんね…それからは山峰さんたちに囲まれて…」
「やだぁ!よそよそしい…。エリちゃんって呼んでっ♡」
「バカ、話の腰を折るな、アンタも気にしないで続けていいから」
「あっ…ごめん、授業が始まるまでは山峰…えりちゃんたちとお話して…授業を受けて…放課後お姉ちゃんと合流するまでにまたエリちゃんと達と少しお話して…」
「あってる?」
「うぃ!琴乃の姉さん!その通りでごぜえやすよ!」
「そのままお姉ちゃんの車に乗って…お姉ちゃんとコンビニに寄って、そのまんま…」
「いいよ、そこまでで。私と合流してからは私が話せるから」
「お話の中で出てきましたのは…秋津先生にエリさんあとは琴乃さんの3人ですね」
「んーにゃ!ほとりんと祭木先生もだね!
祭木先生とは話してるの見てないけど!」
「ほとりんさんと祭木先生も追加いたしますと5名」
「学校だけで含めると4人って事ね、それにバカ引いたら3人」
「学校で目付けられてたとしたらコンビニ寄って帰ったことで命拾いしたってわけー?」
「その可能性が高い、何人か踏み入った痕跡はあるって消防団が言ってた」
「え?でもおかしくない??ことことメチャ強なんでしょ?
真っ向切ってバトるとか無策にも程があるっしょ?」
「あー…それ…ごめん、理由は言えないけど今の琴葉はめちゃくちゃ弱くなってる 」
「なんで?!」
「なんか…そういう…なんて言うんだろ
女の子の日的な」
「いや!聞いたことないけど!!!治んのそれ?!」
「……」
「うっっそー!?マジで?!何その謎現象!」
「つまりは弱くなっていることを的確に察知された上で襲撃をお受けにということでしょうか…?」
「てかそれいつからなの?!」
「あ…入学式の日から…です」
「入学式から今日までで接触取った人とかいる??ウチら以外で」
「無いね、付きっきりだったし私」
「僅か3日の内に察知されて…ということはなさそうということでしょうか?」
「そこは確信持って違うって言えるね、学校行くまでは私とお母さん以外とは接触してない」
「じゃあ学内で察知されてー、即襲撃を受けたってこと??」
「だろうね」
そうなると犯人は秋津先生か祭木先生かほとりん?
え…でも秋津先生はどこにでも居そうな陰キャチックな先生だし、祭木先生はド巨乳メガネっ娘のおっとり清楚美人でほとりんはただの委員長でしょ?
しかも弱くなってるのを察知されるような会話なんて……
「あ!待って!その日さ!めちゃくちゃことこと具合悪そうだったよね!」
「あ…うん」
「帰りもめっちゃほとりんとその話してたんだよね!大丈夫かなぁって」
「あー、それ浮きに浮きまくったっていう話のやつね
それ、何をどこまで話したの?」
「んー?属性は18にならないと貰えないんじゃないのかーとか、属性持ちが募集要項の学校なのに属性授業は属性持ってない人はどうするのー?とか」
「それから?」
「ん?それだけだよー?なんか宇宙人みたいだなーってからかってほとりんに怒られた」
「帰りはどんな話してたの?」
「ほとりんと?ほとりんとはなんか具合悪そうだったよね!とかなんでも気にしちゃう正確って言ってたけど細かいのかなぁ委員長の座危ないんじゃない?とか」
「他には?」
「それだけ、あとは方向別だから別れて帰った」
「うーん…ちなみに具合悪そうに見えたのはいつから?」
「具合悪そうってかなんか雰囲気ちょっと変わったよね?的な話はずっと出てたかな」
「そこから弱くなってるの気付かれて叩かれたか?」
「けどそれだけで急襲仕掛けるのはいささか早計かとは思うのですけど…」
「どっかでなんかの確信を得てるってことだよね」
そこからは同じような話を3週くらいしたけど結局答えは出てこなかった
誰かが属性を使ったんじゃないかとまで進みかけたけど、じゃあどのタイミングでどんな属性かなんて話になるとまた一気に最初に戻ってそこからずっとグルグルループが続いてる。
「とりあえずエリは明日からも通常登校で秋津とほとりん?と祭木を徹底的に見張ってくれる?」
「らじゃー!!」
「私と紗代と琴葉はこの家で潜伏
なんかあった時にいつでも動けるようにね」
「…わかった」
「あまりお外などに出てはいけないと思いますから、ご入用の際はいつでもお申し付け下さいね」
琴姉が明日からのスケジュールを簡単に発表して、今日は一旦お開きって感じになった
ぶっちゃけこんな事言ったら絶対キレられるから言わないけど、ちょっと探偵みたいでウキウキしてるウチがどこかに居た
ただただ言われた人を見張るだけだけど、なんだか凄く特別な感じがして明日が少しだけ楽しみになってくる。
「んじゃ!今日はお開きってことでおっけー?」
「まあこれ以上話進まないし」
「んじゃあことことはウチの愛の巣に行こうねぇ」
「愛の巣?!」
「なんで愛の巣で今まで1人で暮らしてたのよ、寂しすぎんでしょうが」
「じゃあこれから愛の巣になる!」
「琴葉に変な事したら砕くよ」
「ガチのヤツじゃん!やだよ!なんもしないよ!恋バナするくらいだよ!」
「あと琴葉…大丈夫だね?」
目配せって言うの?琴姉がことことをちらっと見てことことはコクンと頷いた
迷惑かけるなよー?とかかな?
変に気使われるのもあれだし自由にしててくれていいのになぁ…。