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人狩り貴族と少女

 ☆☆☆冒険者ギルド前



「良い仕事があるよ。金貨一枚だ。な~に、領主様が、林道を作って、君みたいな少女でも歩けるか試したいそうだ。冒険者に登録なんて後でいいじゃん。おっと、金貨は仕事が終わってからだ。夕方には渡せるよ」



「あ・・・怪しくない?」



「大丈夫だぜ!金貨一枚なのは、みなごろしが出るかもしれないからだ。騎士様の護衛付だ!しかし、冒険者をやるなら、鏖を警戒しなければいけないぞ。どこもリスクはあるぜ。しかし、最近は出ないから大丈夫だ」



「鏖って?」


「知らないのかい?隣国の王族と騎士団を壊滅させた悪魔だ。逃走ルートから、ここら辺にいる可能性が大だ。最も、隣国は圧政だから、革命が起きたのが真相だろうぜ」



 ・・・この少女、黒髪だな。目に少し青が入っているから、異世界人、黒髪族ではないだろう。

 年は、12,3歳か?


「年は?」


「14歳・・・」


「心配なら、俺の剣を預ける。おれは、冒険者コズン、嘘を言っていたら、その剣で殺していいぜ。ほら、ひょろひょろだぜ。君でも殺せるぜ」


 ポイ!



「鞘から抜いて見てもいい?」



「その剣は、付与師が、切れ味マックスにしている。見てもいいけど、触るな。指が切断されるぜ」


「分かった」


 ヒュン!ヒュン!



 ・・・馬鹿だな。その剣は、なまくらだ。刃は潰してあるのさ。余興のために、斬れない剣を振り回して、絶望する顔が見られるぜ。しかし、軽々振り回すな。農作業で鍛えているのだろう。


 あ~、たまんねえな。このすました顔がどんな顔をするのだろうな。


 グゥウウウウウ~~


「ほら、お腹空いているな、ご飯食べられるぜ。やろうぜ。楽しいよ。ウサちゃんがいるかもだぜ」

「分かった。やる」


「そうこなくっちゃ、なら、この馬車に乗って」




 ☆☆☆森の中



「着いたぜ!さっさと降りな!」


 ドン!


 少女は、蹴られて、馬車から降ろされた。

 森の開豁地、獲物が山と積まれ、色とりどりのテントが張られている。武装した貴族と騎士達がいた。


 金ピカの鎧を着た貴族の当主が、冒険者コズンを叱責する。



「遅いぞ。しかも、貧相なガキだな」


「へへへへへ、最近、警戒されまして、でも、素早いですぜ」


「ご飯は?」


「最近、物騒だからな。だから、ワシはこうして、狩りの締めは、人狩りと決めている」



「「「全くです」」」


「今日は、めでたく、我が息子が初めて人を殺す日だ。コリンズよ。この少女をよく見ておけ」


「ねえ。ご飯?」


 でっぷり太った貴族の子弟、コリンズが、舐めずりながら、少女を下からなめ回すように見る。


「父上、殺す前に、犯して良いでしょう」


「ああ、だが、今夜の分も取っておけよ」

「ええ、ユニーグスのコレット?僕、もっと、明るい子が好きだよ」

「贅沢を言うな。夜会で無理矢理、既成事実を作れば、結婚しなければならなくなる。領地が付いてくるぞ。その後、いくらでも愛妾を作ればいい」


「ご飯?」


「分かった。父上」



「おい、お前が獲物だ!さっさと、森の中にいけ!」


 ドン!


 少女は、また、蹴られて、渋々森の中に向かった。


 ヨタヨタ~~


「全然、素早くないではないか。まあ、いい。金貨一枚だ。次はちゃんとしたの連れて来い!」


「もちろんでさ」

「いつものように、30分後に始める・・いや、夜会がある。5分後に、魔狼を放て、鏖が出るかもしれないからな。しかし」


 ・・・突然、隣国が、壊滅した。誰も、その犯人の姿を知らない。

 何故なら、討伐隊が、全滅するからだ。

 噂だと、勇者のなれの果て、または、暴走した秘匿勇者・・・



「旦那様、あるわけございません。元々、隣国は圧政でした。一揆でも起きたのでしょう。鏖は、民衆の幻想でございますぜ」


「コズン、そうだが、最悪の事を考えるのが貴族だ。領地を守らなければならない。こうして、冒険者を、狩りの標的にしているのだ。奴らは、どうせ、すぐに死ぬ。だから有効活用しているのだ」


「さすが、旦那様です」


「最も、鏖が現れても、この人数なら、返り討ちにしてくれるわ。そろそろ5分だ」



「さあ、坊ちゃんは、馬に」


「「「「ガルルルルルル~~~~~」」」


「訓練師、追い込むだけだぞ。コリンズに殺らせろ」


「わかってまさ。行け!」


 魔狼が放たれ、森に入った。

 すぐに、獲物を捕捉した合図の遠吠えが聞こえる。


「「「オオオーーーーン」」」


「何だ。少しも進んでいないのか。森の入り口か」


「行きます。父上」


 しかし、すぐに、異変に気がつく。


 魔狼の悲鳴が聞こえてきたのだ。


「「「「キャイン!キャイン」」」

「「「クゥ~~~~ン」」」




 シュルルルルルル~~~~



 ポトン!コロコロ


 魔狼の首が飛んできた。貴族の足下まで転がる。


「ヒィ、もしや、三ツ目グリズリーか?コリンズよ。戻れ!総員戦闘体制!」


「「「「はい」」」



「ちち・・・上?」


 ダダダダダダダダ!


 森から、乾いた雷の音が聞こえてきた。


 コリンズが、振り返った瞬間、彼は、言葉を発する間もなく、肉体が四散する。

 体中に穴が空いているように見えた。


 そして、土ボコリが、貴族のテントまで、迫ってくる。


 カン!カン!カン!カン!


 ロングソードも通さない鎧を装着した貴族、騎士達が倒れていく。

 鎧に穴が空き。そこから、血が吹き出る。


 バタン!バタン!


 バシュ!


「ヒエ、左腕が吹っ飛んだ!」


 バタン


 貴族は地に伏し、状況を見守る。数十人いた家来達は、全滅をしたようだ。

 うごめいている者がいる。


 ・・・これは、魔法か。まさか、鏖が現れたのか?



 森から、あの少女が現れた。

 体が鈍く紺色に光り。


 あのなまくら剣は肩に背負い。


 右手には、この世界にはないはずのブローニングM2重機関銃を持っている。

 そして、左手には、弾帯を持つ。


 通常、3人で運ぶ兵器を一人で持つ。


 あの冒険者コズンの前に来る。

 彼は、腰を抜かして、動けないようだ。



「おじさん。嘘だったら、殺していいと言った」



「ヒィ、あれは嘘、いや、嘘じゃねえ。その剣で殺して良いってことだ!魔道具は使うな!なあ、普通は殺さないよな」


 パスン!


 少女は、兵器を素早く空間にしまい。剣を抜き。冒険者の首をはねた。



 ・・・なまくら剣で首が斬れるだと、相当な身体強化魔法だ。それにあの魔道具は、召喚か?

 次は何をする?


 甘いわ。近づいた時に、足を切断してやるわ。


 ワシは、15歳の時に、初陣をした。

 あのときも、こうやって、地に伏し。死んだふりをして、兵士を斬ったのだ。

 父上は、卑怯者と罵ったが、


 戦いは卑怯でも何でも勝てば良いのだ。

 領地経営だって、そうだ。


 ・・・えっ


 バン!カラン!


 少女は、空間に手を入れ、新たな兵器を召喚する。

 64式7.62ミリ小銃である。


 それで、うごめいている者、一人、一人撃っている。


 そして、貴族の前に来たとき。剣の間合いの外で、ピタと止った。



「貴族のおじさん。黒髪族について教える。勇者についても、そしたら、殺してあげる」



 ・・・ヒィ、言葉は分かるが、話が通じない。



「話しも何も、黒髪族は・・・、我が領地にもたまに黒髪の者が生まれるな」


 バン!カラン!


「ギャア、右腕が!」

「知らないなら、知らないと言う」


「・・・卑怯だぞ。そんな強力な魔道具、・・・聞いた事がある!地に伏し大量の鉄礫を放つ外道、戦士らしく戦えないのか?!ウグ」


 この貴族にも、近代戦の戦い方が薄らと伝わっていた。



「戦いは、卑怯は常道、但し、殺して良いか相手を選べが、お父様の教え・・・」



「卑怯は常道、そうか、なら、ワシもそうだ。仲間だ!その残虐性、強さ。どうだ。ワシの領地で騎士団長にならないか?私も殺していい相手を選んでいる。

 冒険者、孤児、浮浪者、皆、クズだ。なあ、仲間だ!」



「違う。お前は弱い相手を選んでいる・・・」



 バン!カラン!


 少女はテントをあさり。金貨一枚だけを取り。後にした。




 ☆☆☆近領、ユニーグス伯爵邸




 裏門から、あの少女が入ろうとしたら、女伯爵が、門の前に立っていた。

 若くして領地を継いだコレットだ。年は20歳である。

 腰に両手をあて、プンプンだ。



「ちょっと、アリサちゃん。いなくなるときは、一言、言いなさいって言いましたよね」


「・・・ごめんなさい」


「まあ、いいわ。時間のあるとき、お母様の国を探す条件で雇ったのだからね。でも、心配だわ。鏖がでるから、心配したのよ」



 グゥウウウウウ~~~~


「まあ、これから、夜会があるの。貴女についてきてもらいたかったの。そろそろ貴女にも素敵な彼氏が必要ね。イケメン従者、もしかして、貴公子、あ、コリンズ様はダメよ。あの方、良い噂は聞かないの。でっぷり太っているから分かるわ。私が守ってあげるわ。さあ、軽く食べて、支度してきなさい」


「はい、コレット様」


「大変でございます。お嬢様!」


 入れ違いに、執事長が飛び込んできた。


「お嬢様、大変でございます。鏖が現れました!夜会は中止です。殿方が全滅したそうです」


「何ですって!」


「それと、前から良からぬ噂のあった家門ですが、屋敷に拷問部屋が見つかり。トロフィーのように、首が飾られていました。現在、王国騎士団が調査中です。コレット様を・・・いえ、何でもありません」


 ・・・夜会でコレットを陵辱する計画まであったとは言わない方が良いと執事は判断した。


「まあ!夜会、断るべきでしたわ」


「ええ、それで、怯えきった魔狼が、行方不明で、我が領地に向かったかもしれません」


「あ、アリサちゃん。夜会は中止よ。冒険者ギルドに行くわ。あら、そのメイド服、夜会用の綺麗なメイド服ではないわね。まあ、いいわ。ついてきて」


「はい、お嬢様」


 ユニーグス領から、まるで離れるかのように、逃走したと、後に、斥候職から、報告が上がった。


 この領は、今日も平穏無事である。




最後までお読み頂き有難うございました。

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[良い点] ブローニングM2重機関銃を腰だめで立射するのは気持ちよさそう
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