アメリカ編 後編
本部に状況を報告し、指示を仰ぐと、前進しろと言われた。
「たった一両でどうしろって言うんだ!後退させろ!」
「敵は現在劣勢です。今側面を叩いても、ろくに抵抗されないでしょう。前進して下さい」
無線を切られた。まあ、そういうことなら前進しても良いだろう。
「4号車は任務を続行する。敵の側面を叩くぞ。前進」
突撃した道を引き返と、撃破された味方が嫌でも目に入る。俺が死んでないのは運が良かっただけだ。
しばらく前進すると、曲がり角が見えた。
「この角を曲がれば敵がいるはずだ。榴弾装填」
事前情報では、敵の主力は歩兵で、戦車は少ないらしい。神がいるならば、あんな死地をくぐり抜けた俺たちと戦車を遭遇させる事はしないはずだ。
角から飛び出すと、明らかに後退中のドイツ軍が見えた。戦車は居ない。
飛び出す。榴弾と機銃を撃つ。引っ込む。それだけに専念する。前進の判断は正解だったようだ。
バタバタとなぎ倒されるドイツ人に同情する。攻撃してこない敵を撃つのは楽しい作業では無い。もちろん、攻撃してくる敵と撃ち合うのはもっと楽しくないが。
「敵部隊が出てこなくなりました」
どうやら、敵本隊の後退が終わったらしい。
「追撃する。前進しろ」
少しの間お世話になった角の建物に別れを告げ、前進を始めた直後、敵の戦車と遭遇した。
砲手が驚き、反射的に発砲したが、榴弾は効果が薄い。敵がこちらに回り始めた。
「パンターだ!いったん後退しろ!AP装填!」
恐らく敵のしんがりだろう。前進したのは迂闊だった。
「距離100、AP撃て!」
発射された徹甲弾は、敵の車体正面に当たり、きれいに弾かれた。
「ックソ!」
敵の砲は既にこちらを向いている。敵の発砲炎が見えた。
直後、俺は空中に跳ね上がった。苦痛は無い。初めて空が美しく見えた。
初めて書いた小説です。読んでくれてありがとうございました。