神様って無情すぎません?
最悪だ。
なんでだ。なんでだよ!私がどんな悪い事をしたって言うんだ!!!!!
ふざけんな…こんなのあんまりすぎるだろ…
…これは丁度2時間前。私は放課後、いつも私の事を引き立て役にしてくる自称「友達」といつもの街でダル絡みを受けていた。
「ていうかお前ほんとモテないよなぁ」
容姿端麗な彼女はいつも私、雨水紗季を馬鹿にするように話かけてくる。
「あ、うんそうだね…」
話を流そうとしてもこいつはしぶとい。すぐには話題を変えてこない。いつも男の話ばっかりするこの女が私はとても嫌いだった。
「そうだぁ、今度男友達とカラオケ行くんだけどぉ、アンタも来てよ」
私は彼女と違い地味な顔立ちをしていて、高校生にもなるというのにメイクなどをしたことが無い。なので引き立て役にはうってつけだ。実際何度か引き立て役にされているが、私がその場にいると周りからは軽蔑の目で見られることが多い。
はぁ、また引き立て役にならないといけないのかと思ったその時、唐突に地面が光りだした。
そして、気付いたころにはお城の中にいた。
目の前には胡散臭くて宝石のはめ込まれたアクセサリーをジャラジャラつけた男女が五名ほど。
そうしてその男女は私達にすがるような目でこちらを見て来た。
「勇者様だ!」
「勇者様よ!やっとこの国が救われる!」
「二人だ!この二人がこの国を救ってくださる!」
急な場面に状況が読み込めなかった。
勇者様?どういうこと?何のこと?
私達が…勇者様?
しばらく混乱で頭がいっぱいいっぱいだった。
「ちょっとここどこよ!誘拐?」
自称「友達」、桐谷柚菜が声を荒げる。
「大体なんなのよ勇者様って!」
やはり桐谷も混乱しているようだ。
「落ち着いて話を聞いてくだされ、勇者殿」
一番偉そうな中年男性が口を開いた。
とてつもなく長い話だったので要約すると、
どうやら私達二人はなんかの儀式で異世界に連れてこられたっぽい。今流行りの異世界転移だ。
そしてどうやらこの国は他の国とのいざこざやだんだん脅威を増す魔物の影響で国の民が困り果てているようだ。その宝石売ればいいのに。ついでに魔王も成敗しないといけないらしい。元の世界に帰りたいならその魔王から聞けと。無責任な奴らだ。
しかし最悪なのはここからだ。
自分のステータスを確認してみたら…
基本魔力はゼロ。体力はそこらのモブ敵と同じ100。スキルはWi-Fi。
Wi-Fi?え、なんなのWi-Fi?
この世界にはスマホが無い。私はスマホの充電器持ってない。
よって、意味がない。
一方桐谷のステータスは基本魔力は合わせて5万。全属性の魔法が使える。体力は1万で、私なんぞ相手にならない。そしてスキルは…無敵。短い間だけ無敵になれる。
え?なんなんですかこの差。
私ってなんかしたっけ。悪い事…お母さんのスマホ割ったくらいじゃない?
いやまぁ十分よくないけど!にしてもなんで…私は異世界無双できないってのかよ…
「アンタクソ雑魚じゃん笑スキルがWi-Fi?」
「足手纏いなんですが笑」
嘲笑う桐谷とどうも出来ない私。悔しさだけが頭にあふれる。
「使えないなぁ本当に、顔も悪い上役立たずってか?」
何か喋るだけでも涙があふれだしてしまいそうで。
ただ下を向くことしかできなかった。
「私一人で旅するんで、この雑魚は放っておいてくださーい」
悪意のある笑いを含みながら桐谷はその場にいる全員に言い放った。
悔しい。
なんで私がこんな思いしなければならないんだ。
今まで自分を馬鹿にしてきたやつがどうしようも出来ない相手になってしまった。
この屈辱をなんと言い表せばいいだろう。
そして今…1か月分の生活費と一緒に城から追い出された。
えぇ…
なんでよ…
神様って無情すぎない?
私が何をしたって言うんだ…
今の私は異世界転生系主人公みたいに生まれ持った才能や最強スキル、最強の味方を持っていない。
出来ることがあるとするならば…
見返す方法があるとするならばそれは一つ。
努力だ。
努力してステータスを上げまくる。それだけだ。
大体、あいつは私に恨みを買いすぎた。
許さない、
あいつの悔しがる顔が見たい、それだけだ。
神なんていらない。
神なんていなくても私一人でやってやる。
にしても…お腹すいたな。まずは何か食べに行こう。