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ルームメイト  作者: 帆摘
36/41

36話

駅の改札口を出ると、まきちゃんが大きく手を振って駆け寄って来た。

「迎えに来てくれてありがとう。急にごめんね?」

「いいよ、気にしないで。それよりも、お腹減ってない?買い物ついでに何か食べて行こうよ。」

「そうだね・・。」言葉少なげに二人は駅の反対側にある商店街へと歩き始めた。

下着などの買い物を済ませると二人は最寄りのファミレスへ入って行った。注文を終えると少し気遣うように話しだした。

「ねえ、遥・・。今晩の事、忍さんに聞いているの?」

「ううん。多分・・立ち入らない方が良い内容だと思ったから。それにきっと忍さんも・・」

「え?」

「ううん、ごめん、何でも無い。でもね、きっと忍さんなら大丈夫。」そういって遥は微笑む。確かに胸の奥底に何か不安がある事は否めない。ゾフィーの言っていた事も気になる。だが、それと同時に何処かで自分でも不思議だが、彼は大丈夫だと言う安心感がある。このもやもやがいったい何処から来ているのか・・を知るのはもう少し後になるのだが・・。


「遥・・。そうだね、ごめん!なんか私に電話かけて来た時の忍さん、いつもと違ってなんだか余裕がなさそうな感じがしたからちょっと心配だったんだ。でも、遥が大丈夫って言うなら、きっと大丈夫だよ、忍さん。立ち入った事聞いちゃってごめんね。」

「そんな事無いよ!真樹ちゃんが忍さんの事心配してるのはわかってるし、、でも私も実際どういう状況なのかわからないし、友達として心配するのは当たり前の事だよ。」

「友達・・としてね。」

「うん?」真樹ちゃんからの含みのある視線を受けて戸惑うが、そうこうしている間に、料理が運ばれて来た。

その後、私たちは大学の課題の事やバイトの事など色々と話しながら、帰路についた。真樹ちゃんのお宅は閑静な一軒家で、突然お邪魔した私を家族は喜んで迎えてくれた。

真樹ちゃんの部屋にはすでに客用の布団がひかれてあり、また暫くの間、シングルベットの上の真樹ちゃんと会話を楽しんでいたがだんだんと眠くなり・・いつの間にか私はゆっくりと眠りに落ちて行った。


***


少し時間を遡る頃、柾樹は会社で仕事をしていた。忍の元女が配属されてきてから、確かに仕事の上では順調に行っている。部長の言っていた通り、やり手である事はこの数週間で実感していたが、ある意味男よりも強引な手段と手口を使って仕事を取ってくる彼女に一種の嫌悪感を感じる事も少なくはない。社の大半の男は彼女の外面と美貌に惑わされ、狙っている男も少なくはないが、直接共に仕事をする身には、ふとしたときに漏れ出る内面にゾクリとさせられるのだ。


あいつ・・・なんて女に手を出してやがったんだ。ため息をつきながら、タバコに火をつけ煙を吐き出した。前回、忍とあった時、大体の詳しい話は聞かせてもらっていた。だが、全部ではない。あいつはまだ何か隠している・・。


そしてその内容から自分が考えていた通り、桐生真弓という女の性質、いやその執念深さを伺い知る事ができた。きっと近いうちにターゲットと定めた忍に逢いに行くであろう事も予想している。本当に厄介な女に目をつけられたものだ。

あいつには、念を押しておいたが、もし遥になんらかの被害がでるようであればその時は・・。


***


リビングのソファーの上で、目前の女が見せつける様に足を組み替えた。

「関係ない・・ね。まだあの時の事を怒ってるの?それとも・・・さっきの電話の彼女が原因なのかしら?」


返事を返さない忍を無視したまま女は愉快そうに話し続ける。「可愛い子ね。今まであなたが付き合って来た女の子達とは随分違った毛色だけど・・。でもそうねえ、どことなく似ているかもしれないわね、ユリアに・・・。」


忍は黙ったまま女を睨みつけた。「何が言いたい・・・?」

「・・・別に・・?あなたはその子に重ねているだけなんじゃないの?二人のユリアの面影を。」そしてくすっと笑うと小さく馬鹿みたいと呟いた。

その途端、忍が女に覆いかぶさるようにソファーに女を叩き付けた。その瞳には暗い憎悪が宿っていた。


「お前が!彼女を殺したんだろうが!!」

「自分が何を言ってるのか分かっているのかしら・・忍。私が彼女を殺した?私は何もしていないわ。彼女を殺したのはむしろ、あなたの方じゃないの?」

その言葉に彼女を拘束していた指の力が弱まる。それを尻目に彼女は尚獲物を追いつめるように言葉を重ねた。

「あなたが・・ユリアを殺したのよ。あなたの母と同じ名をもつ少女を・・・。」

次回から忍の過去編に突入する予定です。

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