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久留間 耕助:1

 バカみてぇにめんどくせぇことになったなぁ。


 関所でタバコをふかしながら、遠方から見える白煙を俺はじっと見ていた。


 方角的には学校か?まあこの区の議営の建物の中でもいちばんデカい方だし、そりゃあ狙われるか。


 それに昨日の警備署と言い今日のこの学校といい、ここまでされちゃあこの地区の反議会派共もぶち上がるだろな 。


 もうこりゃ戦争に勝つしかこの騒動は収まんねえ、めんどくせぇなぁ。


「久留間先輩!!すぐに車を出すであります!」


 おー、きたきた、そろそろ血相変えて走ってくるとは思ってたよ。


「……ダジャレ?」


「はっ……って!今そういう話をしている暇は!」


「いや無理無理……無理だっての」


「今行けば鎮圧及び救助が間に合うかもしれないであります!」


「あのさぁ、見てみ?あの煙。こっからでも見えてんだぞ?もう完全に落とされちまってるっての」


「であれば至急増援を呼んだ上で―――」


「増援ねぇ」


 そりゃ言い淀むわ、肝心の警備署は昨日の夜に爆破済、免れたのは関所を警備してた俺らに非番のヤツら。


 未だに警備署からなんの通信すら来てないってことはもう詰んでるってこと。


「それに今持ち場離れて外から攻め入られたらどーすんの、ねぇ?」


「であれば片っ端から知っている警備団の面々に連絡を取り、個人的な連携から事を進めれば」


「あー……良いよそういうの、てかお前警備団に個人的な連絡取れるような間柄の奴居ないじゃん」


「失礼な!3人は連絡先交換してるでありますよ!」


「俺5人ね、はい。俺のが強い」


 学校に救援に向かいたくないのは面倒だからってのが一番でかい、けどここ離れて外からなんか来た時もっとダルい。


 適当にこの熱すぎる後輩をいなしながら2本目のタバコに火をつけた。


「もどかしい……こういう時の桜庭琴葉ではなかったんですか!」


「こうなりゃ琴ちゃんでも無理、個人で収めれる範疇じゃねーよ」


「反議会派の人間にそのような愛称を付けるのは不適切でありますよ!」


「いーじゃん、可愛いんだし」


「侮蔑と嫌悪を込めて桜庭琴葉と!きちんと呼ぶべきであります!!」


「あい、てかアレどうすんの?」


 面倒な流れになりそうだったから適当に白煙を指さしといた。


「むっ!それは確かに……」


 めちゃくちゃこいつは単純だ、面倒くさくなくて助かる。


「とりあえずお前が言ってたみたいに連絡とってみるか?」


「もう既に実行済でありますよ!」


「繋がった?」


「そもそもバグかなんかでブロックされてたであります」


「それバグじゃねーよ」


 しゃーねーななんて思いながら一応は警備団のひとりとして俺も連絡先をあたってはやった。


「あー…生きてる?ちょ、頼みたいことあんだけど」


 繋がったのは繋がったけど、こいつかぁ……

 一回切って他の当たった方がいいんじゃねーかなこれ。



「さすが先輩であります!誰に繋がったでありますか?」


「ん?愛ちん」


「それ事務の人でありますよ!?」


「いや、彼女も立派な警備団のひとりよ?役職で差別するん?お前サイテーだな」


「戦えない人間ここに置いてどうするでありますか?!」


「それが愛ちんめっちゃ強いらしい」


「事務なのに?」


「家の仕事も手伝ってんじゃん」


「警備団の仕事をしながら家を手伝ってるのは殊勝な心がけだとは思うでありますが」


「愛ちんの家知ってる?民間ボディーガード」


「だったらなんで事務なんでありますか?」


「本人に聞いたら?」


 ■■■■


「先払い?後払い?デスカ?」


 連絡してから40分くらい、愛ちんはでっかい羅針盤を背中に担ぎながら、関所にチャリで来た。


 亀の甲羅みてーだな、てかそれ担いで40分チャリこげるのバケモンだよ、マジで。


「後払い、今持ってない」


「分かりマシタ」


「請求は警備団にしといて」


 相変わらずのカタコトで請求をされたけど、今回は私用じゃなくて仕事で使うわけだから当然請求は警備団持ち。


 ま、その警備団がちゃんと機能してるかは別として。


「ダメですネ、警備団ボロボロのボロ」


 やっば目敏いな、回収はきっちり確実性のあるところからじゃないと通してくれねーか。


「分かった、じゃあこいつ」


「なんで自分でありますか?!」


「いやだって救援に行きたいって言ってたのお前じゃん」


「それはそうでありますけど」


「んで、お前は警備団の面々に全ブロされててどうしよーも無いから俺が動いたんっしょ?」


「ま……まあ。そうでありますね」


「普通に考えて料金はお前もちだよな」


「話終わりマシタ?これ料金表でスヨ」


 割と吹っ掛けてる値段の料金表だけ受け取って、ポケットにしまい込む。


 今これ見られて騒がれるのも余計に面倒くさいしな。


「で、1人呼べたけど」


「早速救援に向かうでありますよ!」


「関所見るのは誰がやんの?」


「先輩と自分が行くとして、ここに残るは事務の愛ちんさん…でありますか?」


「東デス」


「東さん一人で大丈夫でありますか?」


「地面あるナラ、なんとでもなりマスネ」


「ま、心配なら出来るだけ早く帰って来てやればいいじゃん」


「時間長くていいデスヨ、ウチは出来高プラス時間制」


「とりあえず車回してくるわ」


 まあ今から行って凡そ30分くらいはかかるだろうけど、その頃にはもう死屍累々だろ。


 そうなったらなったで死体の山から身元割出したり、犯人の痕跡探したり、考えるだけでも鬱だな。


 3本目のタバコに火をつけながら、どっちにしろ面倒臭いなと、俺は深く煙を吸った。


 ■■■■


「はい。これさっき貰った料金表」


「高すぎるでありますよ!」


 案の定、車内に絶叫が響く、少しでも音を逃がすために窓を開いたけどそれでもまだうるさい。


 こいつは無視して到着するまでちょっと寝るか。


「と言うより運転してる時くらいはキチンと前向いて欲しいであります!」


「だいじょーぶ、毎回これで事故ったこと無いじゃん」


「いくら先輩の属性だからって、乗ってるこっちは毎回ひゅってするでありますよ!」


 車に乗ってから俺は1度もハンドルに触れてなければ、アクセルに足をかけてもない。


 けど車はある程度の速さで目的地に向かって勝手に進んでくれる、車自体がまるで生きているみたいに。


 面倒臭がりな自分にとっては最高の属性で、これがない生活なんて考えられない、我ながら本当にこの属性で良かったと心の底から思う。


「んじゃ、俺ちょっとだけ寝るわ」


「寝起き最悪なんでやめて欲しいでありますよ」


「だったらなんか寝ないような面白い話話してよ」


「寝ないような話……。あ、そういえば東さん、なんであんな独特な喋り方なんでありますか?」


「両親のどっちかのルーツが中国人だから」


「日本で生まれてても日常的に聞く会話がカタコトだとああいう喋り方になるんでありますね」


「いや、あれわざと、ああしてたら料金交渉の時とか揉めないからって」


「悪辣すぎるでありますよ!それ!」


「処世術処世術」


 面白い話をされたってより、残酷な現実を突きつけただけになったな。


 ま、こいつのリアクションがそれなりに面白かったからいいけど。


「それに30分2万円刻みは出せないでありますよ!」


「命の値段だと思えば安いもんだよ」


「他人事みたいに余裕でありますね」


「他人事だし」


 外の景色はいつもの倍平和、誰も歩いてなければ車すら走ってない。


 まあこんなこと起こってたりゃそりゃそうか、誰も率先して戦場に身を出そうとは思わねーよな。


「銃持った?」


「勿論銃も武器も持ってるでありますよ」


 一応先輩として部下の装備くらいは確認しておく。


 これで仕事したってことになるだろ。あとは適宜対応って感じで済ませりゃいい。


「んじゃあと20分くらいだろうし、着いたら起こして」


「だから寝ちゃダメでありますって!」


「だって起きててもする事ねえじゃん」


「計画を立てるとか!対策をするとか!」


「相手の人数も属性もわかんないのに?」


「じゃあ自分の先輩の連携の仕方を考えるとか!」


「今まで散々そういうのしてきたっしょ、なに?覚えてない?」


「今回はいつもみたいに反議会派捕まえるのとは訳が違うんすよ!」


「どんだけ計画練っても死ぬときゃ死ぬ、だから俺は生きてるこの時間を有意義に使いたいわけ」


「先輩は警備団という自覚が足りてないでありますよ!」


 母親にも父親にもこんなに細かくお説教をされたことは無い、てかよくも飽きずにこんなに毎回同じこと話せるよな、コイツ。


 そんなに目くじら立てるくらいならさっさと班替え希望して上司変えてもらえば解決なのによ。


「あ、タバコ吸ってい?」


「窓開けてくれるならいいでありますよ」


 窓を全開にすると車内に一気に立ちこめる火薬の匂い、そっか、もうこんなに近くまで来てんのか。


 結局コイツの相手してたせいでろくすっぽ眠れなかったな、今に始まったことじゃないから俺も慣れてんだけど。


 車内が臭くなりすぎる前に俺は4本目のタバコを吸うことを諦めて、そのまま窓を閉めた。

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