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第一羽 angel's gift

こちら第一話です!楽しんでください!ブクマもお願いします!

彼女の勧誘には…思わず耳を疑っちゃったよね。ホント、目の前の天使さんは相当平和ボケしてるみたいだ。詐欺師の天使なんて正気とは思えない。

「…疑問なんだけどさ。本当に僕を天使にしようとしてるの?詐欺師の僕を?悪いけどキューピットの矢を乱射するお仕事ならゴメンだ——」

「ま、勿論完全な天使じゃないわ。お試しで半分だけ天使。私と一緒に徳を積めば復活できる。」

「え?復活?」

「そ。人生二周目ってやつよ!」

今復活って言った?オレンジ色のデカ玉を3つ集めた覚えはないよ。そんな魅力的な案、受け入れたいに決まってる。問題は僕が大嫌いな人助けがその唯一の手段だってコト。

「大丈夫。君、詐欺師なんでしょ?君の能力は買ってる。…正直認めたくないけど…君の腕は確か。100均の壺を10万で売るなんて馬鹿なこと、神でも出来ないわ。」

「そうそう。凄いでしょ?」

「…褒めてるわけじゃないわ。でも神父に化けてたった少しの質問で悩みを聞き出すのは私たちじゃ無理。凄い人心掌握力ね。」

「じゃあ人助けじゃなくて詐欺をやっていいってこと?」

「違うわ!!…でも、人を思いやるのが凶器になるみたいに、人を欺くことが救済になることだってあるはずよ。」

「それに天使とペ(テン師)でシナジーある!これ運命よ!!」



…天使役は純粋無垢な少女が適役なんだよ。

人を笑顔にする天使。

対する僕。薄汚れた詐欺師。僕が見た笑顔は、壺を買って喜ぶ偽りの笑顔しかない。

「…うん。ごめんやっぱ無理!残念だけど僕じゃ役不足だ。ちょっとだけ面白そうだったけど。」

…しばらく沈黙が続く。ほらね。やっぱり僕じゃ無理そうだ。

「…君みたいなのは大勢いたわ。柄じゃないって。」

おや?説得かな?僕は簡単になびかないよ。

「当然よね。人を散々傷つけておいて人助けなんてバカげてる。人の罪は消せない。クズはヒーローにはなれない。」

…そう思ってた。ずっと。

「人間は醜い。でも何度でも這い上がる。どれだけ深い穴に落ちても…空を目指す。そういう生き物だって…教えてくれたのよ。あのバカ人間がね…。」

僕を見つめるラファエルの目は何かを思い出してるみたいだった。

僕には分かる。これは大切な何かを失った目だ。

だって僕も失ったから。

「だから…諦めてほしくない。——君にも魅せたい。私たち天使が何羽でも飛び回れるくらい、染み渡った青い世界そらを。私は…少しでも多くの人に…空を見上げてほしい。」

…だからそんなポエムじゃ揺れないって。

「…お節介。嫌いなんだよ…僕。」

「しょうがないわ。この羽の燃料はお節介なんだから。」

そうやって悪戯っぽく笑った。…僕にそんな道徳的な台詞を吐いたセラピストは五人いた。どいつの言葉も大したことなかった。こいつだってそう。ありきたり。

…だけど一つ。一つだけセラピストたちと違うポイントがある。…僕を真っ直ぐ見つめる瞳。カルテなんかじゃなく、僕の心を見つめる瞳。全く、思わず照れちゃうくらいだよ。

「…本当に…僕は変われるの?」

「…君次第。だけど…絶対変えてみせる。」

(そう…君は絶対私が救う。)

ラファエルの言葉に嘘はなかった。

「…いいよ。しょうがない。君の瞳に相乗りしてあげる。僕はノリと音楽と…それから僕と目を合わせて話す人の言葉に乗るのが大好きなんだ。」

…今はそういうことにしておこう。答え合わせはきっとするから。今はただ…前を向くフリを。

「やったぁぁぁ!!じゃ決まりね!いくわよ環!あ、ちなみに私の名前はラファエルよ。様付けでも陛下付けでもどちらでもいいわ!」

飛び跳ねて喜ぶ姿はまさに無垢。天使ってカンジ。…それにしても最悪な2択を迫られてるな。今日は2択問題が多いね。

「…ちなみにどうやって地上に降りるの?エレベーターは見当たらないケド?」

「あら環、知らないの?」

天使には羽があるのよ。

そう言ってラファエルは僕の背中を叩いた。

次の瞬間、僕の背中から宵闇みたいに真っ黒な羽が生え、スーツを突き破る。不思議と痛みはなかった。

「うおぉぉ!!すごい!!」

「うーわ…クロ!!堕天使の方がマシな羽してる!」

…酷いな。ちょっと気に入ってたのに。

「…まあいいわ。地上に着いたら羽はしまって。救済相手以外に見せないで。」

「待ってよ。輪っかは?僕にはないよ?」

「これは上級天使だけ。ほら、下っ端は黙ってダイブ!!」

ダイブ?ここから?この羽で?

「…じゃあ遺影選ばせてよ。」

「そんなヒマない!ほら行く!どーん!」

「おおおおおおい!!!??」

天使はまだ心の準備もついてない僕を突き飛ばした。



猛烈な速さで落ちていく。僕の黒羽は言うことを聞かない。

「ほら何してるの!早く羽ばたいて!」

美しく、大きな羽で、ラファエルは巧みに風を操る。

対する僕のは…——風に煽られる洗濯物みたいだ。

地上が近づいていく。ラファエルの声も遠のく。その時、ふと屋上の光景に目がいった。運命とかじゃない。本当に偶然——

靴を脱ぎ、手すりに乗り、虚な目をした女の光景が。そして案の定、足を滑らす。

「ッ…もう!!」

歯を食いしばる。拳に力が入る。そして同時に…黒羽がはためく。

「嫌だなぁ、全く!!」

これじゃまるで僕が…

「ヒーローみたいじゃないか!!!」

これまでの人生の最大風速で僕は落下する女に手を差し伸べる。——これが、天使。

間一髪女を助けた僕は、空いてる窓からビル内に入った。

「ッ…あっ…あの…」

「…ゴメン。余計なお世話だっ ——」

「ありがとうございます!!本当は…怖くて。でっ…でも!足を滑らせちゃって…。」

感謝された。初めて…本当に。

「…手すりはね、手で掴むためにあるんだよ。」

「ごめんなさい…あの…どうして助けてくれたんですか?」

「…さあ?なんでだろう?」

…本当は知ってる。でも教えてあげないよ。僕は詐欺師だからね。ここは嘘をつかせてよ。

「…撤回するわ、環。似合ってるわよ、その汚い黒羽。」

遅れてきたラファエルが窓際に腰掛けている。

「…褒められてる気がしないな。」

「フフッ。冗談よ。じゃ、そろそろ目的地へ飛ぶわよ。」

…え?

「寄り道したのは君よ。恨むなら自分を恨んで。」

「それも冗談だよね!?ねえ!?ちょっと!?また飛ぶの!?」

…どうやら僕は、こんな冗談みたいな展開にこれからも付き合わされていくみたい。

でも、こんな展開は…

正直、嫌いじゃない。

第一話はこれにて終了!!ここまで読んでくださって本当にありがとうございます!!次話も更に練り上げて参ります!!

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