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第19章

 ジョンソン談:


 「・・・それから俺たちは、英国へ短期旅行をした。当時、あちらこちらで寄席よせが盛んで、俺たちも飛び入り出演さ。 ・・・ベースと歌の寄席だよ。」


 (そのときの、ハットをかぶった紳士服姿のジャックと車に乗った淑女しゅくじょルシルの映像が、動画中に残っている。)


 ・・・ジャックたちには、ヨーロッパが「水に合った」ようだ。


 しっくりと肌になじむように。


 そのころパリでは、興行師のマキトリクが、世界王者ジョンソンと、挑戦者フランク・モランの一戦を計画していた。


 『ベル・エポック(仏: Belle Époque:「美しい時代」)』


 ・・・つまりは、シャンパンと踊りに明け暮れる、ジャック・ジョンソンにとっての、「フランスにおける良き時代の始まり」である。


 一方、モランにとって、この試合は、またとないチャンスだった。


 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 1914年6月27日。


 20ラウンドの、世界ヘビー級タイトルマッチが挙行された。


 ・・・興奮するパリの街。


 客席には、フランスの俳優・歌手・名エンターテイナーの『モーリス・シュヴァリエ 』や、あの『ロスチャイルドきょう』の姿も。


 カーーーーン!! 


 「特別興行」の開始を告げるゴング。


 ・・・熱を帯び、浮かれる観衆。


 しかし、リング内でこぶしを交える真剣な二人には、そんな「お祭りムード」など、関係なしだ。


 クリンチからの離れ際に、ジョンソンからアッパーをもらったモランは・・・


 自分が何か反則でもしてしまったのかと勘違いし、しばしぼーっとする。


 しかし、すぐに、若き19歳のレフェリーにうながされて、試合続行。


 ・・・実はこのときのレフェリーだが、のちに、あの有名なヘビー級チャンプ、『ジャック・デンプシー』とグローブを交えることになる、ライトヘビー級の名チャンピオン、『ジョルジュ・カルパンチェ』だ。


 昔の試合では、このように、まだ現役の選手がレフェリーを務めるというケースも、よく見られたものだった。


 ・・・さて、試合だが、


 モランの繰り出した、ワイルドな左ストレートのクリーンヒットに対し・・・なんと、ジョンソンが拍手を(笑)。


 ジョンソン談:


 「トレビアン、フランクくん。なかなかやるじゃないか。」

 

 最終ラウンド。


 さすがのジョンソンも、慎重になった。


 バックステップで、モランの攻撃をたくみにかわす。

 

 ・・・試合終了。


 結果は、ジョンソンの僅差きんさでの判定勝ちだった。


 タイトル防衛である。

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