第11章
貴族のスポーツである『競馬』は、チャンピオンにふさわしい・・・。
紳士・淑女のいでたちで、そろって仲良く競馬観戦するジョンソンとエタのふたり。
「・・・馬たちのひづめの轟音と騎手の駆け引きがたまらんね。」
ジョンソンはそう語る。
『一発当てたときの、女の手の熱さもな・・・。』
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
二人は、ロンドンに戻った。
英国は、帰国するジョンソンとデュリエ婦人とを、温かく見送った。
英国を去ったジョンソンが、その足で向かった街が、故郷アメリカはシカゴだ。
「・・・ジャックみたいな男は初めて。私・・・死ぬまで彼を愛するつもりよ。」
エタの回想である。
ジョンソンは、エタと正式に結婚した。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
1911年秋のこと。
ジョンソンは、『カフェ・ド・シャンピオン』を開店した。
店内には、壁の高いところに、ジョンソンの勇壮なボクサーとしての写真も飾られている。
「・・・好きで投資したんだ。お客の笑い声、女性たちのほほ笑み・・・そして、最高の食べものと飲みものが好きでね・・・何事も『最高』じゃなきゃ、つまらんよ。」
そのカフェの経理担当は・・・エタと同様、これまた美しい白人女性・・・若き『ルシル・カメロン』だった。
ときには、店内でいざこざも起きる。
さしずめ、『改革派』の抵抗運動といったところだろうか。
「悪魔」「魔王」「色魔」「悪徳」などといったきたない罵声が、客の間で飛び交ったりもする。
・・・ああ、『美徳』と『悪徳』の正面からのぶつかりあいだ・・・。
そういった『改革派』というヤカラは、不毛な「勝利の日」というものを信じていた。
ときには、そういった騒ぎに巻き込まれた淑女だって、ただ黙ってはいない。
とばっちりを与えた相手に立ち向かい、勇敢にビール瓶で応戦する。
あぁ・・・せっかくの一張羅が、ビールの泡まみれだ。
しかし、ジョンソンは、そんなくだらないいざこざに気を取られることもなく、『今』に生きていた。
『今という瞬間』に・・・。




