第21章
・・・「帝政ロシア」は、いぜんとして、その『神聖性』というものを、世界に訴えつづけていた。
「ロシアは、神の国だ・・・」と。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ジョンソンは、ジョージ・トーマスのもよおす、「夜会」・・・つまり、夜のパーティーに招かれた。
ジョンソン談:
「このパーティー会場で俺は、黒ヒゲをはやした、長い礼服の・・・ロシア帝国の有名な怪僧『ラスプーチン』に会ったんだ。
まったく・・・あの異様な目つきといったら、なかったぜ。」
「パーティー会場に、いきなり警官がなだれこんできた。俺たちは、間一髪、知人の車で逃げたよ・・・。」
「つまりな・・・たった5分で荷物をまとめて、10分でこの街から去れ・・・ということさ。」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヨーロッパの、厳しい冬の寒さが、アメリカ育ちのジョンソンの骨身にこたえるが・・・
戦争はおわらない。
あちこちで、爆弾の破裂する音がする。
いまや、「パリの灯」も消えていた。
・・・戦争による死傷者は、日ごとに増える一方だ。
戦車による高射砲が、一般民家を直撃する。
そして・・・
南米に逃れようとしたジョンソンの前に、出発の矢先、昔の旧友が姿を見せた。
ジョンソン談:
「おぉ! あんたは、なつかしいジャック・カーリーさんじゃねえか!!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
カーリー氏は、アメリカで試合の出来ないジョンソンに、ヘビー級タイトルマッチの話を持ってきたのだ。
アメリカの白人ボクサーの「ジェス・ウィラード」と防衛戦をおこない、大金を稼いだらどうか、という、ありがたい申し出だった。
大西洋での航海は、危険をともなうものであったが・・・
大戦の戦火が広がるいま、もう、ヨーロッパを去るべきときはきていた。
そして、試合が行なわれる予定地だったメキシコに到着してみたものの・・・
そこでも、ロシア帝国同様、革命が起こりつつあり、軍隊が山道を馬に乗って、しきりに哨戒してまわっていた。
そんな中、メキシコの興行師の「パンチョ・ヴィア」が、メキシコ国内の試合会場を決定した。
ヴィアは、山道の護衛まではなんとか引き受けてくれたが、その山道の先・・・遠い試合場までの道・・・ルートは、たったの2通りしかなかった。
ベラクルス港経由か・・・
あるいは、エルパソの国境を通るしかない。
だが・・・ベラクルスは、すでに封鎖されていた。
・・・ジョンソンは、逮捕をおそれて、エルパソ経由のルートを嫌った。
そこで、興行師のカーリーは、一計を案じた。
「・・・メキシコがダメなら、キューバでやろう。」




