ドイツ編
前回の戦いのドイツ側視点です。主人公は北アフリカでロンメルと戦った経験から、上官の理想がクソ高くなっています。
「なぜ主力が俺たちじゃ無いんだ!」
簡素なHQに声が響き、紙と見つめ合っているクソ野郎たちがこちらをみる。
目の前のクソ野郎は、俺たちのティーガー小隊に、攻勢の側面を守れと言っている・
「ダメだ。主力は機動力のあるIV号とV号だ。のろまなVI号には、彼らの側面を守ってもらう。」
紙と愛し合う異常性癖は嫌いだが、特にこいつは大っ嫌いだ!バーカ!
「燃料も予備部品も不足している。VI号は動かせない。お前が57トンの巨体を押して動かすなら別だがな」
かすかな笑い声が聞こえてくる。言い返せない。燃料不足は俺に解決できる事では無い。
祖国の資源を少なくした地球を呪い、俺は無言で立ち去った。
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「小隊全車、各個前進。持ち場に向かえ」
ティーガー小隊1つで主攻の側面を守るために、両翼に二両ずつ展開し、味方側面に続く道を守る。粗悪な燃料と少しの油しか与えられていないティーガーが、抗議の叫びをあげながら進んだ。
「目的地に到着」
「了解。エンジン停止しろ」
俺のティーガーは、この平地のブッシュから前の森沿いの小道を守る。もしアメリカ軍が来たら、側面からアハトアハトを浴びせる計画だ。
この位置は完璧では無いが、微調整は出来ない。そんなことをしていたら、ティーガーはすぐに動けなくなるだろう。
砲手が照準器から顔を外した。
「測距完了。距離800」
砲手も微調整が出来ないことを理解している。測距を終えたようだ。
本当は1000m以上は距離を取りたいが、今回はこの位置が最良だった。
「総員、少し休んでいろ。俺が見張る」
全員が一斉に体を壁に預けた。双眼鏡で見る限り、敵影は無い。俺たちは、外を眺めながら雑談をして時間を潰した...
「...10時の方向、敵だ」
装填手が珍しい虫を見つけたかのように言うと、全員が10時の方向を見た。M4シャーマンが5両、味方の側面めがけて行軍していた。
「こちらも確認した。敵が正面にくるまで待て。最初に先頭車と最後尾を撃破しろ」
「こちら砲手。了解」
「エンジン始動。アイドリングだ。装填手、AP装填」
装填の機械音とエンジンの始動音が車内に響く。5両の戦果を考えると、胸が躍る。
「HQへ、こちらティーガー小隊小隊長車。敵戦車小隊を確認。キルゾーンに入り次第射撃する」
すぐに敵が真正面に来た。砲手は顔を照準器にピッタリと付けている。
「撃て」
心地よい発砲音の直後、先頭のM4の砲塔が吹き飛んだ。砲の動作音と排莢音の響きは、拍手のように聞こえた。
「AP装填完了」
「ファイア」
訓練通り、装填と射撃が行われる
「くそ、外した」
「見越し角を修正しろ。敵は交代中だ」
「装填完了」
突然、眼前が真っ白になった。煙幕だ。
「照準は合っているぞ」
「撃て。操縦手、前進」
発砲音の後、騒々しいエンジン音をたてながら、更なる獲物を求めて前進する。
敵弾を跳ね返しながら前進すると、すぐに盲撃ちの戦果が見えた。
「当たっているぞ!さすがだ!」
「1時の方向、AP撃て!」
この距離だと、アハトアハトは必中だ。当然、今回も命中した。敵は大げさに爆発している。
隣の獲物に目を向けると、心臓が跳ね上がった。長っ鼻だ。あの長い砲身は、ティーガーの正面装甲を貫通するのだ。
「長っ鼻だ!昼飯の角度!」
ティーガーは急停止し、きれいな昼飯の角度を取った。跳弾音と同時に、下から異音が聞こえた
「装填完了!」
「故障だ!動けない!」
「ファイア!」
装填手と砲手の連携で、長っ鼻の忌々しい砲塔が打ち上げられる。しかし喜ぶ余裕は無い。
「10時の方向敵戦車!砲塔回せ!」
最後の敵は、既にティーガーを捉えていた。ティーガーの砲塔旋回はとても遅く、追いつきそうに無い。
「操縦手!旋回しろ!側面を撃たれるぞ!」
「故障してる!無理だ!」
ターレットリングから響く油切れの音は、整備不良をとがめていた。俺たちは油も予備部品も用意できない。
ティーガーの悲鳴を聞きながら、俺は目を閉じ、最後の瞬間を待った...