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城之崎 ほとり:3

 なんで?どうして私が?密告がバレてる?報復された?



 相手は誰なの?どこからバレた??



 助けを呼ばなきゃ、周りに人は?



 これは無差別?狙われた?



 でも早すぎる、目をつけられてた?



 誰も脈動ないはずなのにどうして??



 倍速再生みたいに私の頭の中で自分の声が響いた

 すごい速度で考えてるのに答えは出てこないまんまで。


 ■■■■


 断言出来る、桜庭琴葉はおそらく全くもって似た何かに入れ替わっていると。


 私の属性(アトリビュート)は「診脈」

 脈の振動をソナーのように感知できるただそれだけの使えない属性だった。

 挙句の果てに属性武器(ウェポン)は髪留めとかいうどうしようもない代物


 けど議会の役に立ちたい、自由と横暴を履き違えて世界を無茶苦茶にした反議会派(クズども)を許せない


 教科書でしか見た事のないあの世界を私は見てみたい

 世界を変える?今の議会は間違っている?

 だから戦争を起こし続けているの?

 だから無駄に人を殺めていくの?

 あなた達が居なければ平和じゃない


 だからこそこんな属性でもできることがあるって役に立てるって信じ続けた。


 戦えない何も守れないこの属性と武器で何ができるか、何も食べれなくなってそれなのに嘔吐が続くまで考えに考え続けた。


 そんな地獄みたいな日々で私はある事に気付いた

 この属性は嘘をついている人間が分かるってことに。


 脈の振動が明らかにおかしくなる

 体調が悪いのかなんて最初は思っていたけど違った

 嘘をついた人間は何かを隠している人間は脈が僅かに乱れるのだ


 それに気づいた私はその瞬間に警備団に自分を売り込んだ

 尋問に使える、嘘をついている人間がわかる、建物の中に隠れている人間すらその気になれば探知できると。


 警備団は簡単なテストをすると言って私を奥へと連れていってくれた。


「…なんですか…これ…」


 奥は清潔なフロントとは違って打ちっぱなしのコンクリートが続いてるかび臭い廊下だった

 そこをさらに奥に進んで扉を開けた先にあったのは数個のパイプ椅子とそこに縛られた人たち。


「反議会派のクズ共だよ」


「君の言っていることが本当なら今ここで尋問をしてみなさい」


 私をここまで連れてきた警備団の人達がそう言う。


「大丈夫、あらかた全部聞き終えている、君は気になることを聞けばいい」


「それが当たってるかどうかを確認して間違いがひとつもなければ君を仲間として迎え入れよう」


 ボロボロになって目隠しに猿轡をされた人たち

 私ですら明らかに何をされたか分かる

 よっぽど酷い拷問をされたのだろう


 けど…反議会派の人間だからって言うだけでここまでするのは……


「早くしなさい」


 思考していた内容が警備団のひとりの声で止められる

 そうだ、私は自分の意思でここに来て…議会の役に立ちたいと思ってここまで属性のことを研究したんだ…


「貴方は人を殺した?」


 髪飾りを通して直接脈の振動が脳へと伝わってくる

 質問をした瞬間に脈の振動が変わった

 嘘だ、拷問やこの場の恐怖で最初から脈が乱れていたことは伝わっていたけどさっきの質問をした瞬間に乱れが伝わってきた。


「嘘」


「正解」


 目の前で違う違うと声をあげたいのにあげれず呻いて首を横に振るだけの人物

 この人は人を殺している

 人を殺めているのに嘘をついてまでして自分の身を守ろうとしている


『パァンッ』


 そこまでして保身をしようとする気持ち悪さ、けれどここまで痛めつけられている姿、どうしてその殺人と結論に至ったのかと言う疑問

 それらをかき消すように真後ろから大きな音が響いた。


「えっ」


「あと2人」


 何が起こったのか理解できなかった

 警備団の人の脈はここに連れてきてくれた時と全く変わらないのに、椅子に縛られている人の脈の動きがひとつ無くなった

 さっきまで呻いていたその人は頭に五円玉くらいの赤黒い膨らみを作って何も言わなくなっている。


「…っ」


 違う、膨らんでるんじゃない。


 中身が勢いよく流れ出てるだけなんだって理解した時一瞬だけ貧血のように足元がぐらついた。


「反議会派だよ。当然の末路さ」


 そこからあんまり覚えてない

 けど三人目の質問を終えて「合格」と言われた時から

 忘れたくても忘れられない感触が手にこびりついている。


「やってみて」


 そう言って手渡されたのは、さっきまで破裂音を響かせていた大人の男の人の手のひらほどある拳銃。


「え?」


「入るんだったら遅かれ早かれ経験することになるから、こういうのは早めがいいと思うよ」


 部屋に残っている脈の振動は4人分

 さっきまで6人分あったのに。


「できないの?」


「…っ……大丈夫…です」


 引き金を両手の指で頑張って引いた

 3回目のけたたましい音一緒に脈の動きがまた一人分減った。


 私今まで人が死ぬ時は今まで心電図のあの機会的なアラームの音が鳴るんだと思っていたけど

 違う


 人が死ぬ時の音はこんなにもうるさい音が鳴るんだ。


 ■■■■


 そこから私は警備団として表立って活動することはなかった

 口を割らない反議会派の人間がいれば尋問の場に立ち会い嘘か嘘じゃないかを判断するそれだけの活動だった


 拷問の現場にも何度も立ち会ったことがある

 命からがらに出した証言が嘘か嘘じゃないかを判断する要因として。


 最初は本当にご飯が食べれなくなった

 属性を使って体の配置をバラバラにされてなお生かされてる人

 純粋に歯を1本1本抜かれるだけの人

 でもそんな人たちは私の「本当」という言葉だけですぐに楽にしてあげることが出来た。


 これは仕方ない、この人達は人を殺したり不幸にした

 自分の勝手な理想で盲目に走った報いを受けているだけ

 半年も経てば私は毎晩美味しくご飯を食べれるようになっていた。


 1年も経てば警備団の人たちからもそれなりに信頼されて色んな話を聞くことが出来た

 その中でもかなり危険視されていたのが()()()()()()死体すら残さないこの地区最悪の反議会派の1人

 コイツを殺せば議会からはとんでもない報酬を貰えるぞなんて話もあちこちで出ていた


 けど警備団たちは桜庭琴葉を殺すことも捕まえることもしない

 勝てないから、コイツを殺せば大なり小なり戦争が起こるから、そうなれば何人いるかも分からない反議会派の人間がここに押しかけてくるかもしれないから

 たしかに彼女を殺せればこの地区の反議会派はかなり弱体化はできるし士気も下げれる、けれど警備団が潰されれば元も子もない、だから今は手を出せないんだ。と


 けど桜庭琴葉は違った

 警備団の人数は私が入った頃よりかなり減ってしまった

 全て桜庭琴葉が関与している訳では無いけど彼女に影響を受けた反議会派による犯行なのは間違いなかった

 議会の名前を笠に着て悪逆非道を尽くす警備団を粛清するとか

 大切な人がむごく殺されたとか


 そんなのお前たちだって一緒のことなのに

 お前たちだって人を殺しているのに、人を不幸にしているのに

 それなのに被害者の体で開き直ってる姿には吐き気すら覚えた。


 そしてそんな愚かな人種を助長させた桜庭琴葉

 彼女だけはなんとしてでも殺さなきゃいけない

 それを目的だけに今日の今日まで生きてきた。


 ■■■■


 でも私の属性アトリビュートには弱点があった


 動揺しない人間、つまりは肝が座っている人間には嘘発見器として使えないこと

 そうなるとただのソナーになりさがる


 もう1つは攻撃の手段を持ちえないこと

 直接的な殺傷能力は武器を作れる属性の人間が作った武器を用いるか通常の武装を使うしかないということ。


 だから私は属性アトリビュートを幾重にも強化した

 警備団にて処される反議会派達共の武器を頼み込んで少しずつ分けてもらった

 最初の内は探知できる範囲が広がった程度だったけどある時を境に別の能力が芽生えた。


 それは感じた脈の動きを個人と結び付けて記録することだった。


 その能力を手に入れた私は真っ先に桜庭琴葉の通う中学へ出向いた

 彼女の脈の動きを記録するために

 彼女がいつどこにいるかを把握するために

 そうすれば彼女が1人になった瞬間を見計らって最小限の被害で始末出来るかもしれない

 数の有利を作って圧倒出来るかもしれない

 あまり彼女は中学に来ないとは聞いていたけど、それから私は毎日放課後彼女の中学に通った

 時には学校を休んで1日張り込んだこともあった。


 その甲斐もあってか私はついに彼女を見つけ、彼女の脈を記録することが出来た。


 だからこそ初めて高校で出会った彼女が()()()()だということはすぐに分かった

 目の前の桜庭琴葉は常に怯えていて隠し事をして取り繕って、あの時記録した桜庭琴葉とは全くの別人だった。


 だからこそ、だからこそ私は誰もいないことを確認して警備団へと連絡を入れたのに

 それなのに警備団は彼女を始末できなかった


 再度現場に向かった警備団は姉と接触は出来たが、確かに家にいるはずだと言われそのまま確認に入ったが結局遺体は一人分、姉すらも取り逃したと。


 その日から私は密かにあの桜庭琴葉を探し続けたが結局見つけれないまま3日が経った


 その日は学校での用事を済ませ、帰宅してからまだ探せていない場所に行こうとした時だった。


 ■■■■


 正面から刺された、ドスンという衝撃とともにずるりと角栓が抜けるみたいに腹部から抜ける何か


 何が起こったか把握しようとした

 属性まで使って何がいるかを探知した

 けど探知範囲には何もいない、脈はありえないほど早くなっている私のものしか引っかからない


 マズイこのままだとマズイ

 それなのにこの場から立ち去ることが出来ない

 お腹の当たりが酷く熱くて息をする度に血液とヌルッとした何かがジワジワと押し出されているのが見える


 歩こうとすれば更にそれは酷くなって、立っているだけで重力に従って零れ落ちそうになる

 だから私はこの場に座り込んで呼吸をなるべく浅くするしか対処が出来なかった


 でもなんで?


 なんで?どうして私が?密告がバレてる?報復された?


 警備団であることがバレてる?


 相手は誰なの?


 どこからバレた??


 助けを呼ばなきゃ、周りに人は?


 これは無差別?


 狙われた?


 でも早すぎる、目をつけられてた?


 誰もいないはずなのにどうして??


 呼吸を抑えているから声すら上手く出せない

 お願い。誰か助けて 、きっとまだ大丈夫だから

 だからお願い。早く、こんなとこで死ぬわけにはいかないの


 もっと世界をよくしていきたいの。


 暗くなっていく視界の中で必死に祈り続けた

 そんな時感じ慣れた脈の動きが近くまで来ていることがわかった。



 エリだ



 でもエリはきっとこんな状況飲みこめるはずがないに決まってる


 きっと私を見つけたら、泣きそうになりながらとりあえず大きな声を上げて人を呼ぼうとするんだ、「死ぬなー!!」なんて言いながら。


 もしかしたら止血しようと素っ頓狂なことするかもしれない


 あぁ…エリ、きっとパニックになるんだろうな


 今多分血まみれで内蔵まで出ちゃってるでしょ…ごめん、ほんとにごめん、助かったらきっとちゃんと謝るから…


 日曜行った喫茶店で好きなだけご馳走もするから…


 だからお願い…


 私を早く見つけてね…。


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