第004話 川沿いの罠
こんにちは、こんばんわ
暑さが少し落ち着いてきましたね。
戦闘モード…緊張感とともにお楽しみください。
夜明け前、まだ空が群青色を残す頃。
見張りのライラは昨夜の蹄の音を思い出し、耳を澄ませていた。
冷え切った空気の中、足音が近づく。偵察に出ていたカイが戻ってきた。
「丘の上から見えた。カルディアの前哨部隊が川沿いを進んでる」
ヴォルクは即座に地図を広げ、指で川の曲がりをなぞる。
「この狭道で迎え撃つ。バルド、伏兵を頼む」
団員たちは素早く配置についた。川岸と崖の間、馬も並んで通れぬ細い道。
その両脇に伏せた弓兵が息を殺す。霧が薄れ、甲冑のきらめきが見えた。
最初の敵が足を踏み入れた瞬間、ライラの矢が放たれる。鋭い音を立てて兜の隙間に突き刺さり、兵が崩れた。
同時に崖上から投槍が降り注ぐ。驚きと怒号が狭道にこだまし、隊列が乱れる。
「押し返せ!」
ヴォルクが剣を抜き、泥に足を取られながらも前進する。
バルドは盾で敵の槍を弾き、隙を突いて斬り返す。刃が鎧の継ぎ目を裂き、熱い血が飛んだ。
敵の指揮官らしき男が怒鳴りながら突進してくるが、カイの矢が脚を射抜き、崩れ落ちる。
川の水しぶきと泥が入り乱れ、金属音が耳を打つ。
短いが激しい攻防の末、カルディア兵は撤退を始めた。
ヴォルクは深く息を吐き、剣を納める。
戦いの後、川岸に小さな火が起こされた。
ミーナが干し肉と乾燥豆を鍋に入れ、少量の水で煮込む。
豆が柔らかくなり、干し肉の旨味が溶け出すと、薄茶色の煮汁から温かな香りが漂った。
疲れ切った団員たちは無言で器を受け取り、黙々と口に運ぶ。
塩気と脂が喉を通り、全身に力が戻っていくようだった。
食事を終えたヴォルクは、遠くの山際を指差した。
薄く立ちのぼる煙が、朝の光に揺れている。
「……本隊が近い。急ぐぞ」
団員たちは荷をまとめ、再び北へと歩き出した。冷たい川風が背中を押すように吹いていた。
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