表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/34

祭木 静:1

「……え?」


「お疲れ様でしたぁ」


 楽だった、相手は完全に油断しきっていた

 私はコイツは本当にバカで平和ボケしているなとしか思わなかった。


「大丈夫ですよぉ、楽になれるだけですからねぇ」


 でも秋津先生のおかげで警備団の犬1人楽に始末できたのも事実

 ならばせめて楽に何も考えずに死なせてあげよう、不安も恐怖も何も無いようにして。


「ふぅ……」


 私に刺されて驚いた顔、受け入れられないのか見開かれた目、死を自覚したのか溢れ出る恐怖心

 それらを私の属性で綺麗に抑えてあげたら最期は私の目を見て眠るように崩れ落ちていった。


「さて、そろそろあっちも終わってる頃ですしぃ……」


 家庭科室から持ち出した包丁を腹部からズルリと引き抜いて近くの茂みに投げた。


「連絡だけ入れておきますかぁ」


 予定通りに行ってるなら、おそらく校内でも1人死んでいるはず

 戦闘の気配も悲鳴も何も聞こえてこないのであれば多分上手くやれている。


 あとは職員室の様子を伺ってそれに合わせて合流すればいい。


 ■■■■


「警備団の人からの聴取はどの道明日でも構わないそうですからぁ、本日はゆっくりお休み下さいねぇ」


「申し訳ありません、ご迷惑をおかけしました」


「そんなそんなぁですよ?今はエリさんの心のケアを第一にしてあげてくださいねぇ」


 一騒動後、山峰エリは姉に引き取られて帰っていき、校内に残っている生徒も一人残らず強制的に帰宅させられた。


「んじゃ、いい?」


 けど私たち教職員は暫く帰れない、今から警備団の聴取が1人も漏れなく行われるらしいから。


「名前からでいいんですかぁ?」


「ん?いや、お見合いする訳じゃないから属性から」


「鎮静ですぅ」


 空き教室で私の聴取を行ってるのは目つきも悪いしやる気も無さそうな同い年くらいの男。


「あい、ならそれ何ができますか?あー……あと武器ね」


「武器はこのメガネでぇ、出来ることは目を合わせた人の不安とか恐怖とか悩みを緩和することですねぇ」


 私の属性については今この聴取で全部出し切った

 向こう側が私の情報を少しでも掴んでいたとしたら、ここで嘘がバレたらかなり面倒だから。


「ん……それだけ?」


「あとは副次的な効果としてぇ、それらの感情を抱えてる人が色として見えますぅ」


「え?それだけ?」


「驚かないで下さいよぉ、殺傷能力が全くない属性の人だって稀には居るでしょう?」


「いやまあそうだけどさぁ、どうやって生きてきたの?それ」


「人を殺す際に悩みがない人恐怖がない人は不安がない人、そういう人は少ないですからぁ」


「それ見分けて避けてきたってこと?」


「と言うよりこの地区は基本平和ですから避けるも何も……ですよぉ」


「あー、おっけ。分かった」


「他に聞きたいことはありますかぁ?」


「ん?まだまだある」


「どうぞぉ」


「てかその喋り方疲れね?」


「何がですかぁ?」


「いやその「ですぅ」とか「なのでぇ」とか、そういう喋り方の人もまあ見てきたけどさ、お姉さん作ってるっしょ?」


「生徒に威圧感を与えないために柔らかい話し方をぉ研究していたらこうなってましてぇ」


「あっそ……別に俺生徒じゃないんで」


 この男、私は苦手なタイプだしこの男も私のことを苦手としている

 会話の中でそれだけは痛いほど理解できた。


「んじゃ〜次、一瞬職員室から離れてたみたいだけど?」


「お手洗いですねぇ」


「秋津先生と最近親しかったみたいじゃん?」


「なにか悩んでらしてたみたいでぇ」


「城之崎とも関わりあるよね?担任だっけ?」


「クラス委員の担当も受け持ってるので接触する機会は多かったですぅ」


 なんだ?疑われてる?それともただこう言うしゃべりかたの人間なだけ?

 けど残念ながら私に何を聞いても無駄、ボロを出す気は毛頭ない。


「あ〜……あとは何?へぇ〜」


「他に気になることはありますかぁ?」


「妹いるんだ、この学校に」


「両親が亡くなって離れて暮らしていますから、苗字は違いますし歳も離れていますけどねぇ」


「一応生徒は明日以降順々に聴取入る予定だけど……」


 そう言って目の前の男はパラパラと資料をめくり始める


「あ〜妹さんも聴取対象なんだ」


「残っていたみたいですねぇ〜」


「ふぅん」


「他に聞きたいことはありますかぁ?」


「いや、今日は終わり。あざした」


 今日は終わりか、けど次はもう無い。


 だってお前らはもうすぐまとめて死ぬことになるんだから、精々生き残れるといいですね?名前も知らない警備団の犬。


「あ、あと俺ね久留間ね」


「へ?」


「いや、なんかお姉さんに名前言ってなかったな〜って」


「また困ったことがあればよろしくお願いしますねぇ」


「あいあい」


 ■■■■


『ということになりますね』


 家に帰ったと共に私はスマホから仲間に連絡を入れた、今日の学校での計画、聴取を受けたこと、明日以降生徒にも聴取が行われること。


『姉妹だってバレているのは何故?』


『前から目をつけられていたのでは?』


『里親違うのにわざわざ洗ってるってことだもんね』


 スマホの画面に次々と更新されていく文字を見ながら私はタバコに火をつけた。


『どうする?』


『桜庭が動けないうちにここ占領しときたくないか?』


『あんまり派手に動いたら地区長怖くね?』


『んじゃあ議営の建物順に占拠するとか?』


『いや、手っ取り早く地区長殺した方が早くね?』


 画面の向こう側ではいつもの倍以上に文字がやり取りされていて

 私は特に何かを発言するでもなくジッとそれを見つめていた。


『警備団の所の爆破はどうする?手筈通り?』


『私が爆弾背負って告発のフリして詰め所行くんだっけぇ?』


『そのヤツ、爆薬の調整とかもあるからすぐは無理だけど、明日には間に合う』


『じゃあ明日で頼むわ』


 着々とこの地区を制圧するための計画が進んでいく。

 ウキウキしちゃうなぁ……お祭りが始まるみたいで。


『警備団叩いたら2人は学校抑えて』


『はぁい』


『俺らは街でひと暴れしながら適当な反議会派集めるわ』


『そこから役所占拠と詰所開放する流れで間違ってない?』


『男子校の方はどうするの?』


『さすがに手が回らんべ、とりあえず今言った2拠点抑えたら俺ら以外の反議会の人間も自ずと暴れるだろうしその後雪崩込ませるわ』


『了解』


 私たち4人のグループでここまで進めれたのは本当にタイミングが良かったんだなって。


 あの日見た桜庭さんは酷く何かに怯えていて話とは全然違っていた

 その時に私は確信した、叩くなら、ここを占拠するなら今なんだって。


「はぁ……早く明日にならないですかねぇ」


 とんでもなく楽しみだった、ここから腐りきった議会派の地区が私たちの手に落ちる……

 この地区を落として順当に力をつけて行って議会になることが出来れば、私たちはもっと幸せな世界を作ることが出来る。


 ■■■■


 決行日の朝、さすがに私は学校に勤務しに行くことは無かった。


「それじゃあ時間は夜で……はい。」


 けど警備団に目をつけられてる可能性もあるから妹にはいつも通り学校に行ってもらっている。


 私はその間妹と私の計画の最終調整や変更はないかを確認していた。


「桜庭さんはどうしますかぁ?」


「ん?もちろん真っ先に狙う、妹でも姉でもどっちか持ってけばぶち上がりだろ」


 私の家でリーダー格の彼は明日からの計画をもう一度大雑把に話す、かなりざっくばらんに要所要所詰められてないところはあるけれど

 その分力は確かだからその細かい抜けはおそらく力で押しきってくれるだろう。


「と言うより爆破後、学校を抑えるのは私と妹の二人でいいんですかぁ?」


「ん?あー、そこなんだけど俺らのどっちか行った方がいい?」


 少しだけ考えた

 少しだけ考えて、私はひとつだけお願いをした。


「――――――ということでお願いしてもいいですかぁ?」


「……マジ?」


「それで事足りますからぁ」


「それかなりマズくねぇか?」


「おそらくマズイでしょうけどぉ…多分それが一番賢い方法です」


「そこまで言うんだったら分かったけどよぉ……

 できればーーー」


「大丈夫です、何も言わないでください、あくまで最後の手段……ですからぁ」


 何か言いたそうな彼が何を言おうとしてるのか私には分かっている

 武器をかけていればその悩みを和らげてあげていたのに。


 でも武器がなくても、あなたを落ち着かせることくらいは簡単ですから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ