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久留間 耕助:2

 軽い聴取は佐田が終わらせてくれた、それにしても閉じ込められてたのが琴ちゃんの姉ちゃんとあん時の子とはねぇ。


 なんかこう巡り合わせ……みてぇなもん感じるよな。


「では桜庭琴乃!桜庭琴葉の事について何点か聴取があるので署まで――――」


「ん?あー……良い良い。今回のことも聞けたしさっさと帰んな」


「先輩?!」


「いや、署が爆発してんだからどこ連行すんの」


「ですが!こうなった以上は桜庭琴葉もただの反議会派!親族にもその疑いが――――」


「グレーなんだから良いよ、面倒くせぇ。それに反議会派の1人処分したんっしょ?なら今回は恩赦って奴で」


 佐田が言いたいことを全て遮って俺は続ける

 すごい不満そうな顔してるけど俺には関係ねぇよ。


 それにこんな非常事態に必要最低限以上の仕事させんなって、タダでさえいつもの倍以上のカロリーで仕事させられんだからよ。


「じゃあ帰るけど……」


「ん、気をつけて」


 当の本人も呆気にとられた顔をしてる、まあすんなり帰れるとは思ってなかったんだろうな。


 俺がここにいてよかったな、これが鶴とかなら恩返しされてもいいレベルの善行だぞ?

 まあ後々なんかで還元される事、ボールペンの先ほどは期待してるわ。


「先輩!これは重大な職務違反でありますよ!」


「だから、職務する場所がなくなってんだからバカ真面目にルール守っててもっしょ」


「これで重大な事件につながったりしたら後悔するでありますよ!」


「そん時ゃそん時、臨機応変ってやつだよ。佐田くん」


 見るからにまだ怒っている佐田を適当に宥めながら、車の中で吸いそびれたタバコに火をつける。


 あー、あとはこの瓦礫の中から死体見つけて身元照合かぁ……

 クソ面倒だが、まあもし警備団が復興した時に仕事してねぇって詰められるのもダリィしな。


「過ぎたことは過ぎたことって感じで、さっさと身元確認しに行くぞ」


「いいや、まだ話は終わってないでありますよ!」


「終わってからにしよ、終わってから。もしかしたらまだ救える命あるかも知んねぇよ?」


「ムッ……」


「ほら、早く瓦礫消して消して」


 とりあえずは面倒な佐田の説教は回避したとして、なるべくゆっくり仕事して少しでも佐田が説教のこと忘れてくれるように立ち回るかぁ。


 あわよくばいい感じに怪我した奴とか見つかると保護に回れて佐田とそれどころじゃなくなってくれんだろうけど。


 こりゃ流石に不謹慎すぎるか。


 ■■■■


「祭木静……クセぇなとは思ってたんだけど派手にやったもんだよな」


 校内をある程度グルっと一周した、生存者は0。


 瓦礫で潰されてたり、潰されてなくとも穴だらけで見るからに死んでたり。


 まさにこういうのを地獄絵図って言うんだろうな、予想はしてたけどここまでになるとさすがに気分いいもんじゃねえな。


「うし、最後。死亡確認」


 校庭に転がってる祭木静だった物を見下ろしながら、校内の死体全員分の確認を終える。


 頭が潰れちまって、これが祭木静かは断言できないが、恐らく聴取内容的にコイツで間違いは無いはず。


「では急いで関所に帰るであります」


「んー……ちょっと待て、いや、良いわ。俺残るから先帰っとけ」


「なにか気になることでも?」


「念の為もっかい校舎回っとく」


「ようやく警備団としての自覚が!自分は感動したでありますよ!」


「あいあい、早く帰んねぇと料金膨れ上がるぞ」


「そうでありました!では!」


 ビシッと敬礼してから急いで去っていく佐田を見送りながら、俺はポケットから《《武器》》を取りだした。


 俺の性格知ってんならもっかい一人で校舎確認するなんで嘘だって分かんねぇもんかねぇ。


 まあそこが楽でいい、俺は手袋をはめて手の甲に付いている歯車を勢いよく回転させた。


「落下死してからの行動を再現しろ」


 手の甲で回転してる歯車を確認して死体に触れる。


「おー……やっぱりか」


 死体は起き上がって、何かを持ちながら指で押す動作を繰り出した。


 そしてそのまままた地面に倒れこみ動かなくなる。



 ―――――――俺の属性は『自動化』


 手袋についてる歯車を回転させて命令をすると、歯車が回っている時間その対象に選択した物体は持ち合わせてる機能を使い命令を遂行する力。


 パソコンなら勝手に文字を打ち込み調書を作るし、車なら自動的に運転が進む、俺は歯車の動きが止まらないように定期的に見ているだけでいいし、属性武器の側面から歯車も異常な時間回り続けてくれる。


 ま、なんでもできるように見えて生物にに人を殺せとかぬいぐるみに飛び回れってのは無理。

 本来の機能から逸脱しすぎてたり生命があると俺の属性は発動しない。


「……やっぱ死んでから動いてるよなぁ」


 死体を見た時から違和感があった、落下地点から少し動いたように血の跡が続いていたから。


 だから物体に成り果てた祭木の死体を使って死んでからの状況を再現させた。


 俺の勘違いなら能力は動かないはずだし、勘違いじゃないなら手足本来の機能を使って再現されるはずだったから。


 結果はドンピシャ、やっぱりこいつは死んだ後に動いてる。


 ■■■■


 柄にもなく俺は今頭を働かせている、どうにも警備団としての生活が長かったからか、体が無意識に仕事をしようとしてるらしい。


「死体を動かす属性ねぇ」


 聴取の中で聞いた動く人体模型、それに城之崎が殺されたあの事件。


 なんかが気持ち悪く俺の中で引っかかっていた。


 まず城之崎の属性は発動すると周りの脈をさぐれるはず、それに即死じゃないなら刺された時点で辺りを探ろうと属性を発動させたはずだ。


 それなのにどうしてアイツは何も行動を起こさなかった?

 どちらかと言うと過激派寄りの議会派のアイツがただ死ぬのを待ってたとは考えにくい。


 けど山峰の聴取でも、現場を見た団員の報告でも城之崎が何かを残していたっていう話はなかった。


 ただただ死が間近に迫ってて恐怖して動けなかったってのも考えれるけどな。


 ただもし今回みたいに人体模型が下手人だったらどうだ?

 そもそも生きていない人形がひとりでに動いて城之崎を殺したなら、城之崎の属性ではそもそも感知ができないはず。


 だから現場に何も残っていなかったのか?


 その上話にでてきた頭を吹き飛ばされても動いた人体模型、おそらく使われた属性は俺に近しい属性であることは間違いない。


 人型の物を自由に操る属性だと仮定するなら死体を動かしたことも説明はつく。


 つまり校内には祭木と人体模型の操り手の2人が最低でも存在したことは状況から考えても確定だ。


 けど爆発までの間に正門から出ていった人間はいないし、爆発の衝撃で裏門に通じる道は瓦礫で閉じられていたのを確認してるし爆発以前にも出て行った人間はいなかったと聴取はできている。


 つまりまだソイツは校内に残っている?


「マジかよ…面倒クセぇな。」


 校内には死体しか無かった、ただまだ探していない場所、つまりは爆発から逃れた場所か1個だけある。


 ()()()


 校舎から離れていて爆発もしていなければ爆発の二次被害も受けていない。


 もし死体を操って爆発を招いた上で逃げ道もないとなると、潜伏する場所としては持ってこいな場所。


「居るなよ…マジで」


 推定ネクロマンサーかドールマスターかは知らんが、そいつが居るなら間違いなく戦うことになる。


 俺は向いてねえんだよな、戦うとか。


 けどここで逃したとて後で100パーセント面倒くさくなる。


 だったら行くしかない、けどすぐには行かねぇ、俺にだって準備はある。


 戦えないからこその。


 ■■■■


 警棒を構えながら、体育館の重たいドアを足で開けた。


 電気すら付いていない体育館は昼なのにかなり薄暗くて、床一面に塗られたであろうワックスの匂いが独特の匂いを発している。


「大人しく降伏しろー」


 警棒片手に体育館内を歩き回るが、あるのはバスケットゴールに、厚いカーテンが備え付けられてる舞台、人の影なんてひとつも無い。


「手を挙げて出てくるならなんもしねーぞー」


 ま、こんなんでおずおず出てくんなら爆発事件なんて起こしてねえと思うけど。


 体育館をぐるっと一周してみたけどやっぱり人一人、生き物1匹すら出てこねぇ。


「後はあそこか」


 残るはどこの体育館にもある備品室、マットとか跳び箱とか置かれてるやたらホコリ臭いとこ。


 ここにも居てくれるなよ、とドアを開けた先に――――


「っはぁ……逃げてろよ」


 マットの上に一人、そいつは待ち構えるように居た。


 ()()()

 山峰の次に俺が聴取をとった生徒の1人。


 そして今回の占拠事件の犯人である()()()()()()()


 そいつがマットの上で宝物を扱うようにヌイグルミを抱きしめながら穏やかに眠っている。


「おい、起きろ」


 触った時に気が付いた、こいつは眠ってるんじゃない。


 冷たくなって固くなった身体、呼吸の音も脈の動きも感じ取れない症状。


 ()()()()()、間原幽はここで静かに息を引き取っている。


「自殺…か?」


 状況的に考えれば恐らくコイツがもう1人の犯人でほとんど確定だと思っていい。


 祭木静の妹で、唯一校舎から離れたこの体育館に居て、なおかつ城之崎の事件の時にも校舎に居た。


 それが死んでるとなると、姉の敵討ちで爆弾のスイッチを押して一矢報いた上での自殺ってことか?


「んま、戦う必要がなくなったって考えるといい事なんかねぇ」


 とりあえず状況は報告しとくか、そう思ってスマホを取りだした時、体育館の中に足音が木霊した。


 誰かが入ってきた、足音から推測するに1人、けどこんな状況の場所に来る人物なんてこいつらの仲間かロクでもねえやつに決まってる。


 死体の確認を早々に切り上げて俺は近くの跳び箱の裏に身を潜めた、そしてそこからじっと銃を構える。


 入ってきてなにか不審な動きをしたなら何時でも撃てる、その状況だけつくりあげて俺はじっと息を潜めていた。

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